直火で使え、食材がおいしくなる
鳥取県の深い山奥にある陶芸の窯元、岩井窯。関東から訪れるにはなかなか大変なのですが、といっても鳥取空港からは車で30分くらいのところです。市内から向かうと、あっという間に回りは緑の森と田園が広がり、のどかな風景に変わっていきます。すぐ近くは岩井温泉という温泉地で、川沿いにぽつぽつと宿が並ぶ姿には穏やかな情緒が感じられます。ややどっしり安定感があり、取手も持ちやすいです。
もう何度も訪れている窯元ですが(all aboutの過去記事やおでかけコロカルでも紹介)、ここで最初に出会って持ち帰った「ミルク沸かしピッチャー」は、特に冬になるとずいぶん出番が増えます。普段はキッチンの片隅で、木べらを立てる収納代わりになっていたりするのですが、寒くなってくると、そんなことをしているヒマはありません。ちょいちょいガスコンロの上に鎮座しています。そうそう、これ、直火にかけられるのです。土鍋と同じ土を使っています。土鍋用の土というと、最近はペタライトというアフリカやブラジルなどで採れる鉱物を混ぜた土を使うことも多いそうですが、岩井窯の陶芸家・山本教行さんは国産にこだわり、現在はなかなか入手できない伊賀の天然の陶土を使っているそうです。不思議ですが、この天然陶土で作るほうが料理がおいしくなるそうです。どうやら食材に伝わる熱の入り方が違うみたいです。素朴で肉厚な、ほんのりプリミティブな質感ですが、このピッチャーがコンロの上にぽんと乗っていると、なんともほのぼのとした心地よい安心感があります。
メキシコ土産で頂いたチョコレートとかき混ぜ棒を一緒に置いてみました。違和感ありません。
コーヒー、チャイ、ホットチョコレート、ワインにも
商品名は“ミルク沸かし”となっていますが、実はあまりミルクだけを沸かすということはありません。直火で温め直しが容易なので、コーヒーなどに使っている人も多いようです。チャイにもおすすめですが、私の場合はどちらかというとホットチョコレート。山本さんの作る耐熱の器は、メキシコなど中南米からもインスピレーションを得ているようで、窯元内にある資料館や喫茶店には、メキシコの民芸品などがちょこちょことセンス良く飾られていたりします。このピッチャーもメキシコで買った、といえばそう思われなくもないような(そのわりには洗練されていますが)。どこか大らかでとぼけた雰囲気も感じられるフォルムです。メキシコはカカオの産地なので、古代アステカの時代からチョコラテ(チョコレートドリンク)を飲む習慣があるそうです。そんな土地柄をイメージしながらホットチョコレートを作ってみるのも、なかなか楽しい気分です。ミルクが温まってきたら(吹きこぼれ注意)、チョコレートの欠片をぽんと入れてかき混ぜて、場合によってはシナモンやクローブなどスパイスも投入。最後に胡椒や唐辛子などピリッとしたものを振りかけても温まっておいしいです。このピッチャーでカップに2、3杯分作れます。ホットチョコレートを作ります。直火でコンロに乗せても大丈夫です。
もうひとつ、このピッチャーでよく作るのはヴァン・ショー(ホットワイン)です。冬は頻繁に作ります。ピッチャーに赤ワインを入れて温め、オレンジ、リンゴなどのフルーツを切ったものや、スパイス、はちみつなど、自分の好みの材料を投入するだけの簡単なものです。直火で作れるという手軽さと、そのわりに素材は土鍋なので火のあたりがまろやかであること、火から離してもそれなりに保温性がいいこと、そしてそのままテーブルに置いても映えるデザインであること、などなど、いろんな角度からみて、どうにも使い勝手がいいピッチャーです。
これでお燗もできるんじゃない?という話になり、試してみたこともありました。お湯を沸かして徳利を入れたら、意外とぴったりサイズ!ひとつしか入りませんが、そのぐらいがちょうどいいのでしょう。このピッチャーに直にお酒を入れて温めればいい、なんて豪快な意見もありました。まだ試していませんが。たぶん二合くらい入ります。ピッチャーというより役目としては片口?直火にかけられる片口なんて聞いたことありませんが・・・(余談でした)。
中はつるんとしているので洗いやすい。
そんなわけでとても重宝するミルク沸かしピッチャーです。表面はざらっとしていますが、中はつるっとした釉薬がかかっているので、汚れがこびりつきにくく、洗いやすいのも特徴です。同じ陶土のシリーズで、土鍋やパイ皿等もあります。ただしこれを手に入れるには鳥取まで行かなければなりません。あとは全国各地で開催される作品展で入手できます。岩井窯のHPに作品展の年間スケジュールが掲載されるので、興味のある方は確認してみて下さい。
クラフト館 岩井窯
鳥取県岩美郡岩美町宇治134-1
TEL 0857-73-0339
http://www.iwaigama.com/