異例の好待遇で迎えられた田中投手
田中投手は今回の大型契約で、メジャーの日本人選手でも総額、単年ともに歴代トップとなった。
メジャーの日本人選手でも総額、単年ともに歴代トップとなった。これまではイチローがマリナーズと結んだ5年総額9000万ドルの契約が最高だったが、総額で一気に6500万ドルも上回り、1年平均の年俸でもイチローの1800万ドルを飛び越え、初めて2000万ドル(正確には2214万ドル)を超えた日本人選手となった。
年俸だけではない。契約条項には付帯条件(特典)として、3万5000ドル(約364万円)の引っ越し費用、年間10万ドル(約1040万円)の家賃、8万5000ドル(約884万円)の通訳への給料、日米間のファーストクラス航空券4往復分(約800万円、本人の分を除く)など諸経費が支給されることになっている。マリナーズ入団1年目のイチローは、自家用車が貸与されていたものの、家賃手当は2万5000ドル、2年目が2万6000ドル、3年目が2万7000ドルだったことと比べると、田中が異例の待遇であることがわかる。
ちなみに2008年にドジャースへ移籍した黒田は、自身とは別に家族の通訳を雇い、英語レッスンも条項に入れていた、松坂が2007年にレッドソックス入りした際は、ボストンと日本を年に8往復できる付帯条件を入れていた。
破格であるのはその背番号でもわかる。1月24日(日本時間25日)、ヤンキースは田中の背番号が(19)に決まったことを発表した。この(19)には凄い歴史がある。通算236勝を挙げ、殿堂入りを果たした左腕のホワイティ・フォードがデビューした1950年に付け、1955年から62年はボブ・ターリーが使用。そのターリーは58年にサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)を受賞している。1981年から90年に付けたデイブ・リゲッティは83年に無安打無得点試合を達成、その後は抑えとして活躍した。
野手では、強打の三塁手で活躍し、現在はホワイトソックスの監督を務めるロビン・ベンチュラや、2003年のア・リーグ優勝決定シリーズ第7戦でサヨナラ本塁打を放ったアーロン・ブーンらが背負った。“19”イコール田中とするには、当然、見合った活躍が必要となる。
そして、早くも田中のメジャー初登板はいつかの話題に飛んでいる。現時点でサバシア、黒田に次ぐ先発3番手を期待されている田中は、開幕3戦目にあたる4月3日(同4日)のアストロズ戦“ミニッツメイドパーク”登板が有力だ。中4日でいけば2戦目は4月8日(同9日)のオリオールズ戦で、これが初の本拠地ヤンキースタジアム登板となる。
3戦目登板が予想される4月13日(同14日)は上原、田沢が所属する昨季の世界一・レッドソックス戦で、4月29日(同30日)からは楽天の先輩にあたる岩隈がいるマリナーズ3連戦のため、投げ合う可能性もある。他にもカブスの藤川、ロイヤルズの青木、アスレチックスの中島、そして、レンジャーズのダルビッシュと日本人選手対決が今まで以上に注目を集めるのは間違いない。
「僕自身見たことのない世界へ行くので、野球人としてこれまでと違った刺激を受けると思います。やるからにはもちろん世界一。世界一をつかむために貢献したい」
世界一が至上命令の名門に、世界一を渇望する田中が海を渡る。