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いまさら聞けない、北欧家具・デザイナーの基礎知識(3ページ目)

日本と北欧諸国、遠く離れていますが「森林が多い」、「人々が質素で勤勉」、「細やかな作業が得意」など、実は似ているところも多いのです。そこで、代表的な北欧のインテリアデザイナー、北欧家具とその特徴、そしてよく聞く北欧テイストって何? といった疑問や、それを取り巻く周辺の情報をダイジェスト的に紹介します。

喜入 時生

執筆者:喜入 時生

インテリア・建築デザインガイド


フィンランドのデザイン

北欧家具に関しては、ウェグナー、ヤコブセンといった2大巨匠を排出したデンマークが秀でていますが、フィンランドやスウェーデンにも優れたデザインの家具があります。まず、フィンランドでは、なんといっても世界的な建築家であるアルヴァ・アアルトの名を挙げることができるでしょう。

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オリジナル状態で日焼けした雰囲気がイイ味を出しているアアルトの椅子とダイニングテーブル。大胆にビス止めされた作りが機能を優先するモダニズムの建築家らしい表情です

どちらかというと家具デザインの印象が強いアアルトですが、モダニズムの建築家として1920年代から1976年に没するまで、数々の名建築を残した巨匠。1930年代にはCIAM(近代建築国際会議)の終身会員に選ばれ、ワルター・グロピウス、ル・コルビュジエらとも交流があり、パリ国際博覧会フィンランド館(1937年)、ニューヨーク国際博覧会フィンランド館(1939年)などの代表作があります。森林の多い北欧・フィンランドならではの木材を使った建築が多いのが特徴。第二次世界大戦後はアメリカの建築家からの招きで、1946年から1948年までマサチューセッツ工科大学客員教授を務め、MIT寄宿舎、ベーカーハウスの設計を行っています。アアルトは北欧を代表する建築家といってもよいでしょう。

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アアルト建築の代表作のひとつ「パイミオのサナトリウム」(1933年竣工)。モダニストらしく余計な装飾がなく清潔で健康的なイメージの建物です

アアルトのデザインした家具は合板を多用したものが知られています。アアルトの家具は、現在でもアルテック社が製作・販売しています。アルテック社はアアルトの事務所の所員の紹介で知り合った建築作品の施主の夫妻と、アアルトの妻などと共に1935年に共同設立されました。アアルトは、なんとテキスタイルもデザインしており、その幾何学的な柄でカラフルな「SIENA」と呼ばれるパターンは、最近の北欧ブームの中で再び注目をあびています。また、アアルトと妻アイノがデザインしたガラス食器は、イッタラ社が製作しています。北欧デザインに詳しい人はご存知の方も多いと思います。

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アルテック社カタログより。上の有名なスツールは鮮やかなカラーリングのものも用意されています。中央右のカンチレバーチェアは「バイミオ」と呼ばれるバーチ材の合板のフレームと白い成形合板で作られたアアルトの家具の中で今でも特に人気が高い椅子。下のカラフルな北欧的なファブリックにも注目!

また、俗にアアルト・スツールと呼ばれる3本、もしくは4本足の丸い座面をもったスツールは、モダンなスツールの原型としてコピー品も含めて広く知られています。このスツールの曲げ木部分は、現代の成形合板ではなくフィンランドバーチの無垢材に切れ込みを入れてそこに薄い板をはさんで成形しています。これは、北極圏の先住民がソリを作るときに使う伝統的な方法。北ヨーロッパらしいアイデアが魅力的です。

スウェーデンの家具

今、日本ではスウェーデン家具といえばIKEAというイメージが強いですが、伝統的にモダンなスカンジナビアンデザインの家具を作ってきた国。そのなかで、まず、紹介したいのが、エリック・グンナール・アスプルンドです。アスプルンドは1885年ストックホルムに生まれ、20世紀初頭の北欧インテリアデザインを牽引したデザイナーです。中でも「ヨーテボリ,1」と呼ばれる椅子は、1937年にデザインされたもの。その未来的なフォルムからは、とても80年ほど前にデザインされたものとは思えません。この椅子は、北欧を代表するウェグナーのような木材感や手作り感がないためイタリアモダン家具と勘違いしている人も多いようです。イタリアの家具メーカーのカッシーナが販売しているせいもありますが……。スウェーデンが誇る椅子のひとつです。
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スウェーデンを代表する建築家アスプルンドが1937年にヨーテボリという街のタウンホールのためにデザインした椅子。材料はホワイトアッシュで背には革が張ってあります(クリックで拡大します)

次に、スウェーデンのデザイナーで、日本とかかわりの深い人物を紹介しましょう。ブルーノ・マットソンです。世界的に知られる北欧の家具デザイナーで人間工学の研究家としても高名なマットソンですが、なんと日本人向けの椅子を作っていたのです。メーカーは日本の誇る家具メーカー天童木工。親日家だったマットソンは、来日した際に日本の和室の畳に感心し、その畳を傷つけないようにソリ状の脚をつけて畳床を守るデザインにしました。この「ハイバックチェアMA-562」という安楽椅子は日本の部屋にもしっくりとなじむデザインとなっています。 
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スウェーデンデザインでありながら、山形県に本拠を持つ成形合板を得意とする天童木工の高い技術力によって製作された椅子。天童木工は柳宗理のバタフライスツールや磯崎新のモンローチェアを製造したことでも知られています


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