コンタクトレンズのリスク・コンタクトによる眼障害は?

目の不調

便利なコンタクトレンズですが、誤った使用方法では目を傷める可能性も……

眼科医の中には、コンタクトの危なさを強調されている方も一部見られます。こういう啓蒙活動も大切なことだと思いますが、自分としては、使い捨てコンタクトが普及して以来、コンタクトによる障害はものすごく減ったという印象を持っています。

昔の使い捨てではなかった時代のソフトコンタクトレンズ(以下、ソフト)は、毎日きれいにしているつもりでも非常に汚れがつきやすいものでした。

というのも、ソフトは水を吸収する仕組みになっています。すなわち中にいろんなものが入るスペースがあるわけです。そのスペースに栄養分たっぷりの涙が溜まるので、細菌培養の寒天培地のような状態になりやすく、悪い菌も増えたい放題だったわけです。なので1日1回とか滅菌していても、やり方が少しいい加減だととんでもない汚物に変身してしまう……というリスクがありました。

自分も大学時代、コンタクトを入れると眼がちくちくするという症状が出て、購入先に持っていったところ、なんとレンズにカビが生えていて、裏側の一部が豪快に盛り上がっており、コンタクト眼科の先生にめちゃくちゃ怒られた経験があります(自分は大人になって心を入れ替えて、今は普通の人以上にきれい好きになりましたが、昔はとてもいい加減でしたからね……)。

「こんなの今まで見たことない!」と先生が声を荒げて言っていました。「先生すんません、実は自分は医学生なんですわ」とはとても言える雰囲気ではありませんでした。

当然こういう不潔なレンズを装着し続けるのは危険です。目の不調を治療してもどんどん悪化して、ついには角膜に穴があいて角膜移植が必要になる「角膜潰瘍」のような合併症もあったわけです。

これに対して、現在普及している使い捨てタイプなら、めちゃくちゃに汚くなる前に捨てることになるので、コンタクトレンズの使用によるひどい合併症が少なくなったのでしょう。とても良いことだと思います。

前記事でも述べたとおり、自分が今現在、眼科診療で感じるコンタクト使用による一番多い問題は慢性充血です。

よく眼科で指摘される「角膜のキズ」とは

「角膜にキズができていると言われました」とよく患者さんから聞きます。コンタクトで無理をしたからキズができた、と捉えられているようで、それは非常にイメージとしてわかりやすいのですが、実際はほとんどの場合で物理的についたキズではありません。眼科で言う「角膜のキズ」というのは、正確には「表層点状角膜炎(superficial punctate keratitis、SPK)」というもので、角膜の表面の細胞である角膜上皮細胞が、コンタクトの無理がたたって酸素不足に陥り、死んだ角膜上皮細胞がぷちぷちと脱落してしまった状態です。

眼科医が見ると、脱落したところが点々と見えます。これがひどくなると、点々がつながってざらざら状になり、もっとひどいとどっさりと脱落して脱落部が面状に見えるというわけです。

ではなぜ先生はそこまで細かい説明をせずに「角膜のキズ」で済ませてしまうかというと、これは正直説明がしんどいから……ということになります。朝から晩まで多くの患者さんを診て、毎日毎日同じような症状の人が来ると、ここまで詳しく説明するのはなかなか大変なことなのです。ですので、対処法として正しいアドバイスをする上では支障ないので、「キズができているからコンタクトはお休みしてね」という説明で終わるのです。この説明でも肝心の要点はしっかりついていますし、長々と説明することで患者さんを逆に混乱させてしまう可能性も減りますからね。

先生も人なので、治療方針が大きく間違っていない限り、このあたりの割愛はすべてを許してほしいところです。

コンタクト傷害の一番の怖さ…角膜内皮細胞の減少

コンタクトで表向き問題になるのは、慢性充血や、ドライアイ、上記で解説した「角膜のキズ」と呼ばれる角膜上皮炎などですが、自分たち眼科医は、実はそのあたりはそう深刻ではなく、割にあっさりと考えていたりします。悩んでいる人はごめんなさいね。

では眼科医として一番気にするのは何か? それは、コンタクトによる角膜内皮細胞の減少です。

角膜は透明ですが、体の中でこんなにも透明な組織は他にありません。なぜこんなきれいな透明を維持できるかといえば、角膜の裏側に「角膜内皮細胞(かくまくないひさいぼう、以下、プロ用語で「内皮」)」という六角形の細胞がたくさんあり、この細胞がめちゃくちゃに頑張って透明にしてくれているからなのです。

内皮は、1mm四方あたりにどれぐらいあるかで密度を判定します。密度が高ければ高いほど数が多く、角膜が健康というわけです。内皮は生まれてから増えることがなく、年齢とともに減少していきます。また、強いストレスにさらされると大きく減少します。内皮は白内障手術でストレスを受けると減ることがあるため、白内障の術前にも必ず必要十分あるかチェックします。

ということで、眼科医は、内皮は白内障術前に測って見ることがほとんどです。

白内障手術を受ける年齢、すなわち60歳以上の人で、通常2000~2500ぐらいです。2000を切るとやや少ないなぁ、と考えます。1500ぐらいだと微妙に焦り、1000を切っていると、おぉっこれは少ない、患者さんにがっつり話しておこう、となります。700ぐらいになってしまいますと、残念ながら白内障手術を行うのは無理です。

通常500ぐらいで角膜の透明性が維持できなくなります。白内障手術でも少し内皮が減るため、術前が700ぐらいだと手術で500かそれ以下に減ってしまい、術後には角膜が真っ白になってしまうのです。

白内障手術はさておき、コンタクトも装着すること自体が角膜へのストレスになりますので、理論的には内皮が減ります。

と脅しましたが、実は最近のコンタクトは本当に減らないですね。昔の、酸素透過率の低いハードはよく減ったようで、そういうのをよく使っていた自分は内皮が2000少しぐらいしかありません。将来白内障手術を受けられるように、これ以上減らないように気を付けないと……。(とはいえ今はレーシック済みなので、何を気を付けたらええねんという話ではありますが)。

前に言いました通り、最近のコンタクトは通常使用ではほぼ問題ないと思いますが、コンタクトによる傷害が発生すると、内皮が減る元になります。小さい傷害でも繰り返すことによって、知らない間に内皮が大きく減っていることがあります。コンタクト傷害の本当の怖さはここなのです。

ちなみに自分には、コンタクトのしすぎで32歳の時に角膜内皮細胞が900しかないという友人がおりました。彼はバリバリの有能なサッカー選手で、肉体的にはどう低く見積もっても常人より10歳ぐらい若いのですが、角膜はコンタクトでしっかり歳をとっており、病院で先生に「90歳相当」と言われ、非常に落ち込んでいたものです……。900まで落ちていたということは、コンタクトの通常使用以外に細かい傷害がちょくちょく発生していたのではないかと思います。サッカーで目に砂が入って、それを擦ってキズがついてしまったとか、試合中に一旦外したレンズを洗う暇がなくて適当に舐めてまた入れてしまったとか……。

みなさんもコンタクトは無茶な使い方をせず、角膜内皮細胞にやさしい使用をしてもらえれば、と思います。

ノーブランドの安売りカラーコンタクトレンズによる眼障害

内皮の話をしたついでに、少し前から流行っているカラーコンタクトレンズ、いわゆるカラコンの話にも触れておきたいと思います。

実は自分はものすごく重症な例には出会ったことがないのですが、最近、コンタクトレンズによる障害で私の病院を受診された患者さんは、ほぼ全員が安売りカラーコンタクトレンズの使用者でした。

ですのでやはり格安のコンタクトレンズの中には眼に悪いものがあることは間違いなさそうで、重症例も私自身がたまたまみていないだけで起こるのだろうと思えます。何かしらの障害が起こると、一定の確率で重症化するものですし、そのような症例写真も見ることがありますから……。そうなると目も取り返しがつかないので、眼科医としては値段で選ぶのではなく、しっかりと信頼できるメーカーのカラーコンタクトレンズを使用されることをお勧めします。

少なくとも眼科医で、自分の家族が格安のカラコンを使っている例は皆無だと思います。なぜって、一時的に角膜がいたむくらいなら別によいとして、この傷害のせいで内皮が大幅に減ってしまったら角膜移植になるんですよ! そうなったら目のおしゃれどころではありません。

オルソケラトロジー…コンタクトによる近視矯正法のリスクは?

また、コンタクトに関連した情報として、「オルソケラトロジー」という近視矯正法があります。

簡単に解説すると、コンタクトを夜入れっぱなしにすることで、コンタクトで角膜を押さえて平たくし、屈折を変えることで近視を改善しよう、というものです。

私自身、最初この方法を聞いたときには、夜中にコンタクトを入れっぱなしにするというのは色々とリスクが山積みなのではないか、と心配に思いましたが、実際には意外なほどオルソケラトロジーで目に問題が起こったという患者さんは来られません。今まで一人しか診ていないです。それも軽度に角膜が荒れてしまったという人で、数日のお休みで治る程度のものでした。自分はこの分野には詳しくないのですが、素材が工夫されているのでしょうか?

いずれにしても、長期的な使用をする場合は、夜にコンタクトを入れっぱなしにするのですから、上記でも解説した角膜内皮細胞の減少には注意してもらえれば、と思います。眼科で簡単にチェックできますから、1年に1回とか、自主的にでも時々チェックしてもらうことをお勧めします。それさえ大丈夫なら問題は少ないのではないでしょうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項