さまざまなレベルの「介護食」

食事介助中の介護士

ひとくちに「介護食」と言っても、いろいろなレベルがあります。そのレベルに合ったお食事を提供することで、健康で楽しい食生活を送ることが可能になります。

介護食は、「食べる機能」が低下した人に提供するお食事のことです。主に、高齢者に提供されることが多い食事です。しかし、ひとくちに「介護食」と言っても、普通の人の食事とほとんど大差ないものから、ミキサーでつぶしたお食事まで、そのレベルは多岐にわたります。その食事の状態を的確に説明することは我々プロ同士ですら、困難な場合もあります。使用する用語がきちんと統一されておらず、現場同士での勘違いが往々として起こるのです。そのため、さまざまな団体が「介護食」の状態(食形態といいます)を数値化することを考えました。

現在、介護食の食形態を数値化したものは主に5種類が知られています。まずは、この5つの分類の特徴を見てみましょう。

厚生省時代に策定された2つの分類

1994年、当時の厚生省がえん下困難者用の分類を策定します。「そしゃく困難者用食品の許可基準」と「そしゃく・えん下困難者用食品の許可基準」です。

いずれも国が作った基準であるにも関わらず、さほど広く普及しませんでした。「そしゃく・えん下困難者用食品許可基準」はI~III(ローマ数字の1~3)に分類されています。

ユニバーサルデザインフード(日本介護食品協議会)

介護食は、普通の食事に近い形態であれば、家族のおかずを作る途中で1人分だけを取り分けて、小鍋でしっかり火を入れることで柔らかくする等で対応ができます。しかし、小さく刻む・ミキサーでつぶすなどとなってくると、1人分の食事を用意することはかなりの手間になってきます。

そこで、最近は、介護食を1からすべて自宅で作るというよりも、市販品を上手に組み合わせて利用するという方法が一般的です。そのため、日本介護食品協議会では独自の基準を制定し、その基準に見合うものに「ユニバーサルデザインフード(UDF)」として特別のマークを付記することにしました。UDF区分は「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4段階です。以前は区分数字が表示されていましたが表示切替によって数字が表記されなくなりました。(以前の数字表記では「容易にかめる」が区分1、「歯ぐきでつぶせる」が区分2、「舌でつぶせる」が区分3、「かまなくてよい」が区分4でした。)

各食品メーカーはこぞってUDFマークを取ろうと躍起になっていますし、スーパーなどでも介護食の棚を見ると、このマークがはいっている商品が最も多いように感じます。

詳しくは「ユニバーサルデザインフード(日本介護食品協議会)」をご覧ください。

嚥下食ピラミッド

2004年に金谷節子先生によって学会発表された分類方法です。1980年代から聖隷三方原病院で実際に使われていた介護食の分類方法で、介護食をL0~L6の6段階に分類して示しました。この分類は、家庭で食事を用意するために、分かりやすく説明されていたこともあり、瞬く間に広く病院や介護施設で用いられることになります。

詳しくは「嚥下食ドットコム」をご覧ください。

日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013

「介護食」の分類が混沌としていて分かりにくいとして、やっと本家である日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が動き出し、正式な分類ができあがったのが2013年のことでした。この分類は「リハビリテーション」を中心に考えられているため、嚥下困難者のリハビリテーションを行いやすいよう、嚥下訓練の初期のステップが他の分類に比べて細かく設定されています。コード0j、1j、0t、2-1、2-2、3、4の7段階に分けられています。

詳しくは「一般社団法人摂食嚥下リハビリテーション学会」をご覧ください。

スマイルケア食

2014年11月に農林水産省は「スマイルケア食」という介護食の分類を発表しました。農林水産省の考えでは、嚥下困難な方だけでなく、健康な人も含めて高齢者の食についての指標がほしいといった意図だったようですが、咀嚼・嚥下に問題がなければ若い人と食事の形態は同じで問題ありません。もちろん、高齢者と若い人では食べられる量や料理の好みが違うので、そこは調節しなければなりませんが。

正直、すでに4つの分類があるなかで、後発感がぬぐえない「スマイルケア食」ですが、1点、過去の指標になかったものがあります。それは「チャート図」を使って確認することで、どの分類の食事を摂ればよいかが一般の人でも判断しやすくなっていることです。行き当たった分類をみれば市販品を購入する際に、適当なものを選べるようになっています。チャート図のところどころに「専門職に相談」とありますが、「相談」に行き当たらなくても気軽に相談していただければと思います。

農林水産省 スマイルケア食(新しい介護食品)」をご覧下さい。

5つの介護食の分類の活用法

以上の5つの分類の使い方としては、加工食品のレベルは「ユニバーサルデザインフード」で確認し、家庭で作るときは、「嚥下食ピラミッド」か「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」の分類を用い、食形態を確認することになると思います。

実際の医療機関では、摂食・嚥下の専門医がいる病院では「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」を用いているようですが、まだしっかり浸透しているわけではないので、一般内科等ではまだ「嚥下食ピラミッ」ドが健在のように感じます。

5つの分類のいずれも、目標としていることは、分かり辛い介護食のレベルを数値化しようというものです。しかしここでも、それぞれのレベルの呼称や捉え方が違うことから、分かりづらい面もあります(本当はどれか1つに統一してほしいところですが……)。

そこで、5つの介護食の分類を下記の一覧表にしてみました。
介護食5分類

介護食の5つの分類を一覧表にしてみました。「学会分類2013」を元にして改変してあります

この一覧表を見れば、どの分類のどのレベルが他の分類のどれと同じレベルになるかがある程度理解できるはずです。今回は病院や介護施設からの説明で多く使われていくであろうと思われる「学会分類2013」による一覧表を基礎として改変しました。

この5つの分類は基本的に、プロが使うことを前提にして作られています。そのため、「形状」の説明等、非常に難しい専門用語が並んでいます。しかし、どこの病院や介護施設の栄養士も患者様やそのご家族様から説明を求められた際には、必ずこれらの5つの分類のうち1つを使って説明していると思います。病院や介護施設等から退院・退所する際に、ご家族の状態とどのレベルの食事を摂ればよいかを聞いて、この一覧表と見比べ、それに見合った食事を選んでください。

最近では、町のスーパーや薬局等でも、介護食のコーナーが充実しています。特に、要領がつかめていない最初のうちは指示されたレベルのレトルト食品をいくつか試してみて、形状を体感してから自宅で作るようにすると失敗が少なくなります。

市販品は、「ユニバーサルデザインフード」の認証を受けている商品が多いため、市販品を購入する際には予め、この指標でレベル表示がされている商品が多いということを認識しておく必要があります。しかし時折、別の指標を使っている場合もありますので、どの指標のレベルが表示されているのか、自分の求めているかたさなのか、しっかり確認して購入するようにしましょう。

うちのおばあちゃんはどれを食べればいい? 使えるチェック法

どのレベルのものを提供すればよいかを知るためには、簡便な方法があります。
こちらでは、Yes/Noを答えていくと、結果にたどり着くようになっています。

また、 は10個の質問を0(問題なし)~4(ひどく問題)の5段階から選び、回答します。その合計点(40点満点)が、3点以上であれば、嚥下障害があるかも?と判断します(点数が高いほうが悪化しています)。3点以上の場合はもちろんのこと、0~2点の場合でも気になることがあれば、専門医への相談をおすすめしますとのことです。

最後に、高齢者の体調は、刻一刻と変化します。朝食ではお粥が食べられたのに、昼食ではペースト状にしても飲み込めないなどということも、往々にして起こります。そんなときは、焦らず「昼食の分は夕食に食べてくれるかな?」程度にのんびり構え、ゆったりした気持ちで介護をするのがおすすめです。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。