インスタレーション=空間に作品をインストール
1950~60年代「前衛」と呼ばれたアート作品は、「絵画=キャンバスに筆で絵具を塗る」「彫刻=鉄や木を削る/彫る」というルールに反抗して、つくられていきました。同時に「キャンバス」という決まった幅や素材のものからはみ出るような表現をしたい、とか、彫刻は台座に載ったものだけではなくて展示する場所全体が台座ではないか、といったように、アーティストたちは作品と空間の関係を考えるようになっていきました。こうした動きの中で「インスタレーション」は生まれました。パソコン用語で「ソフトをハードディスクに入れる」ことを「インストール」と呼びます。美術用語の「インスタレーション」も同じで、「作品(ソフト)をハードディスク(展示空間)に入れる」ことを指します。今回は群馬県立館林美術館にある、弧を描くような形をしたガラス貼りの展示室に、これまで展示した3つのインスタレーション作品を例に挙げます。
インスタレーションは空間を味わうもの
美術館の学芸員は、展覧会を企画することを仕事にしています。今回お話を伺う松下さんに、まずは「インスタレーションとは何か」について、作品を見せる立場からどうとらえているかを聞いてみました。
「インスタレーションという手法による作品の有りようは、作家や作品によって異なるでしょう。展示空間へのアプローチを積極的に行う、つまり展示する空間の特性からスタートして考えて、一から作品を作る場合もあれば、全体の作品イメージが先にあり、展示する空間との掛け合いによって、その場、その場で異なる展示となる場合もあるでしょう」。
わあ、展示室全体にガラスの雨が降っているような、光が差し込んでキラキラして、夢の中にいる感じがします。キレイだけではなくて、まぶしい光と柱の影、ガラスの反射、見えないはずの空気、私を取り囲む空間、何もかもに対して反応してしまいます。
「ひとつの展示室に、ふたりのアーティストが一緒に作品を発表しました。天井からは、辻和美の涙の形をしたガラスが吊るしてあります。床には、鵜飼美紀の水をはったガラスの器が散りばめられています。この空間は、両者の作品が交差しています。そして個々のパーツが、展示室の内と外の風景、そこに入り込んだ自分の姿を映し出し、無限に広がります。身体と心の中とを見通すような感覚をもたらしました」。
体感という言葉は、こういうアート作品を味わうときにつかうのですね!