クルマは何度も買い換えられない
バブルの頃は確かにあったけれど、今どき買った時の金額より高く下取りしてもらえるクルマなんて、値落ちしにくいといわれるフェラーリでも難しい。よほど人気の限定車でもない限り、買値より手放す際の金額は下がる(だから私が「おいしい中古車」を紹介することができるわけだけれど)。つまり新しいクルマに乗り換えようとすればお金が必要になる。だから普通は何度もクルマを買い替えられない。たくさんのクルマに乗った経験がなければ「クルマなんてだいたい同じでしょ」とか、「高いクルマほど乗り心地がいいんじゃないの」程度しか思わないだろう。かくいう私も、クルマ雑誌の編集部に配属されるまではそう思っていた。ところがね、違うんですよ、クルマって。いわゆるクルマ好きが言う「プジョーの猫足」とか「メルセデスライド」とか、前輪駆動車と後輪駆動車の違いとか、自動車評論家ではない素人でも乗り比べればわかるのだが、たいていの人はそんな経験を簡単にはできないから、クルマはみな同じと思ってしまう。
実は素人でも楽しめるクルマの乗り味
しかし、軽自動車からミニバンまでさまざまなクルマを用意しているレンタカーや、あっちのプリウス、こっちのリーフ、ちょっと歩いた先のメルセデス・ベンツなんてことができるカーシェアリングを利用すれば、話は別だ。実際、オリックスカーシェアの利用者で「妻と買い物に出かける時は軽自動車で、1人でスカッと走りたくなったらマツダのデミオを選んでいます」という人もいる。彼いわく「デミオがこんなに楽しいクルマだとは、乗るまで知らなかった」。国産車と輸入車の違いではなく、素人でも国産車の中でも走りが楽しいと感じるクルマとそうでないクルマが分かるのだ。大手3社の輸入車ラインナップだけを見てもBMW1シリーズ、VWゴルフ、VWザ・ビートル、ミニ、アウディA1、スマート(電気自動車)、メルセデス・ベンツAクラス……と、実に多種多様で魅力的なクルマが揃っている。これらが愛車と同じように使えることになる。もちろん自宅の最寄りのステーションに全車種が揃っているわけではないが、置いてあるステーションにわざわざ出向いてでも乗る価値はある。
クルマ好きから見れば、お金もかけずにたくさんのクルマに乗れるなんて、天国のようなもの。そんな天国へのパスは、大金を払わずとも手に入る。