岩井窯近くの風景

見渡す限り緑!風光明媚な世界が続く。


鳥取特集第2弾は窯元巡り。 鳥取にはたくさんの陶芸の窯元があります。 人里離れた山の中にあることも多いので、あんまり目立たないのですが、 静かに土と向き合って、コツコツと制作を続ける陶芸家が多く存在するのです。 だからいわゆる陶芸村のような賑やかな場所はないし、 そのため流行に左右されることもあまりありませんが、 ぽつんぽつんと鳥取中に点在する窯元では、誠実で力強い、 心に響くような器を作っている方がたくさんいらっしゃるようです。


民藝運動に影響を受け、18歳から陶芸の道へ

岩井窯
煉瓦敷きに太い梁、古い壺。洗練された佇まいです。
今回、まず最初にご紹介するのは「岩井窯」です。岩美町という、鳥取の中では兵庫県に近い、 日本海寄りの地域にあります。回りは見渡す限り、山と田んぼばかり。 夏は緑が存分に生い茂って、清々しく気持ちのよい風景が延々と続きます。 しばらく車を走らせると、山に囲まれた一角に、そこだけぽこんと切り取られたように、 瀟洒で落ち着いた建物群が現れました。 大きな広場の真ん中には、立派な睡蓮鉢が置かれ、ハスの花が今にも 鮮やかなピンクの花びらを広げているところでした。 広場をぐるりと囲むように、赤い瓦に漆黒の木造建築が並び、 日本的でありながら、どこか異国のような独特の風情を漂わせています。




岩井窯 外観
広々と気持ちいい空間。展示館、参考館、食事処と喫茶が並んでいます。


岩井窯の主である陶芸家・山本教行さんは、 16歳で鳥取の民藝運動の先導者・吉田璋也氏に出会います。 その後、やはり民藝運動と関わりの深いイギリスの陶芸家・バーナード・リーチ に会って、陶芸家を志すことを決意。 18歳で島根県の出西窯に入り、3年後に独立します。 以後現在まで30年を越えて、この地で焼き物を作り続けています。 自然に囲まれた清々しい空間の中、気さくに穏やかな口調で語る山本さんの人柄に、 旅の疲れがすうっと和らぐようでした。

自分の手から目の前にいる人へ、直接器を届けたい

岩井窯 作品展示館
窓の外は緑の借景。器とのコントラストが美しいのです。
さて、まずは作品展示館におじゃまして、数々の作品を拝見します。 展示館は二つ部屋があって、ひとつはログハウスを連想させる木目の美しい空間、 もうひとつは畳敷きのある和風空間です。 岩井窯の器は、民芸といっても世界の民芸品に通じるものが多く、 バーナードリーチの影響もあるのか、どこか古きよきヨーロッパ的な風情があります。 伝統的な技法を用いつつも、常に新しいチャレンジを怠らず、 様々な国のエッセンスを取り入れ、他のどこにもない独特の個性を持っています。 洋の空間でも和の空間でも違和感がなく、 どんな料理も大らかに受け止めてくれそうです。 いろんな国の料理を普通に日替わりで食べている、食いしん坊な日本人にとって、 気持ちよいほど使い勝手のよい器なのです。



作品展示館の様子
言われなかったらどこの国か分からない、無国籍な雰囲気です。


山本さんのつくる焼き物は、使ってこそ生きる器。 ただ飾っておくのではなく、自分の毎日の生活に役立つものを 選んで欲しいといいます。 他の器がたとえ100円ショップで買ったものでも、 暮らしの中でそれらをうまく組み合わせて、自分らしく楽しんでもらえれば 、それでよいのだとか。 日常的に使いやすいよう、オーブンや電子レンジOKの器も多く揃っています。

作品いろいろ
使う姿を想像できるような頼もしい器たちに、目が泳いでしまいました。


岩井窯の器は、基本的にこの場所と、各地でときどき開かれる作品展でしかお目にかかれません。 お店に卸すことはしておらず、ネットでの販売もやらないそうです。 直接顔の見える販売がしたい、というのがその理由。 器に対する徹底的に誠実な姿勢がうかがえます。 それでも全国からこの場所を訪ねてくる客人は多く、 旅の疲れを落としてゆっくり気持ちよく過してくれるよう、 おもてなしに心を砕きます。 時にはコンサートやライブ、料理やお茶を楽しむ会など様々なイベントも開催。 自然溢れる空間で、1日いても飽きない場所です。

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