株優名人・桐谷さんの投資哲学は単純かつ明快……
投資で負けないコツを教えていただきました
「とにかく安いときに買う。勝ちたいならこれを死守することが大事ですね。今は手を出すにはちょっと高い時期かなと思いますね。5月下旬に一度暴落したけれど、またああいうチャンスを狙っています」
とはいえ、安いからと飛びついては大怪我の元。目当ての株が「大事なお金を費やすのに値するかどうか」をしっかり吟味する必要があります。
「知識のある人は、“会社四季報”を見ただけで株が上がるか分かるというけれど、私にはそこまでの知識がありません。チェックするのは、PBR、PER、配当利回り、優待利回りの4つだけ。判断基準も非常にシンプルです。株の割安度を測る指標のPBRとPERは“小さい”ほどいい。逆に、配当利回りと優待利回りの2つは“大きい”ほどいい。それを目安にしています」(桐谷さん)
そしてもうひとつ、桐谷さんが絶対にチェックするところが「理論株価」だと言います。
「理論株価とは、その企業の業績や財務状況から計算された、理論に基づいた株価、つまりその企業の本来の実力からすればこのくらいの株価ですよということ。いろいろなところが出しているので、いくつかの証券会社や雑誌などの指標を見比べてみるといいですよ。最近増えてきた優待を楽しむ人たちのブログも、参考になります」(桐谷さん)
また、分散投資をすること、損切りをせずに保有するのも、桐谷流投資のコツ。
「30年間相場を見てきて、基本的には、株は下がれば必ず上がるものだと実感しています。分散投資をすることで、急激な下落や企業が倒産しても、ほかのもので支えることが出来る。特に株主優待は、少ない株数でも優待がもらえるので、少額をたくさん持つ方がおトク。そして、格安の時に買った株なら、多少下がっても投げるようなことはしなくて済むし、その企業が倒産しない限りは、優待をもらい続けることができる。私は優待目当てなので、持ち続けるスタンスでやってます」(桐谷さん)
長く優待の恩恵にあずかるためにも、買い時を見極めることが大切だということ。
「リーマン・ショックのような事態も起こり得るけれど、私が死ぬ思いをしたのは、信用取引をやっていたから。自分の手持ちのお金でやる限りは、そこまで怖がることはないなと思います」(桐谷さん)
颯爽と去っていった桐谷さん
時折ユーモアを交えながら、2時間ずっとしゃべり続けてくれたサービス精神に感激し、我が道を行く穏やかな人柄にほっこりし、過去の詳細な数字がポンポン出て来るその記憶力に驚き、自転車の疾走速度に度肝を抜かれる――。いろんな思いが駆け巡る密度の濃い時間でした。
次のページからは「相場の福の神」が登場!優待ランキングを発表します
☆もう一度桐谷広人さんの365日優待生活インタビューが読みたい方はコチラ
桐谷 広人さんプロフィール
1949年広島県出身、将棋棋士・投資家。日本テレビ系のバラエティ番組『月曜から夜ふかし』で現金を使わず、株主優待のみで生活をする姿が話題になった。現在はテレビ、雑誌、書籍などで幅広く活躍し『桐谷さんの株主優待生活』など著書多数。
取材・文/西尾英子 撮影/松本英明 パネルデザイン/引間良基