PIIGSとは
PIIGSとは、ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインという財政状況が悪い5カ国の頭文字をつなげ、豚(PIG)にかけた造語です。まさに屈辱的な名前で呼ばれている5カ国ですが、これらの国々の財政悪化問題が世界を震撼させる可能性が危ぶまれています。実際のところ、ギリシャの株価指数は2010年4月25日時点で年初来で20%近くも下落しています。ところで、どうしてPIIGSの財政状況が悪化したのかというと、いろいろ原因はありますが、最大の要因は経済環境の強い国と弱い国を統合したユーロの弊害とも言えます。むろんユーロに参加したことによるメリットも多数あります。たとえばユーロ参加国同士であれば為替両替の必要なく貿易ができますので貿易や投資に大きなプラス効果が見込まれます。しかしながら、このメリットを享受できる反面、経済状況が悪い国の場合強い通貨を強いられて、結果として輸出などで苦しい状況に追い込まれているというデメリットも存在するわけです。
ギリシャの場合、このような点で厳しい財政赤字に追い込まれているわけですが、これは慢性的、構造的な問題であるため、G7やIMF、ユーロ諸国が何らかの手だてを打ってくるかもしれませんが、短期的な特効薬というのは存在しない類の問題のように感じます。もしもマジックのような特効薬があるのであれば、財政赤字に悩む日本はとっくに不況を抜け出せているはずです。長年に渡る自助努力や国を挙げての規律の維持といった切磋琢磨の連続以外、処方箋などないのです。
PIGGSの財政悪化問題は深刻
PIGGS問題はよくドバイの問題と比較されることが多いですが、ドバイが主要建築プロジェクトで僅か1、2兆円ほどが払えないという一時的な金欠問題であるのに対し、PIGGS問題は国家規模の赤字問題で、一時的に処置をしても根本を治療できない限り、ゾンビのように永遠と赤字が再生されるという根本的な問題です。実際のところ、ドバイの問題は石油が豊富なアブダビの救済で一発解決してしまいました。しかし、今度はドイツがギリシャを丸ごと助ける、あるいは次のスペインやポルトガル、イタリアが過去10年以上に渡って犯し続けた財政ミスを一手に背負うことなどできるはずがないのです。したがって、何度も「救済で合意」というサインばかりがでるものの、決定的な具体案は出ないでいるのです(むろん、その場しのぎの案は出ていますが)。これは丁度07年夏から何度も出ては小手先の解決でごまかされたサブプライムローンの過程に似た問題かもしれません。今回の欧州危機も根本解決を見送り、小手先だけの救済案が続くと、ギリシャのあとに連鎖的な危機が続く可能性もあります。目先の支払いはEUで何とかなっても、その次は大丈夫か?さらにスペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドも駄目なのではないか?と繋がっていくのが最悪コースです。まだ最悪コースを辿る可能性は低いかもしれません。しかし、そうなったときのダメージは大きいですし、根本解決は難しいですから、たとえ救済発表策が出て短期的に上がったとしても、長期的問題として注視して行く必要があるでしょう。