実はたくさんある住まいに関する学びの場
さて、住宅関連のマスコミはよく「上質な空間」などという表現を使います。それは便利だからそう表現していることが多く、どんな工夫や配慮があるから上質な空間なのかを、実際に理解していないことがあります。私もその一人。ボキャブラリーのなさと、経験の少なさについて日々痛感しています。で先日、そんな私は非常に「上質」を知る大きなチャンスに恵まれました。2月7日に開業した「ザ・リッツ・カールトン京都」を見学する機会があったのです。もちろん宿泊などはできませんでしたが、スイートルームなどを含め、ホテルの施設を詳しくみることができました。
余談ですが、数は多くありませんが仕事の余録として、今回のような高級ラグジュアリーホテルや高級マンションなどを見学する機会があるのです。そこでの経験は、「上質とは何か」ということを理解することにつながるように思います。
この記事を読んでいらっしゃる方にも、国内外の高級ホテルに宿泊された経験をお持ちの方がいらっしゃると思います。まず体験することが、「細部にこだわる」ことの重要な要素になるのではないかと思います。
誤解のないように申し上げておきますが、ただ高級ホテルに宿泊すればいいというわけではありませんし、「宿泊しましょう」と言いたいわけでもありません。人それぞれ、好き好きは異なりますから、アプローチのひとつでいいのだと思います。
大切なのは「こんな住まい、空間に住みたい」とイメージしたことを、第三者にうまく伝えるための努力をするということです。ですから、住宅雑誌でもネットの住宅特集でも良いですから、気に入ったものを写真やデータとして残しておいて、ハウスメーカーの人たちなどとすりあわせができるようにしておくと良いでしょう。できれば、モデルハウスの見学などでもそういったことをしておくと、細部に関するイメージが伝えやすくなります。
良い住まいづくりのパートナーに出会うことも大切
例えば「バリ島のリゾートホテルの様な空間にしたい」というニーズがあるとしても、それが実際どのようなイメージなのか写真があるとわかりやすいじゃないですか。ハウスメーカーの人たちなどはそこから標準仕様の枠を超えて、できるだけの設計や提案をしてくれるはずです。ところで、「細部にこだわる」ためにもう一つ重要なことがあると思います。それは、良い住まいづくりのパートナーに出会うということです。細部というのは何も意匠性だけの話ではなく、間取りなどプランづくりにも当てはまることだからです。
例えば、二世帯住宅を建てるとしましょう。当然、親世帯はしばらくすると健康でなくなり、介護が必要になる可能性があります。そうした場合、あらかじめ介護がしやすい設計としておくと、後々、介護リフォームなど大きな改修工事をせずにすむことになります。それは細部への配慮があった結果です。
介護の話などは、家族同士や世帯間でもしにくいものですし、それは第三者であるハウスメーカーの人たちにはなおさらです。介護の話はあくまで例ですが、それぞれの家族がそれぞれに事情を抱えており、実はその事情も「細部」なのです。それをうまく解決してくれるスタッフに巡り会うことも、満足度の高い住まいづくりには必要なことだと思います。
言葉を換えると「親身になって相談に乗ってくれる人」「何でも相談できる人」に出会うことが大切なのです。色々な住宅を見てきましたが、施主の満足度の高い住まいの背後には、必ず施主に寄り添うような良質なスタッフやチームがいて、その人たちが施主の「細部」へのこだわりをかたちにしていました。