インフルエンザ予防接種の不活化ワクチン・生ワクチンの違いとは
日本国内ではまだ承認されていないインフルエンザの生ワクチン。子供にも効果が高く、流行するタイプと異なっていても効果が期待できるといわれる「フルミスト」とは?
インフルエンザで主に流行するのは、A型(H1N1型、H3N2型)、B型ですが、例えば同じH1N1型でも、タイプは様々なので、違うタイプのものに何度も感染する可能性があります。
これらのインフルエンザウイルスに対する有効な予防法が、インフルエンザワクチンです。ワクチンには、「不活化ワクチン」と「生ワクチン」があります。生ワクチンは、ウイルスを弱毒化して作られるワクチンです。いずれの場合も、ワクチンを作る上でインフルエンザウイルスをニワトリの卵に入れて増やします。増えたインフルエンザだけを精製し、卵の成分をできるだけ除いて使用します。
インフルエンザ不活化ワクチンの接種方法・費用・副作用
不活化ワクチンは、ワクチンをしてもその病気にならないように、ウイルスの病原性をなくし、「不活化した」ウイルスの一部を使っています。不活化ワクチンの場合は、卵の成分の混入が少ないので、卵アレルギーの人でも、卵の加工品などを食べても問題がなければ接種可能と考えられていますが、接種時には注意が必要です。皮下注射のため、気道の免疫には効果が乏しいと言われています。- ワクチン内容:A型2種類(旧ソ連型(H1N1型)、香港型(H3N2型))、B型2種類
- 接種方法:皮下注射
- 接種年齢:どの年齢でも可能。普通は、生後6ヶ月以降と言われています。
- 接種量:3歳未満 0.25ml/回、3歳以上 0.5ml/回
- 接種回数:13歳未満は2回接種が望ましい。
- 2回接種での接種間隔:1-4週間ですが、3-4週間空けるほうが望ましい。
- ワクチンの効果:約4ヶ月
- A型の対する発症予防効果:大人 約70%、子ども 約20~30%
- 費用:2回で6000円~8000円(同じ医療機関で2回する場合、1回目より2回目が価格が下がっていることがある。高齢者では自治体から補助がある)
- 注射部位の発赤・腫れ・痛み
- 全身症状(発熱・頭痛・悪寒・倦怠感・嘔吐・嘔気・下痢・関節痛・筋肉痛)
- 湿疹・じんましん・カユミなど
- アナフィラキシー
- 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(脳と脊髄に炎症が起こり、重症な場合は呼吸ができなくなる病気)
- ギラン・バレー症候群(末梢神経の病気で手足が麻痺する)
- けいれん
- 肝機能異常
- 喘息発作
ワクチンは、A型(H1N1型、H3N2型)、B型で流行しそうなタイプを予想して作成するため、流行するタイプとワクチンのタイプが異なってしまった場合、発症予防などの効果が低下していまいます。以前は予想が難しかったため、ワクチンの効果が乏しく、ワクチンしても罹ったと言うことが多かったのですが、最近は、予想と実際の流行が一致する率が上がってきているため、ワクチンの効果が見直されています。
インフルエンザ生ワクチン「フルミスト」の効果・副作用・費用
インフルエンザの生ワクチンは、「フルミスト」というものです。いわゆる注射ではなく、両方の鼻に噴きつけて使用するタイプです。インフルエンザの毒性を弱めた生ワクチンのため、2歳から適応で、効果が期待されるのは49歳以下まで、50歳以上では効果が乏しいといわれいます。そのため、日本では2歳から19歳未満の小児インフルエンザワクチンとして販売されます。- ワクチン内容:A型2種類(旧ソ連型(H1N1型)、香港型(H3N2型))、B型2種類
- 接種方法:鼻に噴霧する
- 接種年齢:2歳以上19歳未満
- 接種量:0.2ml(片方ずつ0.1ml)
- 接種回数:1回
- ワクチンの効果:約1年
- A型に対する発症予防効果:5歳未満89%、7歳までは83%と全体で80~90%
- 費用:1回で6000円~8000円 価格については、販売承認されたことで未定なことが多い。
■インフルエンザ生ワクチンの副作用・リスク
- 噴霧から1週間以内に鼻水、鼻づまり、喉の痛みなどの風邪のような症状
- アナフィラキシー
- 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(脳と脊髄に炎症が起こり、重症な場合は呼吸ができなくなる病気)
- ギラン・バレー症候群(末梢神経の病気で手足が麻痺する)
- 喘息発作
不活化ワクチンと違って、
- 卵アレルギー
- 5歳未満では喘息の既往のある人や1年以内に喘息発作を起こしたことのある人
- 妊婦
- 抗がん剤治療や免疫を抑制する治療を受けている人やその看護者
- アスピリン治療を受けている人
- 心臓や肺の病気、喘息、肝臓や腎臓の病気、糖尿病、貧血など慢性的な病気を持っている人
子供に効果のあるワクチンですが、接種時に鼻水が多いと流れ出てしまったり、噴霧を嫌がったりして、噴霧時に大泣きしてしまった場合は、効果が落ちてしまいます。
フルミストは2003年にアメリカで、2011年にヨーロッパで認可され、日本でも2023年3月薬事承認されました。2024年度から販売予定です。
医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができます。
また、オセルタミビル(タミフル)またはザナミビル(リレンザ)を使用して2日以降、ペラミビル(ラピアクタ)を使用して5日以降、バロキサビル(ゾフルーザ)使用して17日以降に、フルミストを使用した方がよいでしょう。さらに、フルミスト接種後は、2週間は抗インフルエンザウイルス薬の使用は控えた方がよいでしょう。米国小児科学会では、「フルミストに干渉する可能性のある抗ウイルス薬の使用に関する最新の推奨事項も含まれています。この干渉は、オセルタミビル(タミフル)またはザナミビル(リレンザ)をフルミストの48時間前から2週間後に使用した場合、ペラミビル(ラピアクタ)をフルミストの5日前から2週間後に使用した場合、またはバロキサビル(ゾフルーザ)をフルミストの17日前から2週間後に使用した場合に発生する可能性があります。」としています。