2009年6月に長期優良住宅普及促進法が誕生してから丸5年。法律の施行以来、いまだ一戸建て住宅に認定戸数は偏在しているものの、非認定住宅と比較して平均2割程度の建設コストアップ(国土交通省の試算)を負担してまでも、今では年間10万戸超の長期優良住宅が誕生するようになりました(下表参照)。長期間にわたって使用可能な良質な住宅ストックの形成に向け、当該認定制度が受け入れられ始めている証左といえるでしょう。
建ぺい率が40%しかなく、長期優良住宅の認定要件を満たせない。
ただ、今回の注文住宅の目的は腰痛に苦しむ母親が快適に過ごせるマイホームを手に入れることです。高齢者仕様が最優先であり、高耐久住宅の建築は副次的な要素に過ぎません。
また、長期優良住宅では引き渡し後、建物の定期的な点検・補修に関する維持管理の履歴を蓄積することが所有者に義務付けられています。こうした作業は後期高齢者である両親にとって大きな負担となり、かえって病状を悪化させかねません。そう考えると無理に長期優良住宅にしなくてよかったと、今では感じています。すべて“結果オーライ”という結論に至りました。
さて、今回で第9回目となる高齢者仕様住宅の新築連載シリーズ。本稿では両親宅の上棟工事をご紹介します。一体どのような工事が行なわれたのか、その工程を1つずつ見ていくことにしましょう。
大引き・根太・床束の3重構造により、強固な1階の床面が出来上がる
1階の床組みの様子
まず初めが土台の敷き込みです。完成した基礎の立ち上げ部分に土台を敷き込み、アンカーボルトで緊結していきます。その際、基礎部分と木製の土台の間にはゴム製の「基礎パッキン」を緩衝材として挟み込み、基礎と土台が直接、触れないようにしていました。
「大引き」を支えるべく、「床束」という鋼製の支柱を要所に施工する。
ただ、技法はこれだけではありませんでした。土台の間に渡した「大引き」を支えるべく、「床束(ゆかづか)」という鋼製の支柱を要所に施工していました。垂直力に抗するための“つっかえ棒”としての役割が床束にはあります。これにより、ゆがみのない強固な床面が出来上がりました。
次ページでは柱建て、2階の床組み、さらに小屋組みについて、施工実例をご紹介します。