「馬場」は「ばんば」、「あだち」は「足立」
「暮部さんは能勢町に多い」「松浪さんは泉佐野に多い」「綾部市の人口の6%は四方さん」といった「珍しい名字」と出自が書かれています。自分自身が確かにそうだった!と腑に落ちた例を3つ挙げましたが、他にも各県毎に多数あります。が、いいな!と思ったのは「珍しい」名字ではなく「普通の名字」。名字自体は珍しくなくても読み方/書き方が複数ある名字についての蘊蓄が、ちょっといい感じでした。
例えば「馬場」。普通は「ばば」としか読みません(少なくとも全国的にはそれが一般的でしょう)。ところが京都府、滋賀県では「ばんば」と読む方が多数います。滋賀県にいたっては51%が「ばんば」。「ばんば」さんがいらしたら「京都か滋賀のご出身ですか?」と話しかけてみましょう。
また「あだち」さん、身の回りにもいらっしゃると思いますが「足立」「安立」「安達」「足達」、どれを書けばいいか音だけではわかりません。この4つの中にある「足立」。全国では100位にも入っていない(県によっては1000位にも入らない!)のですが、兵庫県では30位、丹波市では圧倒的な1位だそうです。う~ん、知らなかった!
よくある名字でも、名家の方かも!?
普通の名字から出自がわかるのは興味深いですが、「普通の名字の人が、実は名家の人」というのもありそうです。本書には「公家一覧」が用意されています。「西園寺」、「近衛」などの社会科の教科書で見た事あるような名字や、「花山院」、「冷泉」、「綾小路」といった、いかにもな名字が並ぶ中、「中山」、「石山」、「岡崎」等のごく一般的な名字もあります。身の回りの中山さん、もしかしたらお公家様出身かもしれません。
別に「二府四県別 名家・旧家」の一覧も用意されています。そこには、江戸時代以降の武士、豪商、豪農であった家が紹介されているのですが、こちらもよくある名字が並びます。例えば「田中」。私の名字「田中」では石清水八幡宮の宮司を務める田中家、長浜で庄屋を務めた田中家等が同じ名字で「名家」とよばれる家系でした。
初めて会う人の名字を見て会話のキッカケをつかみたい。友達で実家が金持ちそうなのをみつけたい。そんな方は、是非本書を手にとってみて下さい。