腰痛に苦しむ母親の快適生活を想定し、次々と飛び出す改善希望点
腰痛に苦しむ母親の身長を考慮し、高さを80センチメートルまで下げた新居のキッチン
<両親からの2回目の改善希望点>
- 母親の身長が低い(約140cm)ことから、キッチンの高さや照明スイッチの設置位置などに配慮してほしい。また、スイッチパネルも押しやすいよう大きいスイッチボタンにしてほしい。
- 母の足が不自由なため、居室の照明や来客確認(ドアホン)などを手元のリモコンで操作できるようにしてほしい。また、階段の幅や段差の高さ(勾配)にも高齢者にやさしい設計にしてほしい。
- 高齢者の家庭内事故は浴室が最も発生率が高く危険とされることから、ヒートショック対策として浴室暖房の設置を要望。また、浴槽での溺死対策として、お尻が滑って窒息しないよう浴槽の長さ(縦幅)が短いバスタブにしてほしい。
- カーテンやシャッターの開閉回数を減らす目的も含め、窓ガラスは透明ではなく、すべて曇りガラスにしてほしい。
- 将来的な車イス生活の可能性を想定し、自宅建物にスロープを追加してほしい。
自由設計ならではの醍醐味 注文住宅の魅力はディテール(細部)に宿る
こうして完成したのが下記の【図表2】です。最初の提案とはまったく異なる間取りになりました。センター廊下を採用し、南側に玄関と母親の部屋(ベッドルーム1)、北側にダイニングキッチンという独創的な間取りが完成しました。設計にあたり担当者は、照明やスイッチ類について「奥様(母親)が腕を高く上げるのがつらいというお話でしたので、一般的なスイッチの高さは床面から110~120センチメートルなのですが、今回は95センチメートルにしています。逆に、コンセントの高さは通常より高くし、床面から40センチメートルとして抜き差しがしやすいよう配慮しました」
また、「腰が悪い奥様のために、キッチンの高さは80センチメートルに下げました」「浴室はコンパクトサイズとなる1216タイプを採用し、床はすべりにくく、出入り口はほぼ段差のないスロープ付き仕様にしました」。さらに、「ハンズフリーのモニター付きインターホンで、来客の顔を確認しながら施解錠できるようになっています」等々、丁寧に1つ1つ要望を具現化してくれています。
間取りの作成に関し、各居室や水回りの配置(ゾーニング)はとても大切ですが、スイッチやキッチンの高さまでこだわれるのは自由設計ならではの醍醐味だと感じました。「注文住宅の魅力はディテール(細部)に宿る」―― まさに、その通りだと実感した次第です。
その他、最後に付言しておくと、住宅性能にもいくつものこだわりが詰まっています。
- 制震性能をもつ耐震壁を1階に4カ所配備し、耐震等級3(最上級)を確保
- 照明はLEDにより省エネ化を実現、断熱性能の高いサッシに複層ガラスを採用
- シックハウス対策にも配慮し、高等級の建材や壁紙を使用
- 2階の足音が1階に響きにくくなるよう、遮音石膏ボードと断絶材を採用して遮音性の高い床構造を実現
- さや管・給水ヘッダーを標準装備することで、給排水管のメンテナンス性(維持管理への配慮)を向上
- 床下の基礎外周部の立ち上がりに断熱材を隙間なく施工する「基礎断熱工法」を採用し、温度や湿度の変化による影響を受けにくい床下環境を実現
いずれも築35年の家にはない性能ばかりです。住宅技術の進歩には感心させられます。こうして理想の間取りが出来上がりました。
次回(第5回)は、誰もが気になる建設コスト(見積り)を全公開します。お楽しみに!