今年第1弾の新商品は大和ハウスの「ジーヴォΣ」
「ジーヴォΣ」は、大和ハウスとしては2006年9月の初代「ジーヴォ」発売時以来となる大幅な構造体の変更を行っています。具体的には、「D-ネクスト」と呼ばれるエネルギー吸収耐力壁(制震システム)を搭載する新構造体を採用したことが特徴となっています。通常、住宅には柱と柱の間に筋交いが取り付けられるのですが、その筋交いと柱部分に「Σ型デバイス」を装着したのが特徴となっています。そのデバイスの性能に関しては、大規模な実物大の建物による実験を行っており、その信頼性を証明しています。
ちなみに制震システムというのは、地震の揺れ幅を抑制する仕組み。建物自体は大きく揺れますが、揺れ幅が小さくなるため倒壊など建物の損傷を少なくできるものです。また、一度の大地震だけでなく、今後何度も繰り返し発生する大きな揺れにも効果を発揮するのがこの仕組みのポイントです。
新構造体の採用で従来比で最大約2倍耐力壁となったことから、今まで以上の大空間・大開口(最大開口幅7.1メートル)、高い天井高(2.72メートル)など、より快適な室内空間を実現できるようになったといいます。
「ジーヴォ」シリーズの特徴の一つとして、従来から「外張り断熱通気外壁」があります。その断熱性能も「ジーヴォΣ」では従来シリーズからアップ。約2倍の断熱材を使用することで、断熱性能Q値1.9(次世代省エネ基準では2.7程度)が標準仕様となっています。
これは、2020年に新築住宅の標準となる予定の「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー住宅)」を先取りするもの。このほか、断熱材強化による外壁厚の拡大に伴い他の性能などもアップ、遮音性能は鉄筋コンクリート造の15センチの壁厚に相当するそうです。
「スマートハウス」に惑わされない住宅購入の視点が必要
このように2014年の戸建て住宅商品は、住まいとしての質の向上、中でも省エネルギー性能の向上が間違いなく大きなテーマになるはず。前ページでご紹介した、セキスイハイムやパナホーム、ミサワホームの商品についても基本的にZEH仕様への対応がベースとなっていることからもそれが指摘できます。特に大和ハウスはこれまでどちらかというと、分譲住宅開発などを含めた普及価格帯の住まいづくりが得意なハウスメーカーでした。「ジーヴォΣ」という新しい商品シリーズにより注文(請負)住宅、なかでも建て替え市場を強化したい考えだということです。
そして、その考え方は大手ハウスメーカーの基本的な特徴に合致しますし、昨年10月に施行された「改正省エネ基準」、さらには2020年を見据えたZEH化の動きとも連動して、中堅以下のハウスメーカーや事業者の中でもその動きは顕在化してくると思われます。
いずれにせよ、東日本大震災以降は省エネルギー化は住宅建築を行う上で必須なテーマになっていますから、それは住宅事業者はもちろん、住宅建築を検討する皆さんにはしっかりと考えなければいけないことです。
具体的に注目していただきたいのが、太陽光発電システムや蓄電池のようなアイテムだけではなく、まず住み心地の良さがどのように実現されているか、ということです。ですので、大和ハウスは「ジーヴォΣ」で断熱性能の向上や大開口などが可能となる新構造体などを採用しているのです。
今後、ローコストハウスメーカーなどでも「当社はスマートハウス」といって新たな商品が出てくるでしょう。しかしスマートアイテムは、しょせん住宅設備ですから住み心地はあまり大きく変わりません。
そんな上辺のことにとらわれるのではなく、住まいの本質、つまり住まい自体の省エネ性や通風・採光の具合、安全・安心の側面、防災性、収納などといった使い勝手など基本的な部分に着目することが、より良い住まいを取得するためのポイントとなります。