107万人に影響が出る、制度の改革

要支援1~2の人をどう支えていくかは重要な課題です

要支援1~2の人をどう支えていくかは重要な課題です

2014年6月18日に成立した医療・介護一括法(地域医療・介護総合確保推進法)のなかで、介護保険制度について大きな改革が行われることになりました。その概要は、前回の記事で紹介した通りなのですが、今回はそのなかでも特に多くの人に影響のある、訪問介護と通所介護の変更点についてご紹介します。

2014年5月現在、要支援1~2と認定されて介護保険サービスを利用している人は延べ107万人弱。そのなかで、訪問介護を利用している人が約44.4万人、通所介護を利用している人が約46.8万人います。

2015年の4月から2018年3月にかけて、これらがすべて介護保険サービスから外され、市町村事業に移行となります。現在、訪問介護や通所介護を利用している人々のニーズを把握し、どのような提供体制を構築していくのか、現在サービスを提供している事業所とどのような調整を行うのかなど、市町村にとっては課題が山積みです。

現状、国が明らかにしている移行スケジュールは次の図の通りです。図のなかで書かれている「保険者」とは、市町村のことを指します。
 

 

第52回社会保障審議会介護保険部会資料2「市町村の新しい総合事業実施に向けたスケジュールについて(イメージ)」

第52回社会保障審議会介護保険部会資料2「市町村の新しい総合事業実施に向けたスケジュールについて(イメージ)」



【参照】
介護給付費実態調査月報(平成26年5月審査分)
 

 

多様化する訪問介護と通所介護

現状、厚生労働省が明らかにしている、要支援1~2の人向けの訪問介護や通所介護の移行イメージは、次の図の通りです。

 

 

第52回社会保障審議会介護保険部会資料2「要支援者に対する訪問介護・通所介護の多様化(イメージ)」

第52回社会保障審議会介護保険部会資料2「要支援者に対する訪問介護・通所介護の多様化(イメージ)」


同じ資料のなかで、「全国一律のサービス内容であった訪問介護や通所介護については、事業に移行することにより、既存の介護事業所による既存のサービスに加えて、多様なサービスが多様な主体により提供され、利用者が多様なサービスを選択可能となる」と書かれています。

しかし現実的には、利用者自らが積極的にサービスを選択・活用できるケースばかりではありません。多様なサービスごとの違いを正確に把握し、状況に合わせて使い分けるのは、なかなか難しいもの。

利用者一人ひとりに合ったサービスを選び、上手に活用していくという部分で、今後は地域包括支援センターが果たす役割がますます大きくなっていくのかもしれません。
 

 

サービス利用者にとっては、強い逆風

厚生労働省の説明によると、「介護保険サービスから要支援1~2の人のための訪問介護や通所介護を廃止しても、現在の財源を新たな事業に移すので、サービスの利用は継続できる」とのこと。これはどこまで信じてよいのでしょうか?

2014年5月現在、1カ月あたりのサービス費用額は、訪問介護で約92億円、通所介護で約167.3億円。これは、要支援1~2の人のための介護保険サービス全体の60%近くを占めています。

7月28日に厚生労働省が公表したガイドラインによると、「低いコストで成果を上げる、効率的な仕組みの構築を促す」ことを目的として、これまで毎年5~6%程度の増加となっていたサービス費用の伸びを、75歳以上の高齢者の増加率と同じ3~4%程度に留めるというルールになっています。また、やむを得ない理由がある場合を除き、上限を超えたら市町村に費用を負担させる仕組みも導入させるとのことです。

この一方で、サービスの単価や基準、利用者の負担については、市町村に大きな裁量を委ねています。訪問介護を国による負担を減らす代わりに、次のような決断を市町村に迫っている状態だと言えます。

 

  • 利用者の負担を上げる
  • NPO法人やボランティアなどが提供する安いサービスを積極的に導入する

極論を言えば、市町村がその気になれば要支援1~2の人向けの訪問介護や通所介護を「全額自己負担」としてしまうことも可能です。サービス利用者にとって、厳しい現実が待っているであろうことは、想像に難くありません。
 

 

要支援1~2向けのサービスはムダなのか?

ガイドである私個人の意見としては、要支援1~2の「切り捨て」とも思えるような今回の改革案には断固反対です。

これは何も、利用者である介護家族の立場からだけ言っているわけではありません。介護の初期段階である要支援1~2の人を手厚くサポートしていくことで、要介護度が高くなるのを防ぎ、介護関連全体のコストを抑制できると考えているからです。またこれは、過去の介護保険制度の改革のなかで、厚生労働省自身が掲げていた方針でもあります。

「安い」というだけの理由で、資格を持たないボランティアなどにサービスの提供を委ねきってしまうと、資格を持ったホームヘルパーなら気づけるような細かい体調の変化や認知症の兆候を見逃すリスクも高まるはず。何らかのトラブルが起きたとき、国は市町村やNPO法人、ボランティア団体などに責任を取らせようとでも考えているのでしょうか。

社会保障費全体を抑制すること自体には賛成なのですが、医療費を含めた全体のなかで、もう少し良いやり方が無かったものかと思います。

利用者として取ることのできる自衛策は少ないのですが、次の2つは実行しておくべきかと思います。

 

  • 要支援1~2向けの訪問介護と通所がいつ市町村事業に移行されるかは市町村によって異なるため、自分の住む地域がいつどうなるのか、今後の発表を注意深く見続けていく
  • 「既にサービスを受けている者については事業移行後も必要に応じて既存サービス相当のサービスを利用可能とする」となっているので、現在サービスを利用していない人も、必要に応じてなるべく早い時期からサービスの利用を開始する

もちろん、必要もないのにサービスを乱用するのは論外ですが、本当はサービスを受ける必要がある状態なのに、「他人が自宅に来るのがイヤ」などの理由で親がサービス利用を拒んでいるような場合は、強めに説得してみる価値はあるのではないでしょうか。

【関連記事】
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