働くママのモヤモヤはどこから来るのか?
子どもの存在は大きいので、ママになってバランスを崩してしまうことも珍しくありません
吉岡さんの場合は、ギリギリのところまで追いつめられていたこともあって、自分の本当の望みと向き合わざるを得なかったという側面はあります。その中で、まず働き方や子どもと過ごす時間、自分の健康、仕事内容、将来性を優先させたことで、自分の選択への納得感と未来への希望を持てたと話してくれました。
皆それぞれ環境は違っても、当然のことながら貴方に与えられたリソース(時間・お金・体力など)には限りがあるので、全てを手に入れることは不可能です。そんなことは明白なようでいて、現代は「頑張れば何でも手に入る」と錯覚させる風潮があると、吉岡さんは言います。インターネットやテレビで紹介される「働くママ」は、キャリアも家庭も、そして自分自身の夢も手に入れた人というふうに演出されることが多い。そんな中にあって、吉岡さんは「すべてを手に入れることは、そんなに格好いいことじゃない」と言い切ります。
全部を手に入れた人生が「そんなに格好いいことじゃない」って、どういう意味でしょう?ちょっと意外な発言だったのですが、「どうせ無理だから諦めなさい」という意図ではないことは明白だったので、この言葉の本当の意味がとても気になりました。
全て手に入れるのは格好いいことじゃない!の本当の意味
結果的に何でも手に入れることよりも、自分が欲しいものをしっかり分かっていることの方が重要であり、それが人生の豊かさや納得感を左右する、と吉岡さんは言います。逆に、自分が欲しい物、自分の人生における優先順位が見えていないと、メディアの情報や他人の価値観に影響されて、本当は欲しくないものを欲しいと思い、それに翻弄されてしまう。仮に運よくそれが手に入ったとしても、それで本当の幸せや豊かさを手に入れたとは言い難い。反対に、自分が欲しい物を認識した上で、仮にそれが手に入らなかったとしても、その状況を理解して、そのままならない現実に向き合った人こそが得られる美しさがある、と話して下さいました。母となってからも納得して働き続けるためには、この視点が不可欠だとガイドは思います。以前(妊娠・出産前)の人生にはなかった「子ども」といいう大きな存在が現れた時、純粋にそれと同じ重みをもつものなんてまず見当たりません。ゆえに、子どもと離れて働くことを選択した母の多くは迷う……。今までに経験したことのない重み(子ども)を天秤の片側にかけた途端、それとつり合いを取る為には、今まで以上に大きな働きがいや生きがいを見つけなくてはならなくなるからです。
「本当に必要なもの」だけを選別して反対側のお皿に載せていかなければいけないのに、必要なものが分からなければいつまで経ってもつり合いが取れず、天秤は片方に大きく傾いたままになってしまうのです。
人生における優先順位を持つということ
人生における優先順位を考えるとき、これまでの自分に刷り込まれた思考を取り払って、自由に気楽に考えなければ正解には辿り着けません。でもそれは想像以上に難しいことかも知れません。それでも、子どもを持つという人生における大きな変化が、自分に刷り込まれていた価値観を相対化させ、新しく自由な発想をもたらしてくれるともいえます。例えば、「収入が得られないと生活できない」、だから「今の仕事は辞められない(=今の生活は変えられない)」と結論づける前に、当面はその仕事を続けつつも、お金が貰えなくてもやりたい事、自分自身がワクワクするものを洗い出してみる。他にも、子育てを通じて知ったNPOや地域の活動に共感するようなことがあれば、ボランティア等で参加してみる。そんな風にして、家庭や仕事とは別の第三の場所に関わってみることから始めるのもよいのではないでしょうか。吉岡さんの言う「本当の豊かさ」も、現在の仕事や子育てといった「今見えている風景」から少し視野を広げたところから見つかるかも知れません。