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愛犬と楽しくクリッカートレーニング!-1(3ページ目)

叱らずに、愛犬の望ましい行動を“マーク”し、それを強化することで様々なトレーニングを可能とするクリッカーを用いたトレーニング方法。その基本から、実践の仕方までをわかりやすくシリーズでお送りします。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

クリッカートレーニングをすることの利点

動物は学習する
鳥の類いにも応用可能なクリッカートレーニング。
ここまで話を聞いておわかり頂けたでしょうか? クリッカーの音自体は、コマンドではありません。また、褒め言葉の代用といったものでもなく、ましてやご褒美そのものでもありません。単に、「それだよ!」と教えるためのサインに過ぎないのです。ですから、一度犬がこの原理を理解すると、離れた場所にいてもマークすることが可能になってくるのです。

では、クリッカートレーニングを取り入れることの利点について、改めて山田さんにお尋ねしてみましょう。

「まず、他のトレーニング方法と比較して学習が早いということ。人と動物との絆がより深まるということ。いろいろな可能性を追求できるクリエイティブな方法であるということ。それから、自分が間違ったとしても混乱を呼ぶことなくトレーニングを続けることができるということ。最後に、何より意欲がわくということ。この5つを挙げることができます」(山田さん)

原理が理解できればメンタルスティミュレーションに

「実際にやってみると、犬が“これか!”と理解した瞬間というものがきっとおわかりになるかと思います。人間においてもアメリカでは学校の体操の時間などにも取り入れられていて、言葉で教えられるよりわかりやすいという声をよく聞きます。例えば、棒高跳びのバーを越える時、もう少し体の動きを変えたらもっとうまく跳べるのに……という選手がいたとします。跳躍の仕方を言葉で伝えるのはなかなか難しいですが、クリッカーならここという時に、それをインプットさせることができますから」(山田さん)

頭で覚えるより、体感で覚えるといったところでしょうか。犬の場合、その先にご褒美があるわけですから、犬自身もより能動的となり、その分学習のスピードもアップするということです。また、脳を刺激するということはシニア犬にも子犬にも使えるということ。シニア犬にとっては老化予防にもつながりますし、通常トレーニングに向くとされる月齢よりもっと早くから子犬にも使用することができます。

日本動物高度医療センターの理学療法科に携わっていらっしゃる山田さんは、マッサージやTタッチの施術をする際やリハビリが必要な子に対してクリッカーを使用することもあるそうです。例えば本来の犬としての座り方を思い出させてあげる時にもクリッカーは有効だと。犬が「あ!こうすればいいんだ!」と理解することができ、リハビリ運動機能の快復が進むということ。刺激の少ない入院生活にもクリッカーはメンタルスティミュレーション(メンタル面への刺激)として有効に活用でき、入院生活におけるQOLも向上するという話です。

ある種のゲームのような感覚

“スワレ”や“フセ”など初歩的なことを教えた後には気づくはずです。あなたの発想次第で犬にいろいろなことを教えることが可能なのだということに。犬自身が変化するのに加え、次はどんなことを教えてみようかと飼い主のほうにも楽しみと意欲がわいてくるはず。そういった意味では、とてもクリエイティブな楽しいゲームのようなものです。

また、犬が“考える”ようになることで飼い主に対する注目度も違ってくるはずです。飼い主のほうは愛犬を観察すること、どう組み立てたら目的の行動を教えることができるのか考えることで、同様に愛犬に対する理解も深まってきます。山田さんが、「自分の犬を知るいいきっかけになる」とおっしゃるように、自ずと互いの絆を深めてもくれるのがこのクリッカートレーニング。

「何より罰を使わない、もしマークするタイミングを間違ったとしても、その時は犬がただフリーのおやつをもらえるだけ、負の要素を与えずにトレーニングできるというのがいいところですね」(山田さん)

マークのタイミングがずれてしまったなら、以後気をつければいいだけのこと。それ以降マークしなければ、その行動は強化されないわけですから。もし犬が間違ったのであれば、それは無視をして対処します。科学的行動学からも、「学習の段階において罰を与えることは、学習にとって弊害となる。罰で行動を変えることはできるが、学習を生み出すことはできない」と言われています。

ここで考えましょう、トレーニングとはなんぞや? 

「トレーニングとは“教える”ことではなく、“学習を生み出す”ことだと思います」(山田さん)

次のページでは、第1回目のしめくくりとして、ツールとしてのクリッカーやご褒美として使われることの多いおやつなどについて少々。
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