長野から東京に進出ブーム
2014年、東京は相変わらずのラーメンブームだ。毎日の如く新店舗が誕生し、多種多様なスープや麺で、おいしいラーメンの戦いを繰り広げている。有名店で修業をして独立、もしくは独学で店舗を構えるなど、様々な店主がいるが、昨今は東京以外の道府県からの進出も多く見られる。その中で、特に印象的だったのが「長野からの進出組」。長野の有名店が、今、こぞって東京に進出してきている。
その1軒が『角中中華そば(かどなかちゅうかそば)』。場所は神保町の靖国通り沿い。上海料理で有名な『咸亨酒店』の右隣に6月にオープンした。ステンレスを活かしたスタイリッシュな外観は「中華そば」の文字があるものの、一見するとラーメン店とは思えぬ風貌。店内に入れば、まず左に券売機。そしてカウンター席がずらり。縦方向に奥行きのある、いわゆる「鰻の寝床」的な区画で、やや狭小な雰囲気だが、ラーメンを啜るには十分。これまたステンレスのカウンターで、無機質な感じが広がっている。そこにオレンジ系の椅子が、行儀よく並んでいる。
松本『気まぐれ八兵衛』のネクストブランド
こちらは長野県松本市の有名店『気まぐれ八兵衛』のネクストブランドだ。実は長野には大きなご当地ラーメンといわれるものがなく、様々な種類のラーメンの味が楽しめる県。『気まぐれ八兵衛』も豚骨ラーメンで人気の1軒。東京の店舗を任されているのは青柳俊宣さん。彼ももちろん長野県出身。強面に思えるかもしれないが、長野人特有の優しさと真面目さを兼ね備えた、実直な店長だ。濃厚豚骨ながら後味爽やか
さて、看板の「中華そば(700円)」と「味玉(100円)」。一番の特徴は「濃厚豚骨」(鶏も入るので、正確には濃厚豚骨鶏ガラ)という点。豚のゲンコツと豚足、鶏ガラ、もみじ(鶏の足先)を寸胴に順番に入れて、じっくりと煮込んでいく。一度に入れてしまわないのは、それぞれの良さを引き出すため。つまりは、堅い骨のほうから先に入れて炊くようにしているので、ちょうどバランス良く仕上がる。この手の煮込み続けるスープは下のほうに材料がたまってしまい、単に火にかけていると寸胴の底のほうが焦げ付いてしまう。一度焦げたらスープ全体に焦げ臭さが出てしまい、商品として使えなくなる。そのため、常に大きな棒や木のヘラなどでかき混ぜていないといけない。そんな重労働のほかに、最後にさらにとろみをつけるべく、仕上げ時点で強火でガンガン煮込んでいき、完成。
器の中で醤油だれと合わさったスープを一口頂けば、最初に濃厚豚骨のガツンと効いた口あたりが押し寄せ、並々ならぬ時間と真剣さ、そして豚骨の旨みをダイレクトに感じる事ができる。さらに中火&強火で長時間ガンガンと煮込まれているため、材料が骨粉となり、それを濾さずに敢えてサラサラとした骨粉の食感も合わさるように器に注がれている。とはいえ、特有の嫌な臭みがなく、とろみはあるものの、後味が爽やかな仕上がり。これは、コクを出すために前日のスープを少し取って置き、当日に少しだけ合わせてはいるものの、ほとんどが使い切りのスープなので、こうなるのだとか。
オープン当初は魚介も合わせていたそうだが、今はバランスや濃厚豚骨の良さを重視して、魚介は使用していないそう。
細ウェーブ麺などとも相性ぴったり
麺は細麺だが、かるくウエーブがかかっている。濃厚豚骨スープゆえ、太い麺だと両者とも重くなってしまうので、細麺がぴったり。とはいえ、軽くウェーブがかっているのと、スープにとろみがあるゆえ、相当絡んできて物足りなさは皆無。本店では自家製麺だが、オペレーションや杯数の関係などで、東京で使用する分は福島の有名製麺所「羽田製麺」からの直送品。それにしても、ビジュアル的にも美しい1杯だ。しっとりと低温調理で仕上げたチャーシューは美しさと滑らかさを兼ね備える。青々としたねぎは、わけぎなどよりも食感と甘みを考慮して、九条ねぎ。そして、白地にピンク色が映え、彩りにも効果的なナルト。さらにオプションでつけた味玉が、半熟タイプの仕上がりで見ためも綺麗で、ちゅるんとした口あたりと旨みを携えている。
メニューは他にも「王様中華そば」などもラインナップ。「王様中華そば」は今、長野で新ご当地ラーメンとして新開発された一品で、胡椒の効いた昔ながらの懐かしい醤油ラーメン。濃厚豚骨との対比もまたおもしろい。
<店舗データ>
■角中中華そば店(かどなかちゅうかそばてん)
住所:東京都千代田区神田神保町2-2-38
TEL:03-3221-0733
営業時間:11:30~16:00 17:00~21:30
定休日:日曜日
アクセス:都営地下鉄新宿線ほか神保町駅A4出口より徒歩1分
地図: Yahoo!地図情報
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