1食置き換えダイエットはメタボにも効果があるの?
薬局などでもよく見かける「1食置き換えダイエット」ですが、患者様などから本当に効果があるのかと質問を受けることが少なからずあります。結論を最初に言ってしまいましょう。実は「上手に使えばメタボにも有効です」。
これを聞いて、拍手喝采で喜んだあなた、ちょっとお待ち下さい。「上手に使えば」と前置きしたのにはとても深い意味があります。
その深い意味をこれからお話ししたいと思います。
1食置き換えダイエットとは?
1食置き換えダイエットは粉状のドリンク剤を250~500mlの白湯に溶かして食事の代わりとするダイエット法です。ドリンク剤を白湯に溶かしたときの見た目が嗜好飲料のシェイクに似ていることから、ダイエットシェイクと呼ぶ人もいるようです。製品によって若干異なりますが、ドリンク剤1本あたり150~200kcal程度です。1食置き換えダイエットは、3回の食事のうち2回は普通の食事をし、残りの1回をこのシェイク1本に「置き換える」ダイエット方法です。そのため一般には「1食置き換えダイエット」と呼ばれることが多いようです。現在、「1食置き換えダイエット」はたくさんの種類が市販されていますが、このうち数種類は、日本の肥満研究のパイオニアが集う「日本肥満学会」にて減量効果があると認められている製品があります。保険適応外ですので実費負担にはなりますが、病院で処方を受けることができる「1食置き換えダイエット」があるのです。しかし、医療現場では「1食置き換えダイエット」とは言わず、アメリカで人工ミルクを「Formula」と呼ぶことから「フォーミュラ食」と呼んでいます。医療用に用いる製品を「フォーミュラ食」について、医療現場での使い方の一例をお話しします。
フォーミュラ食を使ってみると……
私が大学院生時代から懇意にしていただいている日本肥満学会所属の医師がいます。この医師は肥満の中でも脂質異常症がご専門で、太っている人が少しでも体重を減らせば、脂質異常症も改善できることから、なんとかして太っている人をやせさせる方法はないかと試行錯誤されてきました。そんな時に医師が出会ったのが、フォーミュラ食でした。研究のために患者に試してもらってほしいと、業者から預かったフォーミュラ食をわらをもつかむ気持ちで、患者に飲んでもらったところ、あれよあれよと減量した人が続出。これはいい!と思ったといいます。しかし、このときのフォーミュラ食の研究は全体的には失敗でした。医師の監視下でフォーミュラ食を使ってもほとんどの患者はやせることができなかった、という最終結果だったのです。
やせることができた患者とやせられなかった患者。この差はどこから生まれたのでしょうか?
フォーミュラ食で患者がやせた!? フォーミュラ食の上手な使い方
全体的な結果では患者をやせさせることができなかったフォーミュラ食ですが、この医師は、減量が必要な患者のうち、自分を信頼してくれていると感じられる患者にだけ処方したと言います。そして医師を信頼し、指示を守った患者は1ヵ月後の診察で減量に成功したことを報告します。患者がフォーミュラ食を飲む以外に、今までやっていなかったウォーキングを始めた、ダイエット中だからと朝・昼の食事量が無意識に減っていたなどを同時平行で開始していた可能性は十分考えられますが、間違いなくこの1ヶ月間で患者は減量することが楽しくなっています。この状態になれば、この後も食事療法や運動療法などフォーミュラ食以外の方法で減量を続けていけるので、フォーミュラ食の役目はここで終了。フォーミュラ食の使用を中止します。これがこの医師の方法。医師は自分と信頼関係が形成できている患者のダイエットに対するモチベーションを上げるためだけに使ったのです。
市販品のフォーミュラ食でダイエットは可能?
先の医師はこんなことも言っていました。「もし、一般の人が「1食置き換えダイエット」を薬局等で買ってきてダイエットに成功するとしたら、高額商品を買ってしまったので、効果がないと悔しいから必死になるので、それが奏して成功したように見えるのではないか? 」実際、その通りかもしれません。フォーミュラ食はダイエットに対するモチベーションを高めるためのもの。薬局で「1食置き換えダイエット」を購入する人は、もともと、ダイエットに対するモチベーションが高い人でしょうから、それだけで成功するとは思えません。もし仮に、「1食置き換えダイエット」だけで減量に成功したとしても、高額ですし、自費で長期的に使うことは難しいと思います。当然のごとく、途中でダイエット方法の変更を迫られることになります。ダイエットはダイエットしていることを忘れている時でも、続いているくらい生活の中に溶け込んだ内容である必要があります。そのため、私の私見ではありますが、1食置き換えダイエットだけに頼る減量法はリバウンド必至のダイエット方法であるといわざるを得ないと考えています。
最後にお教えしましょう……気になるフォーミュラ食の原材料
せっかくの機会ですので、「フォーミュラ食」の原材料をお教えしましょう。主な原材料は「脱脂大豆」。大豆油を搾り取った後の残りです。「脱脂大豆」は菓子材料としてインターネット等では高値取引されていますが、もともとは「搾りかす」ですので、一般的には牛や豚などの家畜のえさとして利用されているそうです。脱脂大豆は非常ににおいがきついので、臭い消しのためにスキムミルクと香料を加えれば、フォーミュラ食のベースが出来上がりです。各社、これを飲みやすいようにさまざまなフレーバーを加えたり、不足しがちなビタミンやミネラル、ダイエットに有効な食物繊維などを追加することで差別化を図ろうとしているのです。このような「1食置き換えダイエット」ですが、それでもあなたは「上手に使えば」にかけてみますか?