ザ・フィルハーモニクス

明るくスタイリッシュなメンバーたち (c)Claudia Prieler,Nurith Wagner-Strauss / DG

:演奏する曲も今の編成にピッタリのアレンジがなされていますよね。

:そうなんです。僕たちは既にある、売っている楽譜を見て演奏しているのではなく、自分たちで編曲して演奏しています。

:ほとんどの曲は私が編曲し、ピアノのフランティシェクもしますが、全員がアレンジできます。アレンジしたものを実際に弾いて「ここを変えたほうがいい」などアイデアを出し合い、ベストなものを最終ヴァージョンとしています。

:普通のクラシックの演奏会ですと、曲のアレンジを勝手に変えたりはできないですから、そこがまた面白いですね。

:確かにウィーン・フィルの演奏で「この2楽章はちょっとイマイチだから変えよう」とかはできないですね(笑)。

:指揮者が変われば同じ曲でも全く変わってくる、というのはありますが、確かに楽譜は変えられないですからね。私たちの試みだと即興的に変えることもできます。

:コンサートでお客さんの反応を見ると「これは良かった」「これはちょっとイマイチだった」というのがよく分かるんですよ。そうした反応を見て、またアレンジや次のプログラムを考えます。多くの方に幸せになってもらえるようなプログラムにします。

:コンサートのプログラムを作るにあたっては、まずテーマを考えます。「愛と情熱」「ドナウ川流域の音楽」「クライスラーとグラッペリ」とか。そうそう、第2ヴァイオリンのローマンはステファン・グラッペリ(ジャズ・ヴァイオリニスト)の曲を物凄く上手に弾くんですよ。そうしたテーマを作っておいて、演奏する全部の曲はギリギリまで考えて決定します。

2つのものが出会うとか、そういったテーマをいろいろと考えてやっています。それは今のところ、とても成功しています。ウィーンの著名なホールであるウィーン・コンチェルトハウスにある704人が入るモーツァルトホールで昼夜1日2公演の計6公演やった際も、チケットは2日間で売り切れたんですよ。今度は2000人弱の大ホールでやることになりました。お客さんは とても期待してくださっていると思っています。

:大人気ですね!

:ありがとうございます。私たちはクラシックを前提にしつつも、ルーツを探りたいと思っています。例えばブラームスの「ハンガリー舞曲」やドヴォルザークの「スラブ舞曲」、マーラーが使うユダヤのメロディーなど、クラシックの中にも民族音楽的なルーツを持っているものが多いんですよね。そのルーツを表現したいと思っています。そのアプローチはオーケストラでの演奏よりも、もっと自由にできていると思っています。

:民族的な演奏をするには、楽器の弾き方も変わるのでしょうか?

:弾き方は基本的にウィーン・フィルのサウンドを実現するため、同じです。なのですが、私の両親はジャズの演奏家で、コントラバス奏者はハンガリーの出身でハンガリーのフォルクローレを演奏する家系のルーツを持っています。ということで、私たちはクラシックに留まらず、いろいろなものを聴いて育ってきています。そういったバックグラウンドがあるので、クラシックに留まらず、そこから解き放った自由なものを生み出せます。ジャズをやる時などは、ヴィブラートの掛け方をちょっと工夫していたりします。要素をちょっとだけ変えます。

:大事なのはウィーン・フィルの音は必ず保ちたい、ということです。いろいろなものを付け加えますが、絶対にウィーン・フィルのサウンドがある。それが一番大事です。

オブリヴィオン

2枚目のアルバム「オブリヴィオン」。これは輸入盤

:例えば2013年に出した2枚目のアルバム『オブリヴィオン』の中のブラームス「ハンガリー舞曲第6番」を聴いていただくと、通常のクラシックなものと比べ、かなりフォルクローレ調の、情熱的なものになっていると感じてもらえると思います。ジャズ的になる部分はセカンド・ヴァイオリン奏者が弾いています。彼はジャズの演奏家なので、そこの音のカラーはジャズ的になっていますが、基本的にウィーン・フィルのサウンドです。
(注:『オブリヴィオン』の国内盤は2014年5月28日(水)に『ザ・フィルハーモニクス2 オブリヴィオン~美しきロスマリン』というタイトルで発売予定。1枚目の「ザ・フィルハーモニクス 魅惑のダンス~私のお気に入り」も同時発売で共に日本独自ジャケットの予定だそうです!)

「プレスト・ファイト・メドレー」は、クライスラーともう1つの世界のコンビネーション(笑)。クライスラー自身、当時から既にいろいろな音楽に対しとてもオープンで、フォルクローレやジャズやジプシー音楽などが彼の音楽の中にありますので、私たちの編曲をクライスラーが聴いたら、きっと喜んでくれると思います。そして、お客様にも喜んで聴いていただけると思っています。

:「序奏とアレグロ」のアレグロになる瞬間にびっくりしました(笑)。サン=サーンス『死の舞踏』では、原曲にないフレーズが入っていたり、アレンジをかなり遊んでいますよね。

:ハロウィンのイメージでやってみたんですよ(笑)。パーカッションを入れて、墓場で骸骨が踊っているみたいな。ただクラシックの原曲をアレンジする、というだけではなくて、ちょっとヒネリを加えました。

:最後の方に叫び声も入っていますよね(笑)。

:あれは最初から予定していたわけではないんです(笑)。映画だったらここで人が死んでしまう、というタイミングで、第2ヴァイオリン奏者がやってみたんです。それでその録音を友達や家族に聴かせたら、みんな「すごく良かった!」というので、採用(笑)。

:完璧な内容ですよね(笑)。子どもが気に入るのは間違いないですね。「K&Kラプソディー」という曲もCDに収められていますが、この「K&K」って何ですか?

:König(王)&Kaiser(皇帝)、つまり、昔の「王立・帝国の時代」という意味です。オーストリアはかつて大帝国で、私たちメンバーはオーストリア=ハンガリー二重帝国の文化圏なので。ヴィオラの彼だけがドイツ人なんですけれどね(笑)。

:僕だって、ウィーンものもハンガリーものも演奏できるよ(笑)。

:まぁ、そういうわけで(笑)、ウィーンらしいリヒャルト・シュトラウスの『バラの騎士』で始まり、ヴェルディの『運命の力』が出てきたり、ロシアの人気クレイ・アニメの『チェブラーシカ』の音楽などが次々と出てきます。サンクトペテルブルクでは、『チェブラーシカ』を演奏し始めた途端、演奏中なのに拍手が出て、とても喜ばれましたよ(笑)。静かなところではヤナーチェクやルーマニアの音楽、ハンガリーのチャールダッシュなど様々な音楽が次々と現れます。

:楽しい曲ですよね。ザ・フィルハーモニクスで使っている楽器はウィーン・フィルで使っているのと別の楽器なのですか?

:同じで、1724年のストラディヴァリウスを弾いていますよ(笑)。ハーゲン・クァルテットのルーカス・ハーゲンが16年間使っていた楽器です。

:壊さないように気をつけなよ(笑)。

:(笑)。彼が使っているヴィオラも、イタリアのすばらしい楽器ですよ。

:そうなんですね(笑)。確かにウィーン・フィル・サウンドなのですが、同じ楽器でこうも色を変えて演奏できるのは流石ですね。いやー、来日公演が楽しみですね。

:日本のお客さんにも特別な演目を用意するつもりですので、お楽しみに!

:日本の民謡とかも入れてみたいですね。それはそうと、私の子どもたちは日本のアニメが好きでパソコンでよく観ているのですが、彼らから「パパ、一緒に演奏して」とリクエストされている人がいます。ポップス歌手で、ウタダヒカルという方です。

:日本を代表するスーパースターですよ(笑)。

:そうなんですね(笑)。いつか一緒にやれたらいいなぁ(笑)。ともあれ、今回の来日公演でも、多くの皆様に幸せになっていただけるようにやります。楽しみにしていてください。

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ということで、何より彼ら自身が演奏することをとても楽しんでいることが伝わってきました。リラックスしつつ、妙技にも感嘆するような、楽しいコンサートになりそうですね。公演が今から待ち遠しい!


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