ハズレ馬券は経費になるの?

ハズレ馬券は経費になるの?

北海道の公務員男性が「ハズレ馬券」を経費として認めるよう、東京地方裁判所に提訴した。

男性は2005年~2010年の6年間で、合計(のべ金額で)約72億7千万円の馬券を買い、合計約78億4千万円の払い戻しを受けた。差し引き約5億7千万円だ。

競馬ファンの夢をまさに実現したとも言えるが、不幸なことに、それが国税局に知られることとなった。
「払戻金と賭け金との差額が利益」と主張する男性に対し、国税当局は「的中馬券以外のハズレ馬券は経費と認められない」と主張。実際の利益を上回る金額を課税したのだ。

この問題には3つのポイントがある。


なぜ国税当局に知られたか?

1つめはなぜ男性の競馬収支が国税当局に知られたかという点。日本中央競馬会(JRA)に取材したところ、捜査令状の提出なしに競馬会が利用者の収支を公開することはない、安心して競馬を楽しんでほしいとのこと。現時点では男性の収支がなぜ国税局に知られたのかわからない。


どちらの主張が正しいか?

2つめのポイントはどちらの主張が正しいかという点。
両者の主張を簡略化してみよう。

【男性側の主張】
1日目:10万円購入 →ハズレ 合計収支▲10万
2日目:10万円購入 →ハズレ 合計収支▲20万
3日目:10万円購入 →ハズレ 合計収支▲30万
4日目:10万円購入 →的中 50万円の払い戻し 
合計収支: 10万円の利益。

【国税局側の主張】
1日目:10万円購入 →ハズレ (経費と認めず)
2日目:10万円購入 →ハズレ (経費と認めず)
3日目:10万円購入 →ハズレ (経費と認めず)
4日目:10万円購入 →的中 50万円の払い戻し 
合計収支: 40万円の利益。

算数として見れば男性のほうが正しいように見えるが、ではなぜ国税当局はこのように計算するのか。それは所得税法に理由がある。競馬の利益は、所得税法で「偶発的な所得」(一時所得)とされ、株や先物取引などの営利を目的とした継続的な行為による所得(雑所得)とは見なされず、年間トータルの収支で計算できないことになっている。


まるで石器時代の法律のまま!

法律ならば仕方がないと諦める人もいるかもしれないが、そう決められたのは何と40年も前なのだ! 携帯電話もパソコンも、もちろんインターネットもない時代で、馬券は競馬場や場外馬券売場で「紙の馬券」として買うしかなかった。6割がインターネットで馬券を買い、収支も全て明らかにできる現代とはまるで状況が違う。こうした情報技術に関しては、まさに石器時代を彷彿させる。そんな時代の法律のまま現在も課税されているのだ。

このことは安倍政権が推進するカジノ計画の最大の落とし穴となりかねない。それが3つめのポイント。


カジノ解禁と逆行する現行法

安倍政権が日本でのカジノ解禁を目指しているが、カジノの収支はトータルで計算されるのが世界のルールだ。

特に何千万、何億と賭ける大口のお客さんは、現金をいちいち持ち歩いたりせず、カジノ(またはホテル)にチャージするか、または資産状況に合わせて貸し付けられる。客はそれらのお金をテーブルで引き出し(帳簿上の引き出し)を行い、ゲームに賭ける。収支はトータルで計算され、滞在を終えて帰国する際に最終的な収支が確定する。

これは日本の競馬ファンが行っているインターネット投票の考えと実質的には同じである。

いずれ日本に誕生するカジノで、負けたゲームの賭け金が経費として認められず、勝ったゲームの利益にだけ税金が課されるとしたら、そんな不当なカジノには海外から誰も遊びに来ない。カジノ解禁を目指すなら、こうした法的不備は真っ先に見直すべきだ。

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