歴史的移籍に長嶋茂雄巨人終身名誉監督も喜ぶ
WBCでも活躍した、キューバのフレデリク・セぺダ外野手が巨人へ移籍。今後、巨人のような取り組みを行うチームが増えるのは間違いないだろう。
セぺダは1980年4月8日、キューバ生まれ、178センチ、93キロで、右投げ両打ちの強打者だ。11歳で世界少年野球(千葉)に参加し、王貞治氏から打撃指導を受けた。2002年からキューバ代表入りし、アテネ五輪では金メダル、北京五輪では銀メダルを獲得。2006年第1回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝で藤田(ロッテ)から本塁打。2009年の第2回大会では松坂(現メッツ)、藤川(現カブス)から安打を放つなど、大会通算12安打、3本塁打、打率.500でベストナイン外野手に輝いた。2013年の第3回大会は4番DHで出場。WBC通算20試合で打率.449、6本塁打、23打点をマークした。
第3回大会で日本代表の戦略コーチを務めた巨人の橋上打撃コーチは「軸がぶれないキューバ選手の中でも、セぺダはとくにぶれず、変化球の対応も十分にできる。また、左右の打席ともクセがなく、無駄のないスイングをする。中距離タイプに属するが、日本の球場なら本塁打も出ると思う」と活躍に太鼓判を押す。
歴史的な出来事といえるだろう。これまで他国でのプレーは認められず、亡命という手段しかなかったキューバ。それが2012年ロンドン五輪から野球競技が除外され、WBCでも世界一を逃し続け、野球へのモチベーションが下がり、競技レベルの低下へつながってしまった。そこでフィデル・カストロ前国家評議会議長の息子で、同国野球連盟副会長を務めるアントニオ・カストロ氏が開放政策路線を推進し、昨年9月、政府管轄のもと、期限を設けるなどの制約をつける形でスポーツ選手の移籍を容認した。
かつてリナレスが中日でプレーしたが、あれはあくまでも特例で、セぺダがこの新制度を利用した初めてのケースとなる。
この出来事に一番喜んだのは、長嶋茂雄巨人終身名誉監督だ。「野球大国のキューバとは、私が監督になってからずっと、選手獲得や人的交流の可能性をさまざまなルートで探ってきました。20年来の希望がようやく実現できて、本当に喜ばしいことです。さらに両国の友好関係が深まることを願っています」とコメントした。
今後、巨人のような取り組みを行うチームが増えるのは間違いない。また、ボクシング、陸上、バレーボールなどの競技でも世界的レベルのキューバ選手が世界に羽ばたく可能性は高い。その先駆けとなるセぺダは「日本球界でプレーするのが夢だった。その夢が現実になり、期待感でいっぱいだ。巨人軍は日本トップの球団であり、プレーすることに誇りを感じる。キューバ国民の声援を胸に、巨人軍のセ・リーグ制覇、日本一奪還のために全力を尽くしたい」と力強く語った。ビザ取得後、5月中旬にも来日するセぺダのプレーに注目したい。