日本カー・オブ・ザ・イヤーは「良いクルマコンテスト」ではない?
第35回となる2014-2015 日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTYと略)は、ベンツの最新技術を投入した自信作であるCクラスと大激戦の末、19点差という史上2番目の僅差でマツダのコンパクトカーであるデミオが受賞した。ところで、「そもそもCOTYってどんな賞なのか?」という方も多いのではないだろうか。 たまにはキッチリ紹介してみましょう。少なからぬ人がCOTYを「良いクルマコンテスト」だと思っているかもしれません。されど「ナニを持って良いクルマ」なのかは非常に難しい。性能に焦点を当てるとスポーツカーだし、質感であれば高額車しか受賞できない。燃費で選ぶとECOカーの賞になってしまう。
日本のCOTYもヨーロッパのCOTYも、過去の受賞車を見ていくとバラエティに富む。小さいクルマからスポーツカー、電気自動車など様々。共通するのは時代背景や時節にあった技術など、何年かして「あのときはこんな技術が出てきたね」とか「あんな時代だったね」という”旬”の感覚です。
日本のCOTYを見ると第10回のセルシオは「貿易不均衡問題により日本車は安くて良いから、品質も追求しなければならなくなった転換点」によって作られたクルマだし、第20回のヴィッツは「ヨーロッパで勝負させるための力作。見事欧州COTYを獲得」といった具合だ。
過去全ての受賞車を振り返れば「あんな年でしたね」と説明出来るほど。自動車業界の歴史と言っても良かろう。そして長い間、日本車が圧倒的に優位だった。なぜか? 日本における輸入車は日本車と比べ、圧倒的に高価だったからである。輸入車=お金持ちの道楽というイメージ。
ちなみにヨーロッパのCOTYでは日本車が4車種受賞している。欧州における日本車の価格を見ると、同じクラスのドイツ車やフランス車と同じくらい。アメリカ COTYを受賞した日本車も価格はライバルと同じレベル。日本だけ輸入車の価格が高く、当然ながら販売台数も少ない。
選考委員からすれば「適正な価格で購入出来る」というのも大きな評価基準になるため、必然的に日本車中心になってしまったワケ。しかし昨年は34年目にして初めての輸入車であるVWゴルフが日本のCOTYを獲得した。日本車の活力不足に加え、ゴルフは「高いだけの魅力」を持っていたからだ。
マツダ「デミオ」vsベンツ「Cクラス セダン」は予想以上の大接戦!
そんな状況の中、2014-2015のCOTY争いが始まった。デミオはハイブリッド全盛となっているコンパクトカーに、クリーンディーゼルという“古くて新しい”エンジンを投入。ベンツと言えば、複数のレーダーやステレオカメラを使い世界最先端の「事故を回避する技術」を持たせてきた。それでも今までなら日本車が圧倒的に有利な展開になったことだろう。しかし、前年のゴルフから明らかに流れは変わっている。「輸入車の素晴らしさ」を積極的に評価する選考委員が増えてきた。実際、2車種を乗り比べたら、どちらに多くの点を入れるべきか大いに迷う。
59人いる選考委員の開票が始まるや予想以上の大接戦! 20人目までCクラス優勢。40人目の中間集計でもCクラスリード。このまま2年連続で輸入車のCOTY受賞になるかと思いきや、53人目から連続してデミオの満点(10 点)が入り逆転! そのまま逃げ切ってしまった。
前述の通り、19点という僅差(デミオに10点を入れた選考委員が逆の配点を しただけでひっくり返ります)でCクラスはCOTYを逃がしてしまう。『インポートCOTY』は獲得したものの、実に惜しかった。考え方によっては「日本車の地盤も厳しくなってきた」ということですね。
来年のCOTYはマツダの新型『ロードスター』やホンダの超意欲作であるホンダ 『S660』。そして世界初の量販燃料電池車であるトヨタ『ミライ』など 日本車代表の層も厚い。果たしてどんな輸入車のライバルが登場してくるだろうか?
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