便潜血反応陽性は痔出血を含む大腸出血
便潜血は勘違いしやすいですが、大腸の出血を調べる検査です!
現在、健康診断で用いられている検査の大半は、大腸出血を調べる免疫法という方法です。実は、便潜血の検査には2種類あります。1つは、化学法(オルトトリジン法、グアヤック法)で、もう1つは、免疫法(便ヒトヘモグロビン法)です。2つには、以下のような違いがあります。
■化学法(オルトトリジン法、グアヤック法)
化学法は、簡単に検査ができて、検査費用が安価という利点があります。しかし、獣肉や魚肉中の血液、緑黄野菜、鉄剤などに反応したり、ある種の薬剤で感度が鈍ったりするという欠点があります。ですので、検査の際には、食事制限や薬の投与に注意しなければなりません。
■免疫法(便ヒトヘモグロビン法)
免疫法は、ヒトヘモグロビンにのみ特異的に反応する便潜血反応です。食事制限は必要ありません。しかし、上部消化管からの出血に反応しないという欠点があります。それは、血液中のヘモグロビンが、胃酸や消化酵素、細菌などの作用によって、性質が変化してしまうからです。なので、免疫法の便潜血が陰性でも胃からの出血がないとは限りません。便潜血が陰性のため、消化管からの出血がないと思い込み、進行胃がんの発見が遅れたというケースもあります。
「便潜血陽性」、痔の疑いもあるので便潜血再検査ではダメ?
便潜血検査が陰性だからといっても、安心はできません!
「痔のせいですね」といいたいところですが、便潜血検査では、出血が痔によるものなのか、大腸の病気によるものなのかは区別することができません。
また、痔があるからといって、必ずしも便潜血が陽性となるわけではないのです。「痔がある」と答えた2万4千人を便潜血検査した結果、便潜血が陽性となった人は4.6%だけだったというデータもあります。
便潜血の再検査を希望される方は多いです。「たまたま陽性反応がでたのではないか」と思う気持ちもわからないでもありません。しかし、大腸がんがあっても、いつも出血しているとは限らないのです。便潜血を2回行う検査でも、進行がんの10~20%、早期がんの40~60%は見逃されます。
以上の理由から、便潜血が陽性の人にもう一度同じ検査をするのは、がんの見逃しにつながるので勧められません。日本消化器病学会などの見解でも、「もう一度便潜血検査をするのは意味がない」とされています。
「痔出血だと思っていたのでほっといたら、実は大腸がんだった」ということも、実際によくある話です。便潜血が陽性なら、「大腸を調べるチャンス」と考えて検査を受けることをお勧めします。
受けるべき大腸検査は全大腸内視鏡検査
便潜血が一度でも陽性なら、大腸検査が勧められます。大腸の検査は大きく分けて、以下のように3つに分けられます。・バリウムを用いる注腸検査
・肛門から近いS状結腸までは大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、S状結腸から奥は注腸検査
・全大腸内視鏡検査
この中で最もお勧めできる検査は、全大腸内視鏡検査です。全大腸内視鏡検査は、大腸をカメラでくまなく観察でき、組織検査も可能です。厚生労働省でも、全大腸内視鏡検査を第一選択として勧めています。
過去に精密検査が必要と判定されたことのある大腸がん患者さんのうち、精密検査を受けなかったグループは受けたグループに比べ、大腸がんで死亡する危険性が4~5倍高いとされています。
便潜血陽性なら、大腸内視鏡検査を受けましょう!