消費税増税により、人々の財布のひもは固くなった。住宅市場への影響も軽視できない。
最大の要因は、いうまでもなく消費税増税による駆け込み需要の反動減です。1月~3月期の実質GDPがプラス6.1%でしたので、急転直下による大幅減といえます。
「山高ければ、谷深し」というように、消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年4月~6月期(マイナス3.5%)の下げ幅をさらに上回る悪い結果となりました。
政府は、こうした需要の先食いによる反動減を警戒し、住宅の販売不振対策として「住宅ローン減税」の延長・拡充や「すまい給付金制度」を創設して落ち込み回避を試みました。しかし、ふたを開けてみると需給バランスの平準化は失敗に終わり、結果、大幅な悪化は避けられませんでした。昨年10月以降、戸建て注文住宅を中心に受注は大幅に落ち込んでおり、今年3月から新設住宅着工戸数は4カ月連続で前年同月比マイナスが続いています。
たかが消費税率の3%アップ、されど消費税率の3%アップ ――
住生活の基盤となるマイホームの取得に際し、マイホーム検討者が消費税率アップに翻弄(ほんろう)されている光景が目に浮かびます。ご多聞にもれず、両親宅の新築においても税率5%の適用を受けるべく、引き渡し日を2014年3月末に設定しました。その結果、3%増税分の追加支出は避けられましたが、これで税金負担から完全に解放されたわけではありません。マイホーム建築には「取得時」「保有時」「売却時」と場面に応じた税金が、その都度、課せられる仕組みになっています。住宅の引き渡し後も、税金負担から“完全”に逃れることはできません。
そこで、両親宅の新築工事に当たり、一体いくらの税負担が実際に発生したのか?―― 本コラムでは、その内訳を赤裸々に公開します。
不動産と税金は切っても切れない密接な関係にある
不動産と税金は切っても切れない密接な関係にある
【マイホームを取得するときの税金】
・不動産取得税
新築や増築、売買や贈与により不動産を取得したときに都道府県が課税する地方税です。マイホームの取得後、6カ月~1年半程度の間に各都道府県から送られてくる「増税通知書」によって本人が納付します。ただ、軽減制度が充実しているため、実質的な納税額がゼロになることも少なくありません。
・登録免許税
取得したマイホームの所有権を保存したり移転したりする登記にかかる税金です。こうした登記費用は通常、「諸費用」名目で処理され、登記手続きは司法書士が代行してくれます。また、建物の表示登記は土地家屋調査士に依頼することになります。
・印紙税
印紙税法で定められた課税文章を作成した際、貼付によって納税することが義務付けられている国税です。不動産取引においては工事の請負契約書や売買契約書、住宅ローン借入のための金銭消費貸借契約書などが課税文書に該当します。印紙を貼付、消印することで納税は完了です。契約書類は重要な文書ですので、印紙を貼ることで複製を防止し、課税文書の内容を安定化させる目的もあるとされています。
・消費税
商品やサービスを消費したときに納税義務が発生する国税です。不動産取引においては、土地の売買や個人間取引による自宅の売買には課税されない決まりになっています。2015年10月には消費税率が10%に引き上げられる予定になっており、駆け込み需要と反動減の再燃が心配されています。
【マイホームを保有しているときの税金】
・固定資産税
土地や家屋といった固定資産の所有者に対し、市町村が課す地方税です。上述した「マイホームを取得するときの税金」とは異なり、1月1日時点における固定資産の所有者に対して毎年、課税されます。
・都市計画税
市町村が、各市町村の都市計画事業や土地区画整理事業に充てるための目的税(地方税)です。毎年、1月1日時点における所有者に対して固定資産税とセットで課税されます。
このように、不動産と税金は切っても切れない密接な関係にあります。税金を制するものは不動産を制するのです。
次ページでは、両親宅の新築に当たり負担した住宅税制の全容をご紹介します。