30年以上「変わらない」希少な一台 ヤマハSR400
車の業界を見てもバイクの業界を見ても30年という歳月は長いもの。その間に新しい技術が次々と開発されデザインも大きく変化し続けます。メーカーが新しい技術を車両に活かし、デザインを変更し続けるのは、当然メーカーの自己満足ではなくマーケティング的な事情。つまりはユーザーが求めている物を作り続けているからです。そのため、昔のバイクと今のバイクを見てみると、見た目も大きく変わりました。しかし、30年前と現在を比べてもほとんどデザインが変わらないまま、販売されている車両があります。ヤマハのSR400です。
現在までにレーシングレプリカブーム、ネイキッドブーム、ビッグスクーターブーム、原付2種ブームなど様々な流行がありメーカーからは様々なバイクが販売されましたが、流行が変わると、多くのバイクがカタログから消えていきます。
しかしSR400は、1978年の発売開始以来、一度は2008年に国が新しく制定した環境基準に適合できず販売を終了したものの、翌年には基準をクリアして販売を再開しました。名車と呼ばれるバイクは数あれど、30年以上ほとんど変わらない形で販売され続けているのはSR400だけと言っても過言ではないでしょう。
実は10年以上前に友人が所有していたSR400に乗ったことがあるのですが、今回はヤマハから最新年式の車両をお借りしました。一週間通勤で使用して試乗レポートをお届けします。
変わらないけれど、少しユーザーに優しくなった
ヤマハから広報車両が届けられた当日。久しぶりに私の前に現れたSR400をまじまじと見てみるとやはり見た目は10年以上前に友人に借りて試乗した時とほとんど変わっていません。細身のタンク・鉄製のメッキフェンダー・最近の400ccのバイクにしては細身のタイヤ。角型のテールランプ。丸目一灯のヘッドライト。リアのグラブレールなど……。ほとんどデザインは変わっていません。
SR400は新しい環境基準をクリアするために、燃料の噴射をアナログのキャブレターからコンピューター制御のフューエルインジェクションに変更しマフラー内部には排気ガスを綺麗にするための触媒を装着しました。
しかし、エンジンスタートは相変わらずキックスタートのみです。セルスターターはついておらず、キーをまわしてセルモータースイッチを押せばエンジンが掛かる仕組みではありません。ではどうやってエンジンをかけるのかというと、
- キーをオンに回す
- ステップの上に立ちキックレバーを出す
- シリンダーヘッド右上のキックインジケーターを見ながらハンドル左のデコンプレバーを握ってキックレバーをゆっくりと押し下げ、ピストンの位置を合わせます。インジケーターに銀色っぽいマークが出たらデコンプレバーを離す
- キックレバーを一気に踏み込む
この工程の中で特に4番は大事で、しっかりと踏み込まないとエンジンはかかりません。
友人の車両を借りた際に始めてキックスタートを体験した私は、思ったようにエンジンをかけることができず、しまいには思い切り踏み込んだ際にキックレバーが跳ね返ってきてスネを強打し悶絶するという一幕もありました。
しかし、現在のSR400は対策がなされているのでキックレバーが跳ね返ってくることはありません。また、キック自体も踏み込む際にほとんど力がいらなくなりました。当時と比べて格段にエンジンはかけやすくなったのです。
SR400のエンジンは相変わらずマイルド 軽快な足回りは健在
搭載されているエンジンは30年以上前と変わらず400cc単気筒エンジンです。アナログな燃料制御がされていた頃と、コンピューター制御になった今と比べてもエンジンの出力特性はほとんど変わりません。しいていえば走り出しが更にマイルドになったかな?というぐらいです。
最新のバイクと比べるとこのエンジンは決して早くはありません。性能のみを追求したエンジンではないのです。100km/h以上の巡航も可能ですが、気持ち良く走れるのは80km/h前後で、それ以上になると、振動が大きくなります。
そのため、高速道路を走る際は追い越し車線を元気良く走るというよりは、左側車線をのんびりと走るほうが合っています。
SR400の最大の魅力の一つは軽快に走ることができる足回りです。50km/h~60km/hぐらいで3速から4速を使ってコーナーを曲がっていくとマシンとの一体感を味わうことができます。
最近はパワーのあるバイクに乗ることが多かったのでマシンパワーを使い切ることができず、コーナー進入時にスピードを出しすぎてしまったり、逆にスピードを落としすぎてしまうことがありました。
しかし、この車両はパワーを使いきって最適なスピードでコーナーに突入していくことができます。マシンがコーナーへの侵入スピードを教えてくれるような感覚です。
少しスピードを出しすぎてしまったかな? という時はほんの少しリアブレーキをかけてきっかけを作り、体を内側に入れることで素直に車体が倒れて曲がることができます。
SR400は更に女性にお勧めしたくなるバイクとなった
車重が軽く、エンジンも決して出力重視のユニットではありませんし、足つきも悪くありません。見た目もごついスーパースポーツやネイキッドバイクに比べて、レトロなデザインのSR400は女性にお勧めの車両でした。
ただ一点キックスタートというエンジンの始動型式が女性にお勧めするには障害となっていました。ですが現行のSR400はキックレバーの跳ね返りがなくなり振り下ろす際も軽くなったため、エンジンがとてもかけやすくなりました。
会社のスタッフに試乗させた際に、なるほどピッタリだなというこの車両を体現するコメントがありました。
「なんだかまったりと優しい気持ちになるバイクですね」
バイクというと、どちらかというとアウトローなイメージがあり、決して柔らかいイメージの乗り物ではありませんが、レトロなデザインとマイルドなエンジン、軽い車体が上記のようなコメントを引き出したのかもしれません。
SR400をちょっとカスタムするなら
長距離をまったりと走るのにも最適なSR400。大きなウインドスクリーンはSR400のスタイルには似合いませんが、小ぶりのスクリーンを一つ装着すると快適性が格段にアップします。
2万キロ、3万キロ走ればサスペンションが徐々にへたってきます。純正を買い換えるよりも安く購入できるデイトナのサスペンションは乗り心地を調整する機能がついているので自分の理想にセッティング可能です。
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