「風船工場へ行く」。もうこの響きだけで、なんとウキウキするような、心くすぐられる楽しい魅力をたっぷりと秘めているのでしょう。風船というアイテムには、どうも人の気持ちを童心に戻らせてしまう要素があるようです。かわいい妖精達が歌いながら楽しそうに風船を作っているのかな?などと、つい勝手におとぎの国っぽい想像をしてしまいがち(ディズニーに影響され過ぎ?!)。果たして風船工場とはそんな素敵な場所なのか?

墨田区の風船メーカー、マルサ斉藤ゴムの社長、斉藤靖之さんに、千葉の銚子に手作り風船工場があるから行ってみませんか?とお誘いを頂き、喜び勇んで出かけました。

ところで銚子と言えば漁港です。おとぎの国から一気に現実めいた話ですが、朝東京を出るとだいたい昼頃に銚子へ着くので、工場の近くにある、新鮮な海の幸を買ったり食べたりできる卸売りセンター「ウオッセ21」でお昼ご飯にするのもおすすめかと思います。密かにここも楽しみのひとつでした。(みんなは海鮮丼、私は生シラス丼を食べました。)

風船工場です。

はい、風船工場です。え?ここ?というほど静かな佇まい。


工場の横の電車の線路。トトロが出てきそうです。

工場の横にある電車の線路。トトロが出てきそうです。


千葉・銚子のほのぼのとした風景の中にある風船工場

さて、いよいよ工場に着きました。広々とした畑の中にぽつり。まわりは緑の森と草原、畑しかなく、工場というより小さな作業小屋といった風情です。電車で向かう場合は、銚子電鉄の「君ケ浜」という駅が一番近く、駅から線路の上をてくてく歩くと左に工場が見えてくるというロマンチックなロケーション。歩道を行くより線路を直に歩く方が早いそうです。スタンドバイミーごっこもできてしまう。とにかくのどかですね。というかこのシチュエーション間違いなくジブリっぽい。おとぎの世界彷彿な風船工場を勝手に妄想できて、期待も高まります。

風船工場の中。ゴムの色がカラフルでかわいい。

風船工場の中。ゴムの色がカラフルでかわいい。


さっそく工場の中へ入りました。シブく古めかしい機械と、明るくポップな風船カラーの対比には、無意識にもテンション上がります。カラフルな液状のゴムの原料が入ったプールがあり、ガラス製の風船型をこの液体プールに数回浸して風船を作ります。何度か液体に浸して少しずつ皮膜を厚くしていくほうが丈夫で割れにくい風船になるそうです。

風船を作る型。色々なかたちがあります。

風船を作る型。色々なかたちがあります。

こちらも風船の型。うさぎです。

こちらも風船の型。うさぎ?!と思いきや耳の部分は吹き口で、3人で膨らませることができる「3口ある風船」だそうです。

風船型をゴムの液体に何度も浸けて作ります。

風船型をゴムの液体に何度も浸けて作ります。

なかなか味のある機械。作業するのは社長で職人の伊藤さん。

なかなか味のある機械。作業するのは社長で職人の伊藤さん。


そして風船作りに登場したのは妖精ではなく職人さん。社長でもある伊藤房雄さんは風船作りを始めて33年目のベテラン。浸す加減などは手作業で、職人自身が様子を見ながら機械を上下させて行います。一見単純そうに見えますが、程よい塩梅を見極め、細かい気配りのいる仕事です。液状ゴムを付けた風船型はその後乾燥室に入れて水分を飛ばし、乾燥させます。

風船の口部分をくるんと丸めるための作業。

風船の口部分をくるんと丸めるための作業。

口部分に注目。くるんと丸まりました。

口部分に注目。くるんと丸まりました。


こちらは何をしているのかというと、風船の吹き口の部分をくるんと丸めるための作業。棒の先にはそれぞれブラシのようなものが付いていて、モーターでグルグル回っています。そこに先ほどの風船型を通し、前後に何度か動かすと、ブラシが風船の口先部分に当たり、くるくると巻き上げていきます。私もやらせてもらいましたが、くるるんくるるんと面白いように巻き上り、健気に一生懸命動くこの機械の様子にさえ愛着が湧いてきました。そしてこのような些細な部分にもこんな風に手をかけて作っているのかと驚きました。

できあがった風船を型から手で外します。

できあがった風船を型から手で外します。

外した風船。ころんと丸いかたちです。

外した風船。ころんと丸いかたちです。

複雑な動物型。これで作る風船は高度な作業で、手作りでないと製造は難しいです。

こちらは複雑な動物型。これで作る風船は高度な作業で、とにかく外すのが大変だそう。手作りでないと製造は難しいです。(アッシュコンセプトと協同で作ったこの商品は「マンマル」というシリーズで発売しています。)


出来上がった風船は、手作業でガラス型から外します。ここも人の手なんですね。職人さんは慣れた手つきでくるくるっとあっという間に外していきますが、自分でいざやってみるとなかなか難しい。

小さい平べったいかたちの風船はまだいいですが、写真のような大きな型になると、口は小さいのにふくらみの部分が大きいので、外すのにぐいっと強く引っ張らなくてはならず、結構力がいります。あまり力を入れすぎると伸びたり破けてしまいそうで、なかなか気を使います。機械で作る風船の場合は空気の圧で吹き飛ばすように外すそうですが、手作業の場合はくるんと裏返して外すため、裏表が逆になっているのが手作りの証です。
膨らましてみました。まあるく仕上がっています。

膨らましてみました。まあるく仕上がっています。


また、こちらで作っている風船の原料は全て天然ゴム。ゴムの木の樹液から作られたもので、石油由来の合成ゴムとは違い、天然素材のため、落ち葉と同じような速度で朽ちていき、土に還るのだそうです。

しぼんでしまった風船は土へ還ります。

しぼんでしまった風船は土へ還ります。

驚きの職人技。ヨーヨー水風船の模様付け

さて、今回は特別に、お祭りなどでよく売っているヨーヨー水風船の模様付けの実演もして頂きました。こちらも全て手作業で行います。まずはこんな風に、模様のための色付きの液体ゴムを細い糸状に垂らします。

糸状に数本の液体を垂らしています。

白と黄色の液体を糸状に数本垂らしています。

風船型を左右に動かして模様付けします。

風船型を木枠ごと左右にくいっくいっと動かして、液体ゴムの下をくぐらせ、模様付けします。


透明なゴム皮膜を薄く付けた風船型の木枠を職人自身が持ち、絶妙なタイミングとリズムで左右に動かし、糸状に垂らした液体ゴムの下をくぐらせて模様を付けるのです。模様が付いたら90°ずつ角度を変えて木枠を回し、4回それぞれ同じ作業をします。

以前、陶芸のスリップウェアを体験したことがありますが、その逆のやり方と言ったらいいでしょうか。スリップウェアの場合は、陶器は動かさず、主に模様付けする液体の入った缶のほうを動かしますが、こちらは模様付けされる風船のほうを動かして作るところが面白く感じました。

実際、この様子をムービーに撮って、スリップウェアを作る陶芸家にも見せたところ、すごいなあ、とびっくりしていました。といっても、このように手作業で風船を作っているのは全国でもここぐらいだそうで、他にはありません。手作りのヨーヨー水風船は、模様に穏やかな揺らぎがあって、独特の味わいを感じます。こんなに大事に作られている風船だと知ったら、簡単に割ることなんてできませんね。

できあがり。とても美しい模様です。

できあがり。繊細でとても美しい模様です。


3時になったので、ちょっと一休み。職人さんの休憩時間です。そこでふと小さな細長い風船を取り出した伊藤さん。ちょいちょいと手先を器用に動かしてると思ったら、みるみるうちに可愛いプードルを作ってしまいました。実は伊藤さん、土日はピエロになって、様々なバルーンアートも作ってしまう名人だったのです。なんと!妖精はいませんでしたが、ピエロがいました!テレビにも何度か登場している人気者です。

小さな風船を手に何やら細工中。

小さな風船を手に何やら細工中。

プードルができました!

プードルができました!

休日の伊藤さんの姿。(工場内に貼ってあった写真です)

休日の伊藤さんの姿。完璧にピエロです。(工場内に貼ってあった写真です)


工場のすぐ近くには緑のきれいな森があり、遊歩道をずんずん歩いて抜けた先にはぱっと海が開けます。遠くには灯台が見え、ぼーっと寛ぐのにも最適。童話の世界のような気持ちのいいところでした。やっぱりここには妖精がいて、夜中にこっそり風船作りのお手伝いをしているかもしれません。

森の木々の緑が綺麗でした。

森の木々の緑が綺麗でした。

海です。遠くに灯台もあります。

海です。遠くに灯台もあります。(犬吠埼灯台)


銚子では海水浴場で遊んだり、イチゴ狩りの農園や、見学できる醤油工場などもあります。魚介も美味しいので、ぜひ遊びに行ってみて下さい。風船工場は想像していた通りの本当に素敵なところでした。

伊藤ゴム風船工業所
http://www.myfavorite.bz/itouballoon/pc/index.html
千葉県銚子市君ヶ浜8741
TEL:0479-23-2457
子供達が楽しめる風船作りの体験ワークショップなどもあります。
(訪ねる場合は事前に連絡を)

問合せ先:マルサ斉藤ゴム
http://www.maru-sa.co.jp
東京都墨田区京島1-22-2
TEL:03-3613-4156




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