「スマートグリッド」の実現に関わるスマートメーター
皆さんも新聞などでこのニュースを何となくご存じだと思います。実はこのニュースは、スマートグリッド社会の構築と大いに関係しています。スマートメーターとは電力使用量を30分ごとに把握できる仕組みです。そのため、ユーザーごとに最適な料金体系の提案や電力使用量の把握による高齢者見守りサービスなど、様々な活用が期待されています。欧米では既に普及が進んできましたが、東日本大震災以降のエネルギー問題の深刻化を背景に、日本でも導入を巡る検討が本格化。東京電力が導入に向けた具体的な指針を示したことで、今後は我が国全体でスマートメーターの導入と普及が活発化しそうです。
ちなみに、スマートメーターとHEMSの違いですが、前者は基本的に電力に限定した仕組み、つまり電力計を延長した活用が主体ですが、HEMSはMEMS(マンション)、BEMS(ビル)などを含め、ガスや水道の計測機器との連動するほか、住宅と自治体、団体、企業を結ぶコミュニケーションツールとなることが期待されるものです。
HEMSは現在、電力量の管理を中心に利用されているのが一般的なスタイルですから、「スマートメーターと機能がかぶるのではないか」と思われそうですが、実はこのような違いがあり、両者は今後、共存するかたちで普及が進んでいくと考えられます。
スマートグリッドの構築で電力の安定化や地産地消を実現へ
このように新たな機器が開発、導入され、普及が進もうとしているわけですが、その究極の目的となるのが「スマートグリッド社会」の構築です。簡単にいうと、電力をはじめとしたエネルギーを地域での融通、地産地消を可能とすることで、より省エネの社会を実現しようという動きです。もっと詳しくご説明しましょう。我が国の電力は火力・原子力などにかかわらず発電所から供給されています。ただ、遠くの発電所から、私たちが電力を使う場所(例えば住宅)まで電力を送るまでにロスがあるのです。ロスは発電した電力の実に4~6%(これには色々な見方があります)にのぼり、これは原発数基分に及ぶといいます。
まず、この送配電のロスを減らすのがスマートグリッドの考え方。一方で、再生可能エネルギーの固定買取制度などにより、太陽光発電システムはもちろん、風力発電や地熱発電、バイオマス発電など様々な発電技術が開発され、従来に比べかなり普及が進んできました。
まだまだ、我が国全体のエネルギーを賄えるわけではありませんが、それでも将来的にはこれら創エネ手段は大きな位置づけを占めるものと考えられます。ただ、これらは気象状況などで発電効率が大きく変わるものでもあります。しかし、地域でどのくらいエネルギーが使われ、また発電できているのかが把握できれば、それに応じて発電所から送る電力の供給量を調整できます。
つまり、電気を必要に応じて発電すれば良いわけで、発電効率の向上、つまりはムダが省けるわけです。こうなるとまだ良いことがあります。東日本大震災の際に発生した大規模な計画停電といった事態の発生を極力少なくすることができます。というのは、太陽光発電システムなどで発電した電力を地域単位で融通することができることから、電力会社は重点的に電力を送らなければならない場所を特定できるのです。
要するに、エネルギーの安定供給にも寄与するというのがスマートグリッドの仕組みなのです。震災当時は市町村ごとに何時から何時まで停電します、なんてことがありましたが、そうすると、電力不足が死活問題になる病院なども停電してしまいました。
そんなことが二度と起きないようなエネルギー供給のシステムがスマートグリッド社会なのです。スマートハウスに絡む様々な情報が世にあふれていますが、その背景には今回の記事のようなことがあるということを、皆さんにはご理解頂きたいと思います。