相手守備陣を切り裂く3つの「個」
国内にも注目のタレントは数多くいる。
世界の最先端を知る男である。2011年にドイツ・ブンデスリーガの超名門バイエルン・ミュンヘンへ期限付き移籍した宇佐美は、ドイツ代表主将のフィリップ・ラーム、オランダ代表の快速FWアリエン・ロッベン、フランス代表のフランク・リベリーら、世界のスーパースターとともにプレーした。翌シーズンは同じドイツのホッフェンハイムへ期限付き移籍し、リーグ戦20試合出場した。12年夏にはU-23(23歳以下)日本代表の一員として、ロンドン五輪のピッチにも立っている。
昨年夏からは古巣のガンバ大阪に復帰したが、クラブがJ1へ戻った今シーズンはケガでシーズン序盤を欠場した。アピールの機会を失ったことでブラジルW杯のメンバー入りは叶わなかったが、7月中旬のリーグ再開後は好調を維持している。
局面を切り開くドリブルと決定力は、アルベルト・ザッケローニ前監督も注目していた。ハビエル・アギーレ新監督(55歳)も、早い段階で彼を招集するに違いにない。
ブラジルW杯のメンバーでは、齋藤学(24歳)が変化の兆しを見せている。
“ハマのメッシ”とも呼ばれる横浜F・マリノスのドリブラーは、出場機会を得られなかったW杯を受けて、プレースタイルの幅をひろげつつある。これまで足元でパスを受けることが多かったが、スペースでボールを受ける機会を増やしているのだ。それによってドリブルの脅威度が増し、ゴールゲッターとしての性格も強まりつつある。
次世代の攻撃的タレントはまだいる。
セレッソ大阪の南野拓実(19歳)は、強気なメンタリティの持ち主だ。アタッキングゾーンでは、迷うことなく仕掛ける。
チームメイトにはウルグアイ代表のディエゴ・フォルラン(35歳)がいるが、世界的な大物フォワードにも決して遠慮しない。柿谷曜一朗(24歳)が移籍したセレッソの攻撃を牽引するのは、この19歳になるはずだ。
ボランチの人選にアギーレ色が出る
アギーレ新監督が最初に自分の色を出すのは、攻守を司るボランチになるだろう。日本代表では遠藤保仁(34歳)と長谷部誠(30歳)が長くコンビを組んできたが、そろそろ世代交代の時期を迎えている。実際に、ブラジルW杯では山口蛍(23歳)が台頭した。セレッソ大阪でキャプテンを務める山口に加えて、鹿島アントラーズの柴崎岳(22歳)もアギーレ体制では代表に食い込んできそうだ。
鹿島アントラーズでプレーするこのボランチには、ザッケローニ前監督も早くから熱い視線を注いできた。ケガなどで国際舞台へのデビューは見送られてきたものの、視野の広さを生かした展開力は国内屈指のレベルにある。
扇原貴宏(22歳)も期待を集めるボランチだ。
センターバックでもプレーできるマルチな才能を持ち、184センチとサイズもある。精度の高い左足キックでコーナーキックやフリーキックを任され、攻撃のスイッチを入れるタテパスも鋭い。若年層から日本代表に選出されており、日本代表には昨年7月の東アジアカップでデビューを飾っている。可能性を秘めた選手のひとりだ。
豊田は戦術を選ばない
ブラジルW杯の直前に、メンバー入りが噂された選手たちのその後は?サガン鳥栖の豊田陽平(29歳)は、J1の得点ランキングで3位につけている。ヘディングの強さと前線からの献身的なディフェンスは、システムや戦略を選ばない。アギーレ新監督が彼の個性をチームに落とし込めば、貴重な戦力になるだろう。
昨シーズンのJ1で得点ランキング2位の23ゴールを叩きだした川又堅碁(24歳)は、ここまで3ゴールにとどまっている。W杯後に再開されたJ1リーグでは、3試合連続でメンバーから漏れている。再び代表候補に浮上できるか、いまが正念場だ。
ストライカーでは永井謙佑(25歳)の爆発も待たれる。
4年前の南アフリカW杯に、香川真司(25歳)らとともにサポートメンバーとして帯同したひとりで、2012年にはリーグ戦で10ゴールをマークしている。
永井の魅力は驚異的なスピードだ。ディフェンダーを一瞬で置き去りにする加速力は、国際舞台でも間違いなく通用する。所属する名古屋グランパスで得点に絡むことで、存在感を示したい。
アギーレ新監督の初陣は、9月5日のウルグアイ戦だ。メキシコ人指揮官は8月に来日し、Jリーグの視察をスタートさせる。
監督が代われば、選手も入れ替わるものだ。4年後へ向けてリスタートを切る日本代表に、新風を吹き込むのは誰なのか。ヨーロッパでプレーする海外組だけでなく、Jリーグにも注目してほしい。