高齢世帯の実質消費伸び率が高い
家計収支を改善することが貯蓄の近道ですが、やはり他の家計はどんな状況か気になるところですね。パート1『支出は増?2013年の「家計収支調査」を読み解く』では、平成25年家計調査報告(平均速報結果)より、総世帯の家計収支の概況を述べました。パート2では世帯属性別の家計収支や2人以上の世帯の最近の家計消費の特徴なども見てみることにしましょう。2人以上の世帯の消費支出を世帯主の年齢階級別にみると、30歳未満の世帯は1世帯当たり1ヵ月平均24万1623円、30~39歳の世帯は26万9656円、40~49歳の世帯は31万8624円、50~59歳の世帯は34万7820円、60~69歳の世帯は29万1847円、70歳以上の世帯は24万1273円となっています。
対2012年の実質増減率をみると、60~69歳の世帯で実質2.7%の増加、50~59歳の世帯で1.4%増加、70歳以上の世帯で0.7%増加、40~49歳の世帯で0.5%増加となっていますが、30~39歳では2012年と同水準、30歳未満では実質0.8%の減少となっています。
アベノミクス効果により消費に明るさなどと報道されていますが、若年層ほどその効果の恩恵にあずかっていないように思えます。ただ、2014年度の春闘では、若年層の方が賃上げの影響が大きいようですから今年の調査は変わるかもしれません。ただ、若年層ほど堅実な面があることから、賃上げが行われても貯蓄に回すのかもしれませんが……。
また、消費支出に占める食料に割合、いわゆるエンゲル係数は30歳未満の世帯は20.2%、30~39歳の世帯は22.4%、40~49歳の世帯は23.2%、50~59歳の世帯は21.6%、60~69歳の世帯は24.4%、70歳以上の世帯は26.0%となっています。
エンゲル係数の伸び率は若年層ほど高くなっていることから、消費支出と異なった結果となっています。これは、2011年から2012年にかけて大幅に減少した反動と考えられることから、やはり若年層にはアベノミクス効果は薄いのかもしれません。
住宅ローン返済世帯は集計開始以来最高
2人以上世帯のうち勤労者世帯の可処分所得を世帯主の年齢階級別にみる、30歳未満の世帯は34万4777円、30~39歳の世帯は39万6225円、40~49歳の世帯は45万8544円、50~59歳の世帯は47万7361円、60歳以上の世帯は33万7961円となっています。対2012年実質増加率でみると、60歳以上の世帯で実質2.3%減少、30~39歳及び50~59歳の世帯で実質1.1%の減少となった半面、30歳未満の世帯では実質5.2%増加、40~49歳の世帯で実質1.4%の増加となっています。60歳以上の減少率が高いのは、2012年4月から希望すれば誰もが65歳まで働けるようになったことにより、1人当たりの給与を減少したのかもしれません。
また2人以上の世帯のうち勤労者世帯に占める住宅ローン返済世帯(土地家屋借金返済のある世帯)の割合は、持ち家率の上昇もあり、2012年よりも2.2%上昇して39.6%と、集計を開始した1979年以来最高となりました。
住宅ローンの返済額は1世帯当たり1カ月平均9万9867円となり、2012年と比較して名目で5.9%の増加となりました。可処分所得に対する返済割合は20.6%なので高いとは言えませんが、背伸びをした住宅ローンを組むと、貯蓄にしわ寄せがいくケースが多いですから、これからマイホームの購入を考えている世帯は注意されてください。
値上げには敏感に反応する
最後に、2人以上世帯の家計消費の特徴について見てみることにしましょう。値上げがあった魚介の缶詰、食用油、ティッシュぺーパーは、値上げ前に駆け込み需要があり、値上げ後は消費が低迷したものです。いずれも生活必需品であることから、一時的に売り上げは低迷したものの年末には駆け込み需要を上回る売り上げになっています。
年末に売り上げが伸びたのは消費税の引き上げに対する備えかもしれませんが、特徴的なのは魚介の缶詰のうち、さば缶にダイエット効果があるとテレビ番組等で報じられたことから、その翌月の魚介の缶詰の消費が急激に伸びているのが印象的です。
アベノミクス効果という面では、牛肉の平均購入量が2013年1~3月期以降、4期連続増加となっています。平均購入単価(名目)では、2012年10~12月期から5期連続となっており、2012年と比較して高額な牛肉を食べていることがうかがえます。
外食も2013年1~3月期から4期連続の実質増加。変わったところでは、電気掃除機も2013年1~3月期から4期連続増加しています。中でもロボット掃除機の売れ行きが好調のようです。
また、婦人服は2012年10~12月期から5期連続、婦人服は2013年1~3月期から4期連続伸びています。紳士服のデータがないのが残念ですが、紳士服は後回しにされる傾向が強いですから、紳士服が好調であればアベノミクス効果はかなり浸透といえるかもしれません。