手術の後、「オナラがでた?」と聞かれるのはなぜ
手術のあと、「オナラはでましたか?」と聞かれたことはありませんか
腸閉塞とは、「なんらかの原因により腸管内容の肛門側への輸送が障害された状態」をいいます。お腹の手術のあとは消化管の動きが低下することにより、腸管内容物の肛門側への輸送が障害されています。これを「術後の麻痺性イレウス」といいます。
麻痺性イレウスになると、腸管内のガスは逃げ場がなくなりガスがたまります。ガスがたまることでお腹が張って苦しくなってきます。術後、時間の経過と共に消化管の動きが改善すると、ガスを肛門側へ押し出すことが可能となります。傷口の痛みも軽快し力むことができるようになることも加わって、「ブッ」とオナラがだせるようになるのです。これで、術後の麻痺性イレウスは無事に解除されました。
また、このような腸閉塞以外にも、「ただの便秘と思っていたら、腸閉塞を起こして緊急入院」というようなマズイ腸閉塞もあるので注意が必要です。
それはホントにただの便秘?
「最近、急に便秘がひどくなって…」と病院に来られる方は少なくありません。そして、便秘を放置しておいたがために、腸閉塞をきたして緊急入院となる患者さんも珍しくはないのです。ただの便秘と思われていて、腸閉塞をきたす原因で多いのが大腸がん。大腸がんは、腸閉塞を起こす三大原因のうちの一つです。成人で急に便秘がひどくなった場合は、大腸がんを考えなければなりません。
腸閉塞の原因
腸閉塞の原因は、以上のように術後の腸管麻痺や大腸がんによるものなど様々です。腸閉塞の原因としては、大きく分けて機械的イレウスと機能的イレウスに分類されます。■機械的イレウス:腸の狭窄や閉塞をきたす明らかな病変があるもの
- 単純性イレウス:腸管内腔のみの閉塞で血行障害がないもの。(例)術後癒着による狭窄や腫瘍による閉塞など
- 複雑性イレウス(絞扼性イレウス):腸管閉塞に加えて血行障害があるもの。(例)腸ねん転、ヘルニア嵌頓、腸重積など
- 麻痺性イレウス:腸管運動麻痺のため蠕動運動が低下したもの。(例)腹部手術直後の腸管運動麻痺、腹膜炎などの炎症性疾患など
- けいれん性イレウス:腸管の一部が持続性にけいれんすることにより生じるもの。(例)鉛中毒やヒステリーなど
腸閉塞の症状
腸に流れ込む腸液は、1日に9リットルもあります!
大量の腸液を外に出そうとすることで、悪心・嘔吐をきたします。嘔吐をするとたまった腸液が減少するので、一時的には症状が改善します。腸閉塞では、本来吸収されるべき水分が吸収されないため高度な脱水状態になります。
腸閉塞の検査
- 腹部単純X線検査:多量の小腸ガス像や腸液がたまることにより見える鏡面像(二ボー)を確認します
- 腹部超音波検査:腸管の動きや腸管の拡張、腹水の有無などを確認します
- 腹部CT検査:腸管の拡張や浮腫、腫瘍などによる閉塞機転、血行障害、腹水の有無などを確認します
腸閉塞の治療
腸ねん転やヘルニア嵌頓など血行障害を伴う複雑性イレウス(絞扼性イレウス)では、腸が壊死する可能性があるため緊急手術の適応となります。その他の腸閉塞では保存的に治療を行います。絶飲食として、脱水や電解質異常に対して点滴を行います。そして、腸液を排出するため鼻からチューブ(イレウス管)を腸管内に挿入します。腸液を排出し腸管内圧を下げることで腸閉塞を解除します。保存的治療を5~7日間行っても改善がない場合は、手術の検討が必要になります。