どうしよう、緑の野菜を食べてくれない!

緑の野菜を食べてもらえない、本当の理由とは……

緑の野菜を食べてもらえない、本当の理由とは……

大学院を修了後、栄養士になろうと志したその日から20年来、夢見てきた病院の管理栄養士として入職したその日。私は院長から「今日から毎日ミールラウンドをし、患者様の食事の様子をよく観察するように」と指示を受けました。その日から、別の病院を移った今も、時間を見つけては病棟で患者様が食事をする姿を、時に食事の介助をしながら拝見し続けています。あれから、もう、何人の患者様のお食事を拝見したか、簡単には数えられない人数になっています。お食事の風景と言うのは十人十色です。本当に毎日が驚きの連続です。

そんななか、私が最も心を痛めていることが1つあります。それが「緑の野菜(緑黄色野菜)を食べてもらえない」ということです。嗜好調査等で緑の野菜について聞くと、「嫌いだ」と言う声はほとんど聞かれません。それなのに、食べてもらえないのです。

緑の野菜を食べてほしい。それにはこんな理由が……。

緑の野菜を食べてもらえない理由の前に、どうしてこんなに緑の野菜にこだわったのか、その理由を先にお話しましょう。

私は大学院生時代、肥満を専門としていましたが、同じ研究室ではビタミンB群のひとつである「葉酸」の研究をしていた人もいました。「葉酸」は読んで字のごとく「葉」に多く含まれているビタミンです。葉酸は赤ちゃんの神経管閉鎖障害という奇形を防ぐビタミンとして有名ですが、一方で認知症を予防したり、心不全や 脳卒中、冠動脈疾患(CHD)などの心血管疾患による死亡リスクを下げる等の働きがあることが知られています。また先輩の研究から、葉酸は認知症を予防するだけでなく、進行を予防する可能性があることも知っていました。だから、なんとかして緑の野菜を食べてほしい。そう考えた私は、その日から原因の探求を始めました。

だって、こんな黒いの食べられないわ!

ある日の昼食で、介護士が1人の患者様の食事のお手伝いをしていたときのこと、患者様が大きな声で言いました。

「こんな黒いの、食べられないわ!」

何事かと思い飛んでいくと、介護師さんいわく「ほうれん草が黒く見えるらしくて食べてくれないんです」とのこと。他の患者様にも伺ってみたところ、同じようなお話を伺うことができました。

原因がやっと分かりました。濃い緑色は黒に見えてしまい、食べ物として認識してもらえていなかったのです。それにしても、どうしてお年寄りは濃い緑が黒く見えてしまうのでしょうか?

お年寄りの「目」を知ろう

歳をとると目が見えにくくなるとは言いますが、お年寄りの「視覚」は大きく3つの変化が起こることで見えにくくなります。

1つめは、焦点が合いにくくなること、これは目の筋肉が老化して起こる現象です。

2つめは、視野が狭くなって、見える範囲が狭くなってしまうことです。特に上下に狭くなるようで、頭上や足元が見えづらいという指摘もあります。ひどい場合には、食事のトレーに乗せた皿の半分が見えておらず「ない」ものとして認識されてしまうこともあります(見えている位置の皿のみに箸を伸ばすのですぐに分かります。その場合は、時々、皿の位置を入れ替えるか、見える位置にすべての皿を移動させて食事をしていただいてください)。

そして最後の3つめが、見えるものすべてが黄色っぽく見えることです。老年性白内障の症状のひとつで、黄色のサングラスをかけたような色に見えるといいます。色の違いはK's Color Planningの図Cを見ていただくと、分かりやすいと思います(実際に黄色っぽいサングラスをかけてまわりを見回すのもよいと思います)。黄色のサングラスをかけていろんな色を見てみると、赤系の色は何色なのかが分かりやすいですが、白が黄色に見え、青や緑は黒に見えることが分かると思います。そのため、緑の野菜を野菜だと認識できず、食べてもらえなかったのです。

緑の野菜を食べてもらいましょう

実は、緑の野菜を食べてもらうのはさほど難しくありません。その皿に入ったものが「緑の野菜」であることさえ認識してもらえればよいのですから。「これ、ほうれん草ですよ」この声かけ1つでOKの場合も多いです。

ただし、声かけをしてもダメな場合もあります。満腹で食べられない場合や、チャレンジしてみたものの、硬くて食べられなかった場合です。硬かった場合、ほとんどの場合、皿のすみに野菜の筋が残されています。不思議なことに、筋は元の皿のすみにあることはほとんどありません。別の皿に残されています。すべての皿をよく確認したうえで声かけをしてください。もし、チャレンジしたけれど食べられなかった場合は、葉の部分だけを調理に用いると食べてもらえることも多くなります。

いつまでも、健康な脳で、会話を楽しめるよう、食卓に緑の野菜を上手に取り入れてください。



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