100年後の都市の姿がどうなっているのかは分からないが、未来の想像図に一戸建て住宅が描かれていることは少ない
国土交通省が4月15日に発表したデータによれば、制度開始から3月末まで10か月間の累計認定戸数は一戸建て住宅が56,178戸に達しています。その詳細な内訳は明らかにされていませんが、分譲住宅の割合もだいぶ多いものと推定されます。
それに対して「共同住宅等」は925戸。これには賃貸マンション、アパート、長屋建て(連続建て)のテラスハウスやタウンハウス、構造上区分された二世帯住宅など、要するに一戸建て住宅以外のものがすべて含まれているようです。実際に都道府県別の「共同住宅等」認定戸数をみると、1戸、2戸、3戸といった数字が多く並んでおり、これらは決して分譲マンションではありません。
それでは長期優良住宅の認定を受けた分譲マンションがどれくらいあるのかを調べてみると、制度開始初月に認定を受けた長谷工コーポレーションの「ブランシエラ浦和」(69戸)と「ブランシエラ吹田片山公園」(114戸)の後、しばらく認定がゼロの状態が続いていました。
12月に少し動きがあり、静岡県の「エンブルマーレ焼津」(43戸)、福岡県の「ブライト・サンリヤン別府シールズ」(41戸)が認定を受けているようです。福岡県では12月に「共同住宅等」として165戸の認定があったものの、別府以外の住宅については残念ながら分かっていません。
そして先月(3月)に三井不動産レジデンシャルの「六本木一丁目南地区第一種市街地再開発事業」(麻布ハウスの建替えを含む再開発事業)による208戸と、川崎市住宅供給公社の「川崎駅西口大宮町F街区」の110戸が長期優良住宅の認定を受け、ようやく分譲マンションへの導入がゆっくりと動き始めたところ。六本木の再開発事業は、分譲マンションとして東京都内初、かつ超高層マンション初となるようです。
長期優良住宅の認定を受けた分譲マンションは今のところ全国で6棟。ほとんどの消費者にとっては、長期優良住宅のマンションを買いたくても「物件自体が存在しない」という状態が続いています。少なくとも現時点では、長期優良住宅を選ぼうとすれば必然的に一戸建て住宅とならざるを得ないケースが大半でしょう。
以前から導入されている性能レベルのままで認定を受けられる場合も多い一戸建て住宅に比べ、分譲マンションではコストの問題や市場低迷の問題などもあり、「しばらくは各社とも様子見で、導入はなかなか進まないだろう」という指摘が制度開始前からされていましたが、その事前予想よりもかなり少ない水準にとどまっているというのが実態かもしれません。
分譲マンションでの導入を促進するために認定基準のハードルを下げるべきだ、という意見も一部にあるようですが、(本来は変えるべきではないものの)もし基準を変えるのであればいまのうちでしかありません。基準変更が後になればなるほど、ハードルの高い長期優良マンションとハードルの低い長期優良マンションとの混在が進み、将来に大きな混乱を招くことにもなるでしょう。
100年後、200年後を見据えた住宅づくりを進めるための制度なのですから、100年後にもしっかりと通用するような揺るぎない基準でなければなりません。もっとも、これから100年も経てば現在の建築レベルが陳腐化している可能性もないわけではありませんけどね。