夏に最適な庭リフォームとは?
涼しい庭のつくり方、夏に最適な庭リフォームとは?
<目次>
涼しい庭はウッドデッキから! 表面温度は予想以上に高い!?
ひと昔前によく見かけた庭と言えば、一面に芝生を敷き詰め、その周囲に低木や大木などの庭木をたくさん植えるといったプランでした。せっかくの庭なのだから、緑をいっぱいにしたいという思いがあったのでしょう。所せましと様々な木を植えたものです。最近の住宅地を歩いていると、芝生だったところはウッドデッキやタイル、レンガになり、樹木の種類もかなり絞ったデザインが目立ちます。風通しがよさそうで、おしゃれではあるのですが、緑の面積はかなり減った印象です。
ガーデンリフォームでも、草むしりや落ち葉の掃除が大変、害虫駆除に手間が掛かる、蚊がわきやすいなどの理由で、芝生や花壇、庭木を減らす依頼を受けるケースが増えています。
しかしこのような庭のプランが、家の中の暑さの原因になっている可能性があります。特によく聞くのが、夏になるとウッドデッキが暑い、庭に出られないという声です。そこで実際のところ、炎天下のウッドデッキはどれくらいの温度になっているのか、放射温度計を使って測ってみました。
放射温度計で炎天下のウッドデッキの表面温度を測ってみたところ60度を超えていた。この日の気温は31度(撮影:一級建築士事務所 OfficeYuu)
放射温度計とは物の表面温度を測ることができる機械で、上の写真は炎天下のウッドデッキの温度を測った様子です。この日の気温は31度にもかかわらず、なんと60度を超えていました。ちなみに床暖房の表面温度は約30度ですから、いかに暑いかよくわかります。ガイドYuuが撮影中も、あまりの暑さに急いで室内へと戻りました。
庭が暑いと、家の中も暑くなる...
実はこのような庭の状況は、都市部で起きているヒートアイランド現象とよく似ています。ヒートアイランド現象とは、郊外に比べて都市部の気温が高くなることを言い、その原因のひとつに、自然の土や緑を人工物で覆ってしまっていることがあげられます。自然の土や緑は、水蒸気の放出によって地面の表面温度を下げてくれます。しかし人工物で覆われた地面は、水蒸気の放出が妨げられるので、地面の温度を下げることができません。しかもその人工物は太陽光によって熱せられることで蓄熱し、その熱が大気を再加熱、更に気温を上昇させます。
草木の生えた地面は、強い日差しを受けても、水蒸気の蒸発で表面温度はそれほど上がらず、その周辺では涼しい風が吹きます。しかし人工物で覆われた地面は表面温度が上昇するので、周辺がとても暑くなり、吹く風も涼しくないというわけです。
さて我が家の庭はどんな状況になっているでしょうか。蓄熱した人工物が発する熱は「輻射熱」もしくは「放射熱」と呼ばれ、これは床暖房やパネルヒーターと同じ原理です。いくらエアコンを付けて室温を下げようとしても、庭で巨大な床暖房があるような状態では、家の中も涼しくならず、光熱費がかさんでしまいます。
庭は風景というだけでなく、室内環境に大きな影響を与えています。まずは我が家の庭に蓄熱しているものはないか、庭に出て確認してみましょう。
涼しい夏の庭づくりは「日本古来の知恵」を参考に
では家の中を涼しくする庭とはどんな庭でしょうか。日本古来の庭づくりには、夏を涼しく過ごすための工夫が凝らされていました。江戸時代の大名屋敷の庭園には、自然を模した山や森や池が作られ、心和む空間であったとともに、庭の中で自然な対流が生まれ、真夏の暑い日でも水辺に立つと、そよそよと涼風を感じられたと言います。日本庭園では定番の苔も、地面の温度を下げるのに役立っていました。私が子どものころの昭和の日本の民家でも、庭に小さな池を作り、まわりに草木を植えて木陰にし、その水を冷たく保つ工夫をしている家をよく見かけました。木陰や冷たい水辺を抜けて吹いてくる風は気持ちよく、見た目にも涼感たっぷりでした。
また池には縁日ですくった金魚を入れ、ボウフラが沸くのを防ぎ、冬になれば水を抜き、中に寒さに弱い植木鉢を入れてビニールをかぶせて簡易温室にする、というような生活の知恵もありました。
このような知恵は、今の暮らしの中にも活かすことができます。そこで現代の庭でも取り入れやすい、暑い夏を涼しくする庭リフォームのポイントを、5つに絞ってご紹介します。
ウッドデッキに直射日光はNG!木陰をつくろう
暑い夏を涼しくするガーデンリフォームのポイント1つめは、人気アイテムであるウッドデッキの対策です。夏の直射日光が当たったウッドデッキの表面温度は60度を超えることもあります。これでは庭に巨大な床暖房があるようなものですから、庭が暑いのはもちろん、家の中まで暑さを感じて当然です。夏を涼しくする第一歩は、ウッドデッキの表面温度を上げないことです。先ほど炎天下では60度を超えていたウッドデッキの表面温度ですが、木陰になった部分で計測すると33.4度でした。
つまり涼しい庭にするために大切なことは、ウッドデッキに直射日光を当てずに日かげにしておくことです。これはレンガやモルタルを敷いた床面も同じです。開閉式のオーニングなどの日よけを取り付けリフォームしておけば、それだけでも涼しい庭にすることができ、家の中でも涼しく過ごすことができるようになります。
ウッドデッキやレンガ、モルタル敷きの庭を日影にすることが涼しさへの第一歩(YKK AP)
木陰づくりに人気な落葉樹は「ハナミズキ&ヒメシャラ」
庭を涼しくする2つめのポイントは、庭に落葉樹を植えて木陰を作ることです。落葉樹なら暑い夏は葉が茂って木陰を作ってくれ、冬は葉が落ちるので日差しを遮ることがありません。木陰を抜けて吹いてくる風は涼やかで気持ちがいいものです。我が家のイメージアップを図るシンボルツリーとして人気があるのはハナミズキやヒメシャラなどです。下の写真はハナミズキ、白やピンクのとても可愛らしい花を咲かせます。
涼しい庭づくりに欠かせない水辺づくり
暑い夏を涼しく過ごせる庭にするのポイント3つめは、庭に水辺を作ることです。手軽なプチリフォームで涼感を演出できるのが、ビオトープです。ビオトープとは水を張った大き目の鉢の中に、水草やメダカなどを入れて、自然な環境を再現する空間のこと。鉢の中で自然循環を目指します。ただし炎天下にそのまま置いておくと、あっという間にバランスが崩れて水が腐ります。ビオトープにも日よけを付けて、日陰にしておきましょう。
簡易な池を作るなら、成型池を地面に埋め込む方法もあります。こちらはろ過装置などの水質管理が必要になるため、少し大掛かりになります。どちらにしても、水辺の周辺は木を植えて木陰にし、水を冷たく保つ工夫をしておくことが涼しさの秘訣です。
保水タイルを敷いて朝夕に打ち水を!
4つめのポイントは、地面を冷やす工夫です。植物の力は偉大ですから、芝生を植えておくのが涼しい庭にするコツですが、そうはいってもコンクリートのベランダやテラスに芝生を敷くのは難しいもの、また芝刈りや草むしりなど管理も大変です。保水効果があるタイル。ベランダやテラスなどのコンクリート部分にお勧め(清涼バーセア/TOTO)
そんな時は、保水タイルを敷く方法があります。保水タイルとは名前の通り、保水性があるタイルで、打ち水+保水効果+気化熱によって表面温度を下げる機能があります。ただし炎天下に打ち水をすると、湿度が上がって却って不快になることも。打ち水は朝夕の気温が下がった時に行いましょう。
屋外の塗装部には遮熱塗料を使うと10度も気温が下がる
暑い庭を涼しくするポイント5つめは、遮熱塗料を使うことです。例えば手すりや物置などは、直射日光が当たることで蓄熱し、庭を更に暑くする原因になります。そんな時は、表面温度を抑制する機能を持った遮熱塗料を使用することで、約10度ほど下げることができます。快適な夏の過ごし方は涼しい庭づくりから
このように家の中の暑さは、庭のつくりに大きく左右されます。いくらエアコンの設定温度を下げても、庭に暑さの原因があると、なかなか涼しくなりません。まずは日差しのコントロールをして、夏が涼しい庭にしましょう。手軽なものから本格派まで、オーニングの選び方、取り付けリフォームのポイントは下記で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧下さい。
また暑い夏の日に、エアコンが効かないと感じたら、チェックしておきたい3つのポイントを下記でご紹介しています。本体が原因となっているケースの他に、家の作りそのものが原因になっていることもありますので、暑さに悩んでいる方はぜひご覧下さい。
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