東日本大震災における被災犬の数は実のところはっきりとはわからないとされています。ひじょうに混乱した中、その数を数えるだけの余裕もなかったことでしょう。それでも行政や民間団体の調査によると、およそ3,490頭とか6,500頭といった数字が出てきます。それ以上の被災犬がいたことは確かですが。災害があった場合、一般の人に比べて逃げにくいのが高齢者や子供、障害のある方やペットたちです。日頃から出来うる限りの準備はしておきたいですね。


防災グッズをチェック

いつもいっしょにいたいから

国や自治体が発信している防災対策に目を通しておくことも有用/環境省パンフレット

□いざという時のフードはストックしてありますか?

少なくとも5日~7日程度、もしくはそれ以上のフードを用意しておきましょう。なんらかの病気があって療法食を食べているコは、さらに多めに。日常とは違う環境に食欲が低下したり、体調不良となる場合もありますので、栄養補助食品も少量用意しておくことをお勧めします。また、救援物資として届くのはドッグフードであることがほとんどであることから、普段から安全な範囲でいろいろな食材に慣らしておくということも広い意味では防災対策の一つだと言えます。

□水のストックはありますか?

水の他、ゼリー状になっていて栄養および水分補給ができるタイプのものもありますので、軽量な分、そうしたものを用意しておくのもいいでしょう。

□薬品は揃っていますか?

消毒薬や常備薬、包帯(テープを使わずに止められるもの)、ガーゼなどの他、病気治療のために薬を必要としているコなら、それも忘れずに。災害時には瓦礫の上を歩くことも想定されますので、ケガ防止のために犬用の靴や、人間の赤ちゃん用の靴下などを用意しておくと使えることがあります。

□ 愛犬に迷子札や鑑札をつけていますか? またはマイクロチップを挿入していますか? 首輪やリード類の予備は用意してありますか?

災害時以外でも犬が迷子になった場合、身元がわかるものさえ身につけていたなら家に帰れるコというのは実際多くいます。上越地震では鑑札から身元がわかり、家に帰れた犬が思った以上にいたという例もあります。愛犬の身元がわかるものは必ずつけておきましょう。首輪やリードに愛犬の名前や住所などを入れ込んでおくのもいいと思います。リードに関しては何かと使えることがあるので2~3本用意しておくといいですね。ただし、伸縮タイプのリードではなく、ある程度強度のあるものを。

□トイレシートやブラシ、オモチャ、タオルなどのケア用品は揃えましたか?

折り畳み式のトイレもありますが、トイレシートをトイレと覚えさせておくことで、どこでもトイレができるようになりますし、荷物もその分かさばりません。避難先ではいつもとは違う環境に犬もストレスを受けるもの。オモチャがあれば少しは気晴らしにもなります。

□ 愛犬の写真やワクチン接種の証明書、愛犬の情報を記した手帳などは準備しましたか?

万一愛犬が迷子になった時、「茶色い犬で、背中に黒い模様があり、黄色い首輪をしている」と言われても一般の人には正直よくわかりません。やはりインパクトが強いのは写真。携帯の中や手帳など、愛犬の写真は何枚か用意しておきたいものです。また、避難先にはいろいろなペットがいますし、通常とは違う状況の中で病気が蔓延することもあります。愛犬のこれまでの病歴を記録したものや、各種ワクチン接種証明書は治療の際にも役立ちます。

□ キャリーやクレートなど移動ツールは用意できていますか?

一般的なキャリーやクレートの他、折り畳み式の犬用キャリーやテントであるなら避難先での愛犬の居住スペースとしても使えますし、スリングや背負える(リュック)タイプのキャリーなどは両手を空けることもできて便利です。リュックタイプキャリーの中には中型犬まで対応したものもあり、小型犬であれば複数頭をいっぺんに運ぶことも可能となっています。

□ 直接命に関わるものは別にしてありますか?

フードや水、薬品類などは生きていくのに必須ですから、すぐに持ち出せるようにひとまとめにしておきましょう。ペット用の非常用持ち出し袋というのも市販されている中で、耐熱素材で作られ、ベスト型になっており、ポケットがいくつもあって物も入れられるタイプのものは、いざという時に愛犬に着せてそのまま逃げられるので、これから持ち出し袋を買いたいという人は選択肢の一つに加えてもいいのではないでしょうか。

愛犬のしつけや健康管理をチェック

□「スワレ」「マテ」「オイデ」といったコマンドにちゃんと反応できますか? また、無駄吠えをしない、他の犬や人に対して無闇に攻撃的にならないなど基本的なしつけは入っていますか?

無駄吠えや攻撃性は避難先でトラブルの原因になることがありますし、何より吠えている犬自身にとってもストレス。ある程度しつけが入った犬は環境への順応性も高く、より落ち着いていることができます。普段のしつけが大きくものを言うのも災害時なのです。しつけと言えば、万一愛犬が遠くに離れてしまったり、迷子になってしまった時のことを考え、犬笛に慣らしておくというのも一つの手だとガイドは考えます。

□ノミ、ダニ、フィラリアの予防はもちろん、各種感染症の予防ワクチンは接種してありますか?

ノミがついているだけでも避難先ではクレームの対象になりえます。慣れない環境下でストレスを受け、免疫力が低下することから病気にかかりやすくもなりますので、無理のない範囲で予防できる病気は予防しておきましょう。飼い主さんの中には愛犬が何の予防接種をしているのか、いつしたのか、それすら無頓着な人が意外なほど多くいらっしゃいます。何の病気予防をしたのか、それはいつかなど、是非記録をとっておくことをお勧めします。

□いろいろな物や人、環境に慣らす努力をしていますか?

いわゆる、犬の社会化です。子犬の頃からいろいろな物や人、環境に慣らし、いい体験をたくさんさせてあげることは、将来的に性格が落ち着き、ストレスにも強く、問題行動を起こしにくい犬に育てることにつながります。避難生活はストレスがいっぱい。社会化がなされていないコにとってはストレスの塊となってしまいます。少しでも落ち着いていられるようにするには、普段から社会化にも気を配っておきましょう。

□愛犬と触れ合っていますか?

癒し効果や相手との関係性、社会性に深く関係し、ハッピーホルモンとも呼ばれるオキシトシンの存在を知る人も多いことでしょう。母親と赤ちゃん、恋人、夫婦といった人間同士のみならず、犬と触れ合ったり、見つめ合うだけでもこのホルモンが分泌されるといった内容の研究結果が発表されたこともまだ記憶に新しいところです。人と触れ合った後の犬にもこのホルモンが分泌され、互いの関係づくりに大きく作用するものとして注目に値します。ただし、オキシトシンが分泌されるには、お互いがよい関係にあることが条件。上記の社会化はもちろん、愛犬とのよりよい関係を築いておくというのも、しつけの入りやすさや、愛犬の落ち着き度といった観点からも、災害対策の一つとして役に立つのではないでしょうか。普段の生活ではもちろんのこと、多くのストレスがある避難先では極力愛犬と触れ合ってあげたいものです。


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