マラリア
原虫に感染した蚊に刺されることで感染します。
日本に常にある病気ではありませんが、海外旅行者、在日外国人によって持ち込まれることがあります。世界的には年 3~5 億人が感染、200 万人も死亡しており、猛威をふるっている感染症です。
マラリアは症状によって、三日熱・四日熱・卵形熱・熱帯熱の 4 種類に分類されます。熱帯熱マラリアが最も重症になり、死亡する人が多いです。免疫力の弱い人が重症化しますので、子どもでの死亡率が高いです。
マラリアの症状
マラリアの原虫を持っている蚊に刺されてから、10~15日後に発症します。発症初期には、高熱、寒気、頭痛、嘔吐があります。- 三日熱
発症初期は4-5日間発熱が続き、無治療では1日おきに発熱 - 四日熱
2日おきに発熱 - 熱帯熱
寒気が無く、毎日発熱
高熱以外には、脈が速くなる頻脈、咳、頭痛、背部痛、嘔気・嘔吐、腹痛、下痢がみられます。
熱帯熱マラリアは、24時間以内に治療しないと重症化します。重症マラリアは、高度の貧血、血液が酸性になるアシドーシス、様々な臓器の機能が低下する多臓器不全になります。脳性マラリアでは、痙攣、意識障害があります。
三日熱マラリアと卵形マラリアでは、原虫が肝臓の中で休眠します。そのため、数週間から数か月後に発熱などの症状で再発します。
マラリアの診断と検査
マラリアの診断のために、まずは、問診が大切です。マラリアの多い時期から帰国したかどうかの渡航歴はぜひ話しておくべきです。その上でマラリアが疑われる場合は、検査を行います。マラリア原虫は赤血球に寄生します。
肝機能と呼ばれる肝臓に含まれる AST(GOT)、ALT(GPT)の値が上昇します。さらに、LDH の値が上昇し、さらに貧血になります。尿素窒素(BUN)、クレアチニンという体内老廃物が血液中で値が高くなり、腎不全になります。そのため、蛋白尿や血尿が出てきます。
マラリアは赤血球に感染しますので、赤血球にマラリア原虫を見つけることが確定診断ですが、なかなか見つけにくいです。
マラリアの予防
■「ハマダラカ」という蚊に刺されない- ハマダラカは、日没から日の出まで活動する夜行性。壁に止まっている時にはお尻を上げている
- 外出時には長袖、長ズボンを着用する
- 夜間には外出しない
- 蚊取り線香や虫除けスプレーを使用する
- 殺虫剤処理された蚊帳の中で寝る。また、破れていないかどうかを確認する
- 屋内での殺虫剤を噴霧する。持続性のあるもので、DDTという殺虫剤なら9~12ヵ月間効果が持続
■予防薬
2015年2月現在、ワクチンが開発中で、もうまもなく実用化されます。それまでは予防薬があります。
- クロロキン
最近、耐性マラリアが増えているので、渡航先のマラリアがクロロキン耐性かどうかを事前に知っておく。 - クロロキンとプログアニールの併用
クロロキンは週1回、プログアニールは毎日服用する - メフロキン
出国の1週間前から服用し、現地滞在中250mgを週に1回1錠、服用し、帰国後も4週間継続して服用します。この薬の副作用は、めまい、不快感、倦怠感でまれに痙攣があります。妊娠4ヵ月以降なら妊婦でも予防内服可能です。
熱帯熱マラリアは薬剤耐性が進んでいて、クロロキンを使用できる地域がなくなってきています。メフロキンにも耐性になっている場合は、ドキシサイクリン100mg毎日内服します。耐性菌の情報は、世界保健機構(WHO)のHPから情報が入手できます。
ドキシサイクリンは妊婦には使用できません。妊婦では、不要不急の目的の熱帯への渡航は避けるべきと思われます。
マラリアの治療
マラリアは早期診断と早期治療が大切です。現地で発症した場合は、現地での治療になるため、医療水準を知っておく必要があります。マラリアの多い国では、HIV(AIDS)感染症の頻度も多いため、医療機器についても注意が必要です。6カ月以上長期滞在の場合は、長期投与による副作用を避けるために、予防的な内服ではなく、発症時の治療をWHOは推奨しています。
治療は、予防内服する薬を通常量使用することになります。熱帯熱マラリアでは、アルテミシニン併用療法が行われます。
マラリアは何度も感染する可能性がありますが、再感染すると、病気の進行が遅くなります。
マラリアは感染症予防法では、4類感染症ですので、診断した医師は7日以内に保健所に届け出などしなければいけません。