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日本代表アギーレ新監督のキーワードは「競争力」

日本代表のハビエル・アギーレ新監督が、所信表明演説とも言うべき記者会見に臨んだ。8月11日に来日したメキシコ人指揮官の構想とは?

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

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選手と監督でW杯出場の実績は歴代トップ

アギーレ新監督と過去の外国人監督には、明確な違いがひとつある。

アギーレ新監督と過去の外国人監督には、明確な違いがひとつある。

日本サッカー協会とハビエル・アギーレ新監督(55歳)は、8月11日に正式契約を結んだ。1992年のハンス・オフト(オランダ)以降では、ファルカン(ブラジル)、トルシエ(フランス)、ジーコ(ブラジル)、オシム(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、ザッケローニ(イタリア)に次いで7人目の外国人監督で、メキシコ人は初めてとなる。

ここに紹介した歴代の外国人監督は、様々はタイプに分類できる。

オフト、ジーコ、オシムの3人は、監督就任前から日本とのつながりを持っていた。3度のW杯に出場したジーコは、ブラジルサッカー界が世界に誇るレジェンドでもある。

ファルカンも現役時代にW杯のピッチに立ち、母国ブラジルの代表監督を務めたこともあった。W杯には出場していないものの、オシムも代表選手として国際舞台で活躍した。

トルシエは日本代表を率いる直前のフランスW杯で、南アフリカ代表監督を務めた。その一方で、プレーヤーとしてのキャリアは乏しい。

前任者のザッケローニは、母国イタリアの強豪クラブで采配をふるってきた。長友佑都(27歳)が在籍するインテル・ミラノや、本田圭佑(28歳)がプレーするACミランなどの監督を務めてきた。クラブレベルでの経験は歴代監督でもトップと言っていいが、代表チームを束ねたことはなかった。選手としてW杯に出場したこともない。

すでにお気づきのかたもいるに違いない。歴代の外国人監督には、日本代表監督に就任する以前に選手と監督の両方でW杯に出場した人材はひとりもいないのだ。

アギーレは違う。

自国で開催された1986年のW杯に、彼は出場している。チームもベスト8まで勝ち残った。

監督としては2度の出場歴がある。2002年の日韓大会と10年の南アフリカ大会でメキシコのベンチをあずかり、ともにグループステージを突破している。日本での知名度はそれほど高くないものの、W杯の経験においては過去最高の人材なのである。


日本代表監督に生かされる足跡

日本代表の監督に就任する直前は、スペイン・リーガエスパニョーラのエスパニョールを率いていた。オファーを受けた当初は2部降格圏内にあったチームを、アギーレは1部残留へと導いた。バルセロナに本拠地を置くクラブを、今年5月の退任までしっかりと一部にとどめている。

エスパニョールを統べる以前にも、降格の危機にあったチームを救い出している。同じくリーガ・エスパニョーラのレアル・サラゴサをシーズン途中から束ね、最下位に沈んでいたチームを残留圏内へ押し上げたのだ。

世界的なスター選手を擁するチームで残した実績は、日本代表監督に選ばれる理由には成りえない。当然だ。リオネル・メッシ(27歳)やクリスティアーノ・ロナウド(29歳)のようなスーパースターが、日本代表にはいないからである。

むしろ求められるのは、戦力に恵まれているとは言えないリーグ中堅や下位のクラブで、どれだけ強豪に対抗してきたのかだ。スペインリーグの中堅クラブを率いてきたアギーレの実績は、そのまま世界へ立ち向かう日本代表の戦いぶりに置き換えることができるだろう。

同時にアギーレは、リーガ・エスパニョーラで上位に食い込めるチームの監督経験を持つ。さらに加えて、メキシコ代表監督としての日々も見逃せない。様々な環境下でクラブや代表をまとめてきた彼の履歴書は、派手さないものの日本代表に当てはめられる部分が多いのだ。


「技術」プラス「競争力」で日本代表を再生する

8月11日の記者会見では、「守備に力を入れたい」と話した。だからと言って、大幅な方向転換をするわけではない。

ブラジルW杯で優勝したドイツは、得点力豊かな攻撃力と堅固な守備力を併せ持っていた。メッシの存在がクローズアップされたアルゼンチンも、決勝進出の要因はディフェンスにあった。

攻撃だけを強みにしていたら、W杯で結果を残せない。守備的な戦いだけでも限界がある。対戦相手、スコア、時間帯などによって攻撃的にも守備的にも戦える柔軟性こそが、これからの日本代表には必要だ。

世界標準のそうしたチームを、アギーレは「競争力のあるチーム」と表現した。接戦に強い。競り合いに負けない。我慢比べのような展開で譲らない──いずれも、ブラジルW杯の日本代表に欠けていたものだ。

分かりやすい華やかさはなくても、しぶとく勝利をつかむ。日本人が持つ技術に競争力を加えることで、アギーレは我々のチームを再生させようとしている。
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