走りの質感でSクラスに勝るモデルは存在しない
S550には最高出力455ps/最大トルク700Nmを発生する4.7リッター直噴V8ツインターボを搭載。S400ハイブリッドは306ps/370Nmの3.5リッター直噴V6に27ps/250Nmのモーターを組み合わせる
結論からいうと、間違いなく乗用車として現時点で世界最高峰にある。そこからは、値段の高い安いを超える何か=哲学のようなもの、を感じ取ることができ、これなら“高くて当然”という気にすらなった。7~800万円も出して国産高級車を買うくらいなら、多少高くても乗っている間の精神的かつ肉体的満足度は、相当に高く、総合的に割安であるとも思える。
インテリアのフィニッシュと同様に、街乗り低速から高速道路のロングドライブまで、快適この上ない乗り味に終始した。ボディサイズをさほど感じさせず、旧型よりも身のこなしは確実に軽快になっている。京都の狭い路地だって、ためらうことなく入って行けた。人間の操作に対するクルマの動きが、いちいち自然な反応だから、扱いやすいのだ。運転しはじめてものの数十分もすると、まるで長年つき合ってきた愛車のように、身体に馴染んでくれる。
高速道路では、さまざまなアシストシステムにより、安心かつ安全、そして快適に進んでいけた。特に、ステアリングアシストはかなり有効で、自動運転の未来を体験できるという意味でも面白い装備だ。自動運転の未来は、決してドライバー無視ではなく、快適かつ安全なドライブを確実にアシストするものである、ということを、実感できる。
すべてを説明することは到底できないけれども、なかでもマジックボディコントロールには驚いた。これは、ステレオカメラを使って前方路面の凸凹を認識し、それに備えてサスセッティングを適切に変えていく、というもので、利いたときのフラット感はといえば、正に“魔法の絨毯”かくあるべし、だ。利いたとき、と書いたのは、カメラ認識というシステム上、曇天や雨、夜には機能しないため。その差に驚く、という副作用を考慮にいれても、有効なシステムである。
基本的に、ライドフィールの上質さはショート、ロングともに変わらなかった。また、パワートレインの差もさほど関係ない。S400ハイブリッドであろうが、S63AMGであろうが、運転していて、とてつもなく気分がいいことは間違いない。
舌を腰に代えて表現したならば、匂いも含めて、五感に響くクルマ。それが新型Sクラスである。走りの質感において、Sクラスに勝るモデルは今、世界を見渡しても存在しない。総合力で乗用車ナンバー1。だから、ボクはCOTYで10点を配した。