9月復帰に向けて確かな手応えをつかむ
ヤンキースのジラルディ監督は「すべてうまくいっている」と明るい見通しであることを明らかにしている。
田中は8月4日(日本時間5日)、ヤンキースタジアムで故障後初めてキャッチボールを行った。約20メートルの距離で25球。まだ手探りの状態だったが「投げる前までワクワクしていた。ひとつのステップアップができたということで、ホッとしている。これから投げる距離、強度を上げていくが、その第一歩になった」と明るい表情で感触を振り返った。翌5日(同6日)は、約20メートルと距離は変わらなかったが、その言葉通りに強度を上げて、倍の50球。そして、1日の休みを挟んだ後の7日(同8日)には、初めて報道陣の前で約30メートルと距離を伸ばして60球を投げ、復活への確かな手応えをつかんだ。
この状態を見たジラルディ監督は「すべてうまくいっている。いくつかのポイントはあるが、このまま進めばわれわれと一緒に過ごすことができるだろう」と明るい見通しであることを明らかにし、今後も田中をチームに帯同させながらリハビリさせる方針であることを明言した。キャッシュマンGMは「どこかのタイミングで戻って来てほしい」と慎重な姿勢を崩していないが、リハビリスケジュールから9月復帰を示唆した。
今後は、距離を延ばし、強度を上げたキャッチボールを続け、平地での投球、ブルペンでの投球、打撃投手、マイナーでの調整登板とステップを踏んでいく。トミー・ジョン手術に踏み切る可能性はゼロではないにしても、痛みが出ない限り、スケジュール通りの復帰プランが進行していく。
野球専門誌“ベースボール・アメリカ”は7日(同8日)、毎年恒例となっている大リーグ30球団監督の投票による今季の部門別ベストプレーヤーを発表したが、田中がア・リーグ“ベストピッチャー”部門でルーキーながら2位に選ばれた。1位はマリナーズのフェリックス・ヘルナンデスで、3位はアスレチックス(レッドソックスから移籍)のジョン・レスターで、ともにメジャー通算100勝を超えている投手であることを思えば、その間に割って入った田中の評価の高さが改めて証明された。田中は前半戦で離脱したものの、18試合に登板し、12勝4敗、防御率2.51で、四球がわずかに19、奪三振は135。9月に復帰しても、まだまだ最多勝、サイ・ヤング賞を争えるほどの際立った成績を残している。評価が高いのは当然といえるだろう。
手術を回避して、自身から採取した血小板を使って組織の修復や再生を図るPRP注射での治療を選択した田中。そのチョイスが正しかったかどうかの“答え”が出る日はそう遠くない。