無月経を経験した選手のうち、3人に1人が疲労骨折を起こしています。

無月経を経験した選手のうち、3人に1人が疲労骨折を起こしています。

2020年の東京オリンピックに向けて今、新たな時代の若いアスリートの育成が求められています。しかしこうした中、10代の女子アスリートの間で深刻な問題が起きていることが分かってきました。厳しい体重制限などが要因となって生理(月経)が止まり、疲労骨折を繰り返すケースが広がっています。

無月経が疲労骨折につながる

月経が来ないことを無月経といいます。国立スポーツ科学センター(JISS)で、トップアスリート683名を対象に行った調査の結果、無月経のアスリートは7.8%であり、月経不順をあわせると全体の約40%に月経周期の異常がみられ、特に体操、新体操、フィギュアスケートのような審美系競技や陸上長距離で無月経が多いことが明らかとなりました。また、無月経を経験した選手のうち、その後に疲労骨折を起こしたのは34%で、3人に1人と高率に発生しています。

月経によって分泌される女性ホルモンは、骨の形成に欠かせません。骨は壊れたり、再生されたりを繰り返し、強度を保っています。無月経になると、女性ホルモンが不足し骨が再生されないため、もろくなってしまいます。この状態で激しい運動を続けると、負荷に耐えきれず疲労骨折を起こしやすくなるのです。

この無月経と疲労骨折の問題は、厳しい体重制限による女性ホルモンの不足から起きるもので、場合によっては、選手生命を奪うほどの事態となっていることも分かってきました。

女性アスリートは、月経の影響を理解すべき

10代女子では、11~14歳で骨密度の年齢増加率が最も大きく、18歳ころに骨量のピークを迎えます。10代の骨形成時に十分なカルシウムの摂取、適切な運動、順調な月経があると、骨密度を増加させ、高い骨量を獲得することができます。骨密度の急激な減少をきたす閉経期を迎えても、高い骨量が持続できていれば、その後の老年期に骨粗しょう症や骨折の危険性を回避することができます。そのため、骨粗しょう症の予防のためには若年期より骨量をできるだけ高めておくことが大切になります。

このように10代は骨密度が急激に高まる時期なので、このときに無月経になることは、非常に大きな問題となります。女性ホルモンが少ないと、骨密度が増加するどころか、減ってしまいます。その状態で競技を続けていると、疲労骨折を起こすことになり、また女性ホルモンが少ない状態がずっと続いてると、子宮も萎縮し、将来的には排卵障害になり不妊症なども起きてきます。しかしながら、10代でみつけて適切な治療すれば、このような問題が起こることは少なくなります。10代アスリートの無月経は、早期発見、早期治療が非常に大切なことです。

疲労骨折を起こした選手の中には、「生理が来ていないことと疲労骨折に関係があったとは知らなかったので驚いた。実際検査を受けて、こういうのあるんだって知りました」という声がよく聞かれます。今後、アスリートや周囲のスタッフに対し月経異常の問題についての教育・啓発を十分に行っていく必要があります。

一般女性にも注意が必要

無月経の原因のひとつとしてまずあげられるのがストレスです。受験、就職、失恋、引越しなどがストレスとなり、無月経を起こすことがあるのです。特に、極端なダイエットをしたために月経が止まってしまったという人はとても多く、一般女性も心配です。

人間のカラダのなかでは、さまざまな臓器が働いています。最も大切なのが心臓や肺、脳などで、子宮や卵巣などは、生命維持に重要なものではありません。そのためダイエットで栄養不足になると、心臓などへ優先的に栄養が回され、子宮や卵巣はあと回しになります。その結果卵巣は働かなくなり、無月経になります。

閉経の平均年齢は50~51才ですが、最近はストレス社会のためか、20~30代で月経の異常を感じる人が増えています。無月経は単に妊娠・出産ができなくなるだけでなく、人より早く骨密度が下がって骨粗しょう症になったり、生活習慣病のリスクが増えるなど、老化を早めることになります。

無月経は治療可能

無月経の状態が長引けば長引くほど、自力で月経を起こせる可能性は低くなっていきます。妊娠でもないのに無月経が3ヶ月以上続く場合は、婦人科に相談に行き、必要であれば適切な治療を受けることを考えてください。まれに甲状腺や子宮などの病気が原因で無月経になることがあるため、無月経の原因を調べることも大切です。

無月経や月経不順は、ホルモン療法や排卵誘発療法の進歩により大部分は治療可能で、将来の妊娠・分娩も期待できます。ただし、無月経を長期間放置すると重症化し、排卵誘発療法などがより困難になる場合もあります。早期診断・治療の原則を忘れないでください。

月経に異常を感じたら、まず基礎体温をつけること、生活を規則正しくすること(夜更かしや朝寝坊をしないこと)、好き嫌いなく1日3食食べること、体重の急な増減を避けること、1日6時間以上の睡眠時間を確保することなどに気をつけます。無月経は放置しておいた時間が長ければ長いほど、治療にかかる時間も長くなるため、早めに婦人科で相談することが大切です。


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