「賃金アップ」でも家計は潤わない!そのワケは…

藤川太さん

藤川太さん

これまで1万5000世帯以上の家計を診てきたファイナンシャル・プランナーの藤川太さんに、年収が上がらない時代にサバイバルする方法をインタビューします。(第1回目から続きます)第2回目は、消費増税・インフレと家計には厳しいアベノミクス経済の乗り切り方をおうかがいします。

――6月にアベノミクスの新たな成長戦略が打ち出されました。今の状況をどのように見ていますか?


好景気型の支出モードに入っているという

家計は好景気型の支出モードに入っているという

藤川太さん 成長戦略はすぐに効果が出るわけではありません。中・長期的なビジョンで見ていく必要があります。現在の日本経済は、金融緩和で強引に景気を刺激している状態。アベノミクスは、結果も出る代わりに副作用も出ます。結果としては、景気回復で失業率が下がり、賃金が上がる。不動産も下げ止まり、大都市圏を中心に地価が上昇に転じてきました。一方で、そういった好ましい結果だけじゃなく、物価が上がるという副作用もあります。今後、そのコントロールが効くかどうかが、家計にとって大きな影響を及ぼすことになります。
アベノミクスは、金融緩和というアクセルを踏みながらも、消費増税や社会保険料負担増、給付減などといったブレーキも沢山踏みまくっています。つまり、アクセルとブレーキと同時に踏みながら進んでいる。正直、まだどっちが勝つのか分かりませんね。

――今現在のバランスとしてはどうでしょうか。

藤川
 今は、アクセルのほうが勝っているでしょうね。特に、賃金は上昇の動きが出始めています。大企業の今夏のボーナスは、前年夏より8.8%の増加。自動車や電機大手なども軒並みベースアップを決めています。今はまだ、それが末端にまで波及しているとはいえない段階ですが、中小企業の統計にも結果が出てきていますから、ここ1~2年で徐々に効果があらわれてくるのではないでしょうか

――物価が上がっていることもあり、家計に厳しさを感じる声も多く聞かれます。

藤川 賃金がアップしたといっても、物価の上昇率よりも上回らないと、結局、生活は苦しくなってしまいます。消費増税に伴い、物価は3%以上の年率で上がっていますが、それ以上に賃金が上がっている会社はごくわずか。つまり、多くの人たちにとって、実質的には家計の負担が増しているということになります。実は今、家計にとって非常に注意しなくてはいけない局面に入っているんです。

――なぜでしょうか?

藤川
 景気が上向き、賃金が少しでも上がれば、人はどうしても気が大きくなってしまいます。これまで買うのをためらっていた家電を購入したり、“この際だから”と買い換えを検討したりする。ですが、実際は賃金上昇が物価高に追いついていないから、家計が潤っているわけではないのです。

事実、我々の元に家計相談に来る方々も、以前とは違って完全に好景気型の支出モードに入っているように見えます。資産運用も皆さん攻めている。どちらかといえば、我々FPがそれにブレーキをかけている状態ですね。予算オーバーのマイホームを無理して買ってしまうケースも少なくありません。これは、ここ数年では見られなかった傾向です。

ただ、最初に申し上げたように、今はアベノミクスでかなり無理をして景気を引き上げて好景気を演出している状態。果たして、この無理がどこまで続くのか。金融緩和にしたって永遠に続けるわけにもいきませんから、どこかで引き締めなくてはいけない場面がくる。そうなると、当然景気は減速します。徐々に減速していくならいいものの、やりすぎてバブル化してしまえば、その後の崩壊は当然厳しいものになることは想像に難くないわけです。

日経平均株価は2万円にいってもおかしくない?

日経平均株価2万円もありうる

日経平均株価2万円もありうる

――今後の動きをどう見ますか?

藤川
 なかなか読みづらいところですが、日経平均株価は2万円を超えても驚きませんね。逆に言うと、これだけの景気刺激策を投じているのだから、それくらいまで上がらないとアベノミクスは失敗ということになる。もちろん、このままぐんぐん上がるということではなく、何度か調整する場面はあるかもしれません。ただ、今回は成功するまでやり続けるパターンなのだと思います。あと1~2年くらいは、今の好景気が続くのではないでしょうか。

ただし、その後は分からない。過去さかのぼると、日本はこれまで5~7年ほどの間隔で大きな経済ショックが起きています。最近では2008年のリーマンショック、さらに2001~2年のエンロンショック、97年のアジア通貨危機、90年にはバブル崩壊がありました。今回はさすがに長期に渡って不景気が続きましたから、間隔は以前より長いものになるでしょうが、ここから2020年の東京オリンピックまで右肩上がりで成長を続けると考えるのは楽観的すぎると思います。

――資産運用をしている人は、注意深く見ていくべきですね。

藤川 そうですね。今は、日本だけでなく、アメリカやユーロも大規模な金融緩和を行っています。こんな状況は、歴史的に見てもあまりない。この結果がどうなるかは、誰にもわからないのでは?グローバル化が進みすぎたあまり、どこかの経済が立ち行かなくなると、世界中の経済が連動してしまいます。これまでは、国際分散投資をしていれば安定的に長期投資ができてきましたが、もはやそういう時代じゃなくなっているのかなという感じがしていますね。ですから、あまり欲を出さず、適当なところでいったん利益を取っておくことも大切だと思います。

★次は今すぐにやるべき「家計スリム化」についておうかがいします!

教えてくれたのは…
藤川太さん
ファイナンシャル・プランナー。All About 資産運用ガイド。「家計の見直し相談センター」で10年以上にわたり1万5000世帯を超える家計の見直しを行ってきた。資産運用、家計管理、マイホーム購入、不動産投資などに精通。「普通の人」でもお金を貯める・増やせるようになる方法をアドバイスするFP。

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