イギリスでの実験が教えてくれる大切なこと
その研究で分かったことは、次の通り。教師が、大切な試験前に、子供達に向かって、
- 「このテストに受からなければ、いい仕事にもつけないし、いい大学にも進めないぞ!」と声をかけると、子供達のやる気は下がり、点数も悪化する傾向があった。
- 逆に、「このテストはとても重要なものだ。いい大学に行って、いい仕事につくためにも、この試験に受かることはとても大切だ」と声をかけると、子供のモチベーションは上がり、ポジティブな結果へ結びつく傾向が強かった
「このテストに合格しなければ、いい仕事にもいい大学にも行けない」というメッセージは、最悪のシナリオを子供に提示している形になります。最悪のシナリオを見せられて、いい気はしませんね。それどころか、不安感、恐怖感を引き起こし、逆効果になってしまうのです! やる気を上げようとして、ハッパをかけたつもりなのに、逆にやる気を削いでしまうのはもったいないですよね。
成功したときのメリットを伝えよう
親や教師の立場で「子供に成功してもらいたい」「絶対にパスしてほしい」と思うと、つい語調を強めてしまいがちです。「そんなことでは○○できるようにならないよ」
「○○しなくちゃ、だめだよ」
と言ってしまったこと、きっと誰でもあると思います。
大人は、子供達に頑張ってもらいたい一心で言っているので、もちろん悪気はありません。でも、そのような言い回しは、子供達にとっては「警告的」なメッセージとなって届いてしまうのですね。
子供をやる気にさせる声かけのポイントは「メリットを提示してあげること」にあります。「努力により、何を得ることができるか」というメリットを伝えてあげることでモチベーションが上がりやすくなるのです。
前ページの例をここでもう一度用いると、
「ひらがなを10個教えてあげるから、ちゃんと覚えてね。これを覚えないと、いつまでも本が読めるようにならないよ」だと悪いシナリオを伝えてしまっているので、NG。
「ひらがなを10個教えてあげるから、ちゃんと覚えてね。これを覚えると、本が読めるようになって楽しいよ」だと、メリットを提示してあげているので、やる気がアップしやすい
ということになります。
「できなかったことで失うもの」を伝えるのではなく、
「できたときに得るもの」について伝える
のがポイントです。
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*出典: School Psychology Quarterly (2014)「The Scare Tactic: Do Fear Appeals Predict Motivation and Exam Scores?」より