「見事な投球だった」と原監督も絶賛
オープン戦ではパッとしなかったセドン投手だが、研究熱心さと適応能力の高さで素晴らしい結果を残した。
圧巻の奪三振ショーだった。四回無死二塁から、キラ、エルドレッド、梵の広島自慢のクリーンアップを3者連続空振り三振。続く五回にも広瀬、堂林を三振に斬って取って5者連続三振だ。あれよ、あれよと三振の山を築き、気が付けば15個まで伸ばした。巨人では通算400勝の金田正一や桑田真澄が記録したリーグ1試合最多の16奪三振には及ばなかったが、15奪三振は外国人投手のプロ野球最多タイ、初登板の毎回奪三振はプロ野球80年の歴史で初の快挙である。
「(15奪三振は)たぶん自己最高記録だと思う。(捕手の)サネマツさんと息が合って、最高の配球だった。自分の思い通りの投球ができた。素晴らしい気分だよ」
ストレートの最速は130キロ台。それでも1メートル93の長身から投げ下ろすために角度がある。そこに、同じ腕の振りで打者の手元で鋭く変化するスライダー、チェンジアップ、カーブを織り交ぜ、相手打線を翻弄した。また、四回から八回までの打者18人中、16人から初球ストライクを奪ったことからもわかる通り、強気の攻めを見せた。メジャー通算38試合で2勝3敗、防御率5.47だったセドンだが、この日のような投球ができていれば、メジャーでも生き残っていたに違いない。
昨年、韓国SKで14勝を挙げ、最多勝に輝いた。そこでアメリカ時代にはない細かい制球力を付けたことと、初球にストライクを取るというメジャー流の積極性を思い出したことが、日本(巨人)でのいきなりの快投に結び付いた。
オープン戦では3試合に登板し、防御率8.00。ボークや盗塁に苦しみ、セットポジションからのクイック投法が大きな課題となった。そのため、試合やブルペンでのフォームをビデオで撮影し、繰り返し見て、改善に努めた。その研究熱心さと適応能力は、先発陣の柱になり得る可能性を秘める。
「本番に強いといいますか、素晴らしいデビューだった。メリハリの効いた、ウチにはいないタイプの良いリズムを持っている。見事な投球だった」と原監督も絶賛したゼドンのデビュー戦。日本でその才能を開花させた外国人投手は多い。この左腕がその1人になれば、球団80周年のメモリアルイヤーである巨人に日本一奪回が近づいてくる。