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今話題の『テスラモーターズ』とは?(2ページ目)

電気自動車業界に携わる人であれば、テスラ・モーターズ社の名前を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。2014年2月末に時価総額300億ドルを突破し、テスラ社に世界中の著名人が期待を寄せています。今回は、そのテスラ社とその魅力についてお話させていただきたく思います。

中島 徳至

執筆者:中島 徳至

電気自動車ガイド

テスラ社の特徴

テスラ社の取締役会長は、paypalの共同設立者であるイーロン・マスク氏であり、ハイエンド戦略と呼ばれる高級・少数・趣味性のスポーツカーを、所得の高い人々を顧客セグメントとして絞り込み差別化を図ってきました。

スピード感のある開発に加え、マスコミを巻き込みながらニュースリリースのみの宣伝を繰り返すことで、市場からの期待感を高めてきたのです。テスラ社は、既存顧客のニーズに合わせるのではなく、プロダクトアウトによって顧客のニーズを創り出しました。妥協なしの最上級の商品を提供し続けるフラッグシップからの普及を狙う戦略をとることを思いつきました。製品が十分に顧客に受け入れられるようになった時、次第に安価な車両を量産し市場投入をしていく見通しなのでしょう。

シリコンバレーでは、このような戦略はよく知られており、例を挙げると携帯電話、ノートパソコン、薄型テレビなどは販売当初の価格は高く設定され、商品サイクルが回るにつれて次第に価格を下げていきます。どの種でも新しい技術は、顧客に受け入れられる大きな市場に成長するまで、いくつかのフェーズを潜り抜ける必要があります。

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(図)レスポンスより テスラ社 パナソニックによるバッテリー

また、テスラ社の特徴として、バッテリーが挙げられます。販売されている通常のリチオムイオン電池(直径18ミリ,長さ65ミリ)6831個(縦99 個×横 69行)を自動車用の電池パックとして社内開発しました。小さな電池を大量に使用し、1セルあたりのエネルギー量を小さくすることで、1つ1つのセルに欠陥が出たとしてもBMS制御機能により最小限に被害を抑えることができるのです。そこに、テスラ社が唯一自社技術として持つ、バッテリーを冷却水によって制御する技術が加わることで凡庸品のバッテリーを利用することが可能になったのです。

通常自動車メーカーはエンジン、サスペンション、ボディー、シャシなどのモジュールを細かくバランスよく連携・調整させることで乗り心地を向上させる「擦り合わせ型」の製造を行っています。通常このモデルでは、社内間のみで時間をかけて実行されます。

一方テスラ社は対照的に車体、バッテリー、タイヤなどの部品を全て外部調達し、それを組み立てて車両を完成させるメーカーです。つまり、部品をアウトソーシングし、バッテリーの開発にもコストをかけない廉価な凡庸品を利用することができるのです。その結果、様々なメーカーから各部品を素早く調達し、シンプルで自由な車両を製造することで、既存の概念を破壊する「組み合わせ型」のビジネスモデルを確立させてきました。

しかし、単に部品を調達し組み合わせるだけのメーカーは、世界中に数多く存在します、他のメーカーとテスラ社を分けたポイントとは、一体どのような部分なのでしょうか。

テスラ社の車両は非常に完成度が高く、細かな箇所まで配慮された設計、仕上がりとなっています。それらは決して容易なことはなく、まして新興自動車メーカーならばなおさらです。それを可能にしたのは、テスラ社に確固たる設計思想が存在したからであると私は考えています。

電気自動車は単に部品の組み合わせを行うだけでは、走りはしても完成度の低い車両と化してしまいます。そこで各サプライヤーに明確な設計思想を伝達し、要求仕様を提示することで始めて、完成度の高い車両を組み立て仕上げることが可能となります。それらを可能にする人材を登用し、量産のためのバリューチェーンまでを構築したことが、テスラ社の強さの原泉となっています。

またテスラ社はエンドユーザーのケアもしっかりしています。ドライバーが安心して運転できるよう車両の現在位置やバッテリー状況をモニタリングし、リアルタイムにトラブルや問題対応しているのです。バッテリーはパナソニックが1000億円超の出資し、2017年までにEV用バッテリー巨大工場(ギガファクトリー)を設立する計画にあり、開発においては大手自動車メーカーであるトヨタやダイムラーなど信頼性の高い企業と資本提携することで自社成長を狙っているのでしょう。

このようにテスラが現在話題となっている理由は、ただ単にアメリカのシリコンバレー発のEVベンチャーだからではなく、これまでに誰もが思いつかなかった考えを周りの企業や政府を巻き込みながら、実現可能な段階にまで成長させてきた実績とこれからの動向に多くの人が期待を寄せているからではないでしょうか。既存の概念に囚われず、革新的な戦略や手法で、どうこれからのEV業界を盛り上げていくのだろうかと私もまた、テスラ社の動向に注目していきたいと思います。

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