歯科インプラント治療の現在
最終的な上部構造をイメージし、理想的な埋入位置をシミュレーション
その際注意しなければならないのは、抜歯して間もないと骨や歯肉などの変化量が大きいこと。つまり、抜歯直後の2週間と、抜歯後2か月経過してからの2週間の変化量は、前者は大きく後者は小さいという違いがあります。そういった骨や歯肉などの変化量を予測するうえでも3次元データは必須であり、そのデータを元にプランニングすることも一般的になっています。
「とにかく骨のある場所に歯科インプラントを埋入し、あとは被せ物担当の先生、よろしくお願いします」といった、行き当たりばったりのボトムアップ旧式インプラント治療は終焉し、今や最終的な被せ物のデザインをシミュレーションソフト内で行い、それにはどこにどのような位置にどんなサイズのインプラントを埋入すればよいかを検討するトップダウントリートメントが主流の時代。医療も、個人の経験と勘だけでなく、精確な事前情報収集を行い、計画性を持った手術プランの方が良い結果を生むことは間違いありません。
医科でも手術時に3次元データなしで診断したり手術プランを立てることは皆無で、大概の場合CTかMRIを撮影しています。3次元データは近代医療においてなくてはならないもので、歯科インプラント治療においてもコンピューターシミュレーションシステムなどを応用し予知性の高い治療を目指すことができるようになりました。
歯科インプラントにおける治療シミュレーションの流れ
1. 事前情報収集下歯槽神経を2次元でマーキング
2. 治療計画
元々あった歯冠形態をデータとして取り込んだり、ソフト内で理想的な歯冠形態をデザインし、それに硬組織(骨)のデータをリンクさせ、理想的な位置に歯科インプラントを仮想ポジショニングします。まだメスさえも握っていない机の上でそれらを確認することができます。
シミュレーションが歯科インプラント治療にもたらす効果
口腔内は粘膜に覆われている為、歯槽骨を確認する事はできません
シミュレーション後、手術時に使用するサージガイドと呼ばれる手術サポート器材を製作しシミュレーション通りに歯科インプラントを埋入します。その結果、咬合力(かみ合わせる力)が正しく伝わり、周囲の支持骨に不要なストレスを与えないことで骨吸収(骨の痩せ)を抑えることが出来たり、もしも炎症が起こってしまった場合に容易に上部のクラウンを着脱して簡単に清掃クリーニングができるスクリューリテイン方式(接着剤ではなくネジで上部クラウンを固定する方法)にすることができます。
何よりも、昨今マスコミ等で騒がれている「歯科インプラント埋入時のトラブル・事故」の防止になることは間違いないでしょう。