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重き扉、開く。「時効」撤廃の見通し

日本の刑法ではこれまで25年と定められていた死刑になる殺人や強盗殺人などの犯罪に関する時効が、撤廃されようとしています。

執筆者:All About 編集部

時効廃止の改正案、すでに国会に提出

民主党は時効撤廃法案を、すでに国会に提出している

民主党は時効撤廃法案を、すでに国会に提出している

時効を撤廃するための刑法と刑事訴訟法の改正案は、すでに今国会に提出されています。4月14日には参議院の本会議で可決されたので、この後衆議院に送付され可決されれば成立となります。

この改正案では、最も重い死刑になる可能性のある殺人や強盗殺人などは、これまで25年だった時効が撤廃され、時効がなくなります。それ以外にも、これまで時効が15年だった犯罪が30年に、10年だった犯罪が20年に、5年だった犯罪が10年に、それぞれ時効が延長されます。

時効見直しのきっかけになった足利事件

時効が見直し・撤廃されるきっかけとなったのは、時効のために未解決に終わってしまった事件があるためです。その中でも「足利事件」は、時効撤廃の大きな原動力となりました。

足利事件は、栃木県足利市で1990年5月13日に、前日から行方不明になっていた4歳の女児が、死体で発見された事件でした。その約半年後に容疑者が逮捕され、女児の下着についていた体液のDNAが容疑者のDNAと一致したため、10年間にも及ぶ裁判の末、2000年に最高裁で無期懲役が確定しました。

しかし、その後マスコミなどが、DNA鑑定にも極めて低い確率で間違いが起こる可能性を指摘し、再鑑定の必要性を述べてきました。そして2009年、ついに再鑑定で「DNAは一致しない」という結果が出ています。

その結果に基づいて、2009年から再審が開始され、2010年3月には無罪判決が出ました。実に、事件から20年後のことです。

しかし、当時の殺人事件の時効は15年であったため、足利事件は2005年に時効となっており、もう真犯人を捕まえても裁くことができません。こういった事件があったために、時効制度を撤廃する動きが高まってきたわけです。

普通の生活では関わりはないが……

時効制度は、普通に暮らしている人にはほとんど関係ありません。軽犯罪ならともかく、重犯罪者として裁かれたり、被害者として裁きを待つ立場になることはほとんどないからです。しかし、長い人生の中で関わる可能性が0とは断言できません。この機会によく知っておくのがいいかもしれません。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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