ひたすら貯め込む日本人、生き金を使う華僑
幸せなお金持ちになる方法をお金の女神が伝授!
――華僑と日本人では、お金に対する考え方はどう違うのでしょうか?
マダム・ホー 端的に申し上げると、「お金を“貯める”のが日本人」、「お金を“使う”のが華僑」だということです。ただし、「使う」といっても何も考えずに消費を重ねるわけではありません。華僑は、無駄なものに散財することを「死に金」といって非常に嫌いますから、その使い方も徹底していますね。たとえば、家族旅行で飛行機に乗るときには、たいていエコノミークラスです。お金を生み出さないものに、無駄なお金を払うことはまずしません。
働き方の価値観も随分違いますね。“サラリーマンになって安定収入を得る”という思考は、華僑にはありません。彼らはハングリー精神が旺盛ですから、できるだけ早くビジネスオーナーになって富をつくることを目指します。そのためには、多少のリスクをとってでも成長する可能性に賭けますね。
――リスクに対する向き合い方は、だいぶ違いますね。日本人はリスクをとることは嫌います。
マダム・ホー 以前お話した通り(インタビュー第2回目を参照)、日本人は、“自分だけは絶対損はしたくない”という志向が強く、小さなリスクも嫌がりますね。そして、リスクを避けるための対策は、“じっとして何もしないこと”。実際は、何もしないほうが、リスクが高い場合も多いのですが…。対して、国を頼れない華僑の人たちは、カントリーリスクを抱えながら生きていますから、リスク管理も徹底しています。
子供には高い教育を受けさせ、海外の大学に留学させることがほとんどです。子供が何人かいれば、別々の国に行かせて、その国の永住権をとらせる。そうすれば、何かあったときにいつでも家族を呼び寄せられますからね。
「寄付したお金の使い道を知る」までが“生き金”
マダム・ホー また、華僑の人たちは、“お金を生み出すもの”に賢く投資する使う一方で、ノブレス・オブリージュ、つまり、「富を得たら“持てるものの義務”として社会貢献にお金を使う」という考え方も持っています。その一番手っ取り早い方法が、寄付や財団を作るというものです。――なぜそういう考え方が浸透しているのでしょう?
マダム・ホー 華僑は、自分たちの国である中国を捨てて、よその国で生きている人たちですから、ひとりが悪いことをすると華僑社会全体に迷惑がかかることをよく知っています。それに、少数派であるよその国の人たちが富を得て経済を牛耳ったら、当然地元民からのやっかみも生まれますよね? かつてはそれで殺されてしまった華僑もいます。ですから、寄付をしたり、孤児院を立てたり、財団を作って社会貢献をして、それを上手にアピールするんですね。
例えば、知り合いの華僑の方にアメリカンドリームで財を成した方がいます。彼の一人娘は、優秀な弁護士なのですが、娘に会社を継がせると従業員たちの反発を招く。そこで彼は、財団を作り、娘をそのトップに置いたんです。これはノブレス・オブリージュを上手に使ったケースといえますね。
ちなみに、私達夫婦も昨年、お金がなくて名門大学に行けない子供たちや孤児のために、母校の南カリフォルニア大学で奨学金を作りました。
――日本でも、震災などをきっかけに社会貢献が身近になりつつありますが、自分のお金がどんな風に使われているかに関心を向ける人は、まだ多いとはいえないのが実情でしょうね。
マダム・ホー 自分が出したお金の使い道を知りたいというのは、本来当たり前のことですよね。アメリカには、ゲッティセンターという素晴らしい美術館があります。これは石油ビジネスで財を成したポールゲッティさんが遺したものですが、彼は、お金の使い道がうやむやにならないよう、財産をすべて美術品の購入のみに当てて欲しいと遺言を残したんです。人件費や運営費は、自分たちで賄いなさいというわけです。使い道が明確なほうが健全ですよね。
――寄付に限らず、大事なお金がどう使われているかに向き合ってみる。そういうことを重ねることも、お金の年齢を上げることに繋がるのかもしれませんね。
マダム・ホー そう思いますよ。日本人は、すべての要素を兼ね備えた素晴らしい民族なのですから、お金ときちんと向き合うことで、お金年齢も必ず上がっていくはずです。日本は今、自信を失って元気をなくしているように見えます。日本人はどうしても、他人の評価を気にしてしまいがちですが、人生の責任は自分が負うのだから、他人にどうこう言われる筋合いはないはずです。ビジョンと夢と哲学を持って、ハングリー精神で進んで欲しいと思います。
★インタビューは次回に続きます
マダム・ホーさんプロフィール
インターナショナルスクールを経て、16歳で単身アメリカ留学。名門南カリフォルニア大学(USC)とUCLAの両大学院修了。父の介護で失業したのがきっかけでビジネスの世界に入り、コーラも買えない貧乏時代から29歳で最初の1億を作る。著述活動を通じて日本人のお金のIQを上げ、日本人ミリオネアを輩出することに生きがいを感じている。2008年にだした「世界一愚かなお金持ち、日本人」は8万部のベストセラー。その後7か国で出版。現在は母校USCの顧問をつとめ、昨年は才能ある若者を支援するために奨学金を作った。「お金の女神」としてメディアでも人気を集める。毎日2回、ツイッターで幸せなお金持ちになるハピネスメッセージを配信中。www.twitter.com/madamho 公式サイトmadamho.com
取材・文/西尾英子