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日本の学力が完全復活するまで(PISA2012)(2ページ目)

経済協力開発機構(OECD)が、世界65カ国の国と地域の15歳を対象に行った国際学習到達度評価(PISA)の2012年版の結果が発表されました。「ゆとり教育」開始直後の2003年の調査で順位が急落した「PISAショック」を機に、「脱ゆとり教育」へと方針転換。気になる結果は?

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

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上位はアジア勢が独占

しかし、今回の復活劇に喜んでばかりもいられません。上位10カ国を見てみると、上海、香港、シンガポール、韓国など、アジア勢が独占。しかも、新たにマカオやベトナムがランクイン。このようにアジア勢の追い上げがすごいのです。
PISA2012の上位10カ国。上位は、アジアの国・地域が独占。

PISA2012の上位10カ国。上位は、アジアの国・地域が独占。


「BRICs」や「VISTA」と呼ばれる経済発展が著しい国の中には、インド、中国、ベトナム、インドネシアといったアジア諸国が含まれています。今回、中国だけでなくベトナムがランクインしたことで、今後、ますますこれらのアジア諸国が追い上げてくることが予測されます。

これからも、日本がモノづくり大国としての地位を確かなものとするためには、学力向上は欠かせないことなのです。


なぜ、学力は復活したのか?

ゆとり教育は2002年から全面実施されました。しかし、あまり知られていないのですが、実は移行期間というものがあって、ゆとり教育は2000年から前倒しして始まっていたのです。

PISA2006で過去最悪の成績だった世代は、この移行期間を含めると小4からゆとり教育を受けていた世代になります。2000年から2001年までの2年間、小学4、5年生の算数の基礎を築かなければならない期間に、重要な内容がことごとく削減されていて、ほとんど中身のない授業を受けていたのです。そして、小6、中1、中2と学力形成の上で最も重要な期間を、どっぷりとゆとり教育に浸かっていたのです。さらに、ゆとり教育で削減された内容が教科書へと復活した「脱ゆとり教育」へと舵を切った2005年には、すでに中3になっていて、もはや低下した学力を取り戻すには手遅れだったのです。

一方で、PISA2012の被験者は、小1からゆとり教育を受けていた世代です。しかし、この時、ちょうど百ます計算ブームが起こっており、また、小3の時にはゆとり教育で削減された内容が教科書へと復活、さらに小5の時には「全国学テスト」が復活するなど、学力向上へと向けた取り組みが全国的に広まった時期と重なります。早い時期から脱ゆとりへと舵を切ったことが功を奏したと言え、同じゆとり世代とはいえ、学力低下の問題に無策だったPISA2006の被験者とは、非常に対照的な世代なのです。


依然、大きい高校間の格差

このほかにも、OECDは学校間格差についても調べています。日本の(高校の)場合、その数値は47と、17カ国中、オランダ、ドイツについて低い数値となっています。これは、世界的に見ても日本の高校は、学校による格差が非常に大きいということをあらわしています。つまり、いわゆる「進学校」と「底辺校」の格差です。

今回のPISAの結果から、全体的には日本の子どもたち(高校生)の学力は向上していると言えます。しかし、それはあくまでも平均としての学力であって、依然として「進学校」と「底辺校」の格差は開いたままです。底辺校の生徒の多くが、基礎学力の不足だけでなく、基礎的な生活習慣が身についていないことによる、学校生活、しいては社会生活からのドロップアウトが問題となっている今、わが子の志望校選びには十分な下調べと対策を大切にしたいものですね。

■PISA2012被験者のあゆみ
2002年:ゆとり教育全面実施(入学前)
2003年:百ます計算ブーム(小1)、学習指導要領(ゆとり教育)の部分改訂
2005年:ゆとり教育で削減された内容が教科書に復活(小3)
2007年:全国学力テスト復活(小5)
2008年:全国学力テストの被験者(小6)
2010年:新学習指導要領(脱ゆとり教育)への移行期間開始(中2)
2012年:PISA2012の被験者(高1)
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